『サイレンタウンの子供たち Children of Silentown』レビュー
『サイレンタウンの子供たち Children of Silentown』は、どこか陰鬱な雰囲気をまとった、ダークなストーリーを特徴とするアドベンチャーゲームだ。
舞台は山奥の深い森に囲まれた小さな町サイレンタウン。質素な生活を営むそこでは、ある『掟』を守って人々は暮らしていたが、時折り神隠しにでもあったかのように住民が森の中へと姿を消してしまうのだった。
掟のことばかり口うるさい大人たちに対して、子どもたちは反発しながらも森を畏れていたが、収穫祭の夜の出来事を境に主人公ルーシーの日常は変わっていくことになる。
ゲームシステム
本作はストーリーベースで展開するアドベンチャーゲームだ。
操作はポイント・アンド・クリック方式で、キャラクターやオブジェクトを選択することでアクションを起こすことができるというものだ。コントローラとマウスに対応しているが、どちらかと言えばマウスの方がプレイしやすいだろう。
5つのチャプターで構成されていて、ストーリーに沿った目的を達成することで次のチャプターへと移る形だ。
アドベンチャーゲームではあるが、全体を通して「パズル要素」が重要なファクターとなっていて、インタラクトして入手したアイテムを適切なタイミング・場所で使うことでクリアできるというものがまず基本。
他には音符を入手して歌を覚え、適切な歌を相手やモノに使うことで反応を引き出すものや、パネルを回転させて始点から終点まで線をつなげるミニゲームなど、その種類は豊富だ。
それらは一切の手加減なくプレイヤーを襲い、チャプターが進むごとに難易度を上げていく。ヒントやサポートも無いので、ここが大きく人を選ぶポイントとなっている。
日本語サポート
UI/テキストが日本語に対応。またカットシーンのナレーションのみ、日本語吹き替えのボイスにも対応している。翻訳は田中友梨氏 (@yuritanaka_jp)と、めんご氏 (@_emiliemei_) が共訳で担当。
小さな町ながら登場人物も多く、主役である子どもたちの10代前半らしい雰囲気や、閉鎖的でいかにも話の通じない大人たちの物言い。端々ににじみ出てくる不穏な空気感。
そしてある出来事を通じて決意を固め、どこか雰囲気の変わっていく主人公ルーシーのセリフなど、本作の世界観を上手く表しているのは見事だ。
気になるポイント
先述のとおり、パズル要素に対してヒントらしいヒントや、サポート機能の類は一切用意されていない。パズルが解けなければ詰むほか無いのだ。
この容赦の無さは、何かしら逃げ道が用意されていることが多い最近のゲームタイトルの中においては硬派な部類に入るだろう。
このため万人向けと言うことはできず、アートワークに惹かれて安易に手に取ると痛い目を見る。エンディングまで到達したときの達成感はひとしおだが、ハードルを下げる手段があっても良いかも知れない。
総評
ティム・バートン監督の独特の世界観にインスパイアされたストーリーやアートワークは逸脱で、まずそこに目を惹かれるプレイヤーも多いはずだ。
しかし、いざゲームをプレイしてみれば歯ごたえのあるパズル要素に出迎えられることになり、なかなかストーリーの先を見ることができないジレンマに直面する。
ただしどちらかと言えばパズル要素のあるゲームを苦手とする筆者も、相当の時間をかければエンディングまで到達することはできたので、ぜひ根気よくチャレンジしてほしい。
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