脳味噌探し
「先生、お客様です」
霞が紙に報告した。
「誰」
「会えばわかるということです」
「あっ、そう」
紙は来客を待った。
「ヘローッ」
来客が英語を話しながら、研究室に
入ってきた。
「へッ、ヘローッ」
紙がどもりながら応答する。
「わたしは、米国脳科学アカデミーのシュルツ
首席研究員です」
シュルツと名乗った男は、丁寧に右手を
紙に向かって差し出した。
「はっ、はあ」
紙は戸惑いながらも、自分もシュルツに向かって
右手を差し出した。
だが両手はすれ違って触れ合わなかった。
紙がよろめいて前のめりになった。
シュルツは紙の承諾なしに、ソファーにどっかりと
座って指を組んだ。
「早速、要件ですが」
「はっ、はあ」
「論文を訂正してもらいたい」
「はっ、はあ?」
紙にはシュルツの真意がわからなかった。
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