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【驚きの実話】チャンス大城が恋した真夜中3時にハイライトを買いに来る「美しい人」の正体

 お茶の間の記憶に残る男としてTV出演急増中の芸人・チャンス大城(本名:大城文章)さん。そんなチャンス大城さんが自らの半生を赤裸々に語り下ろした『僕の心臓は右にある』(2022年7月刊、朝日新聞出版)から、上京したての頃バイトしていたコンビニで恋した「美しいひと」とのエピソードと驚きの正体を、本文から抜粋、編集して紹介します。(写真:朝日新聞出版 写真映像部・東川哲也)

大城文章著『僕の心臓は右にある』(朝日新聞出版)
大城文章著『僕の心臓は右にある』(朝日新聞出版)

 尼崎から東京に出るとき、東京に住んでいた唯一の知り合いは、NSC13期の同期生だった俳優の三浦誠己君でした。実を言えば、三浦君が東中野に住んでいたから、僕も東中野にアパートを借りることにしたのです。そして、三浦君の紹介で東中野のセブン・イレブンでアルバイトを始めたのでした。

 なにしろ事務所も決まっていないし、完璧に無名でしたから、芸人としての仕事が入るはずもありません。とりあえずはバイトをして、当座の生活費を稼ぐしかありません。

 コンビニでバイトを始めてしばらくたったとき、夜中の3時ごろに、若いお姉さんがタバコを買いに来るようになりました。あごにホクロのある、とても派手なかっこをした美しい人です。いつも鼻歌を歌いながら店に入ってきては、必ずハイライトを買って帰るのです。

 僕はそのお姉さんのことを、とても好きになってしまいました。ほとんど、ひと目惚れでした。そして、そのことをシフト・リーダーに告白したのです。

「実は僕、好きになってしまった女性がいるんです。片想いです」
「ああ、あの派手なお姉さんね」

 なんとかしてお姉さんと会話がしたいと思った僕は、ある作戦を実行しました。

 お姉さんが鼻歌を歌いながらカウンターに接近してきた瞬間に、黙ってハイライトを差し出したのです。

 作戦は成功でした。

「私の銘柄、覚えてくれているんですね」
「もちろんです!」

 普通ならアブナイやつだと思うところでしょうが、お姉さんは僕の名札をちらっと見ると、こう言いました。

「お名前、オオシロさんっていうんですね」
「はい、そうです!」

絵:チャンス大城

 それからお姉さんと少しずつしゃべるようになり、ある日、頃合いと見たシフト・リーダーが「2対2で合コンをしないか」と持ち掛けてくれたのです。もちろん、男の2は、僕とシフト・リーダーです。

「うーん」

 お姉さんは、ちょっと迷っているようでした。

「夏になるまで待ってもらえますか。いま、ちょっとバタバタしてるんで」

 いまになって考えれば社交辞令だったのでしょうが、それでもお姉さんは河岸を変えることなく、タバコを買いに来続けてくれました。

 ある日、いつものように夜中の3時ごろお姉さんが現れました。いつものようにハイライト差し出すと、お姉さんがこう言うのです。

「私、今日の朝4時半に、初めてテレビで歌うんです」
「ああ、ミュージシャンの方だったんですか。僕ら朝の5時まで勤務なんで、防犯モニターしか見られないんです」
「そうなんですか。じゃあまた出演する時に言いますね」
「ありがとうございます。あのー、お名前うかがってもよろしいですか」
「椎名林檎と申します」

 その後、僕はある事務所に入れてもらうことができました。でも、事務所の都合でシフトを変えまくった結果、東中野のセブン・イレブンはクビになってしまいました。

 当然、あの派手なお姉さんにハイライトを渡すこともできなくってしまったわけですが、歌手の椎名林檎さんは、僕の手の届かない、遥か遠い世界に羽ばたいて行かれました。


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