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家から5㎞ほどを散歩して向かったショッピングモールで、久しぶりに服を見た。

ちょっと前までZOZOを見るのが日課だったんだけれど、それすらなくなってしまって、第n次服興味なくなっちゃった問題にぶち当たっている。
ここ数年で定期的にあらわれるようになったこの問題が、かつての自分では考えられないものだからなおさら、このまま廃れていくような気がしてしまってこわい。

出かけないからかな。出かけないからだろうな。


向かった先でファストファッションの店に入ると、トップスは全部裾が短かった。Tシャツも、薄手のジャケットも、カーディガンも何もかもだ。

工場で、自分の身長ほどもあるドでけェはさみを持った超美体型のお姉さんが、イカレた目をしながら片っ端から裾を切りまくっていく姿が脳内再生された。
厄介な敵すぎる。

「いらないのよ長い裾なんて!!!全部切っちまえば良いんだわ!!!アハハハ!!!」

皿嫌いのシンドリーちゃんを思い出す。
狂気の美人キャラは好きだ。

そんなことを考えながら店内を見て回ったけれど、『腹が出せないやつは入店禁止』の看板は見当たらなかったので、一応私もここで買い物はできたらしい。
腹は出せないので何も買わなかった。



甘いものが食べたくて、ミスドにするかクレープにするか迷ったけれど
帰りがてら食べるかと思ってクレープにした。

丁度学生の下校時間だったらしく、ピュアピュアでにこにこした制服カップルのとなりをシナモンホイップをむさぼりながらすれ違った。
たぶん、微かにあるはずの私の目のハイライトは消えていた。
シナモンが喉にかかりむせた。その場で歩くのをやめて座り込んでやろうかと思った。


大通りよりも少し入った住宅街を歩くと、日常が見える。
ワンちゃんの散歩、カートを引くおばあちゃん。

公園を見ると、定員オーバーなんじゃないかくらい人がいる。
数名の小学生グループがいくつか、その保護者らしき人ら、さらに手を引かれるか抱っこされている小さなご兄弟ら。
かなりの密度でも、"遊び"を見つけて楽しんでいる子供らはすごい。どうぞ健やかであれ。

昔ながらの工場の隣に、大きな家が建設中だったりすると、いらぬ心配をしてしまったりする。
私にはなんの関係もない話だが、勝手に
あわ、あわわわ、とあれやこれや。少し通り過ぎてお気に入りの曲を聞いているとすっぱり忘れるのだけれど。



平日日中の散歩は、穏やかであるはずが忙しい。
前も書いたけれど、ちょっといやなことがあるとそれに引っ張られるし(散歩中に限った話ではないが)、逆にノってしまうともうノンストップ。脳内ガラクタごちゃまぜ祭り。

ミックスジュースにでもして絞り出してやりたい。
こめかみに蛇口を取り付けたら下には落ちるが肩がダバダバになるなあ。

湊かなえさんの告白を読んだ。
なんか前にも読んだのか、映画を見て結末を知っているのか、全然思い出せなかったんだけれど
救いのない終わりは日常であり、まだ続いていることの証明であり、そんなもんで、そういうことすぎる。


というのも、いつも通る交差点で信号待ちをしながら考える。
鼻に抜けるシナモンの香りだけが、ちょっとした非日常だった。


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