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パワハラ上司から身を守るための上手な「壁」の作り方

 産業カウンセラーで職場のメンタルヘルスの専門家である見波利幸さんは、職場の人間関係が引き金となって心の不調を訴える人を多数見てきました。見波さんによると、特に真面目で誠実な人ほど危ないと指摘します。そこで、苦手な人とも我慢せずに付き合える方法を、見波さんの著書『やめる勇気――「やらねば!」をミニマムにして心を強くする21の習慣』(朝日新聞出版)から紹介します。

 どうしても好きになれない人がいる。不当な叱責や心無い一言をきっかけに相手に嫌悪感を抱くようになり、気が付いたらその人の嫌な所ばかりが目につくようになった……。そんな経験をしたことがある方も多いでしょう。

 そういう人が上司だったりすると、会社に行くのがひどく苦痛になると思います。ただ、ちょっとしたことで自分の認識を改めて感情をコントロールすることもできるのです。

 これは私の研修に参加した方の話です。

 研修では「承認のワーク」というものを行うことがあります。職場の上司や同僚、部下が成し遂げた成果、あるいは長所を書き出してもらうワークです。その方は上司の長所を書き出しました。

 上司に対しては苦手意識しかなかったそうですが、ワークを進めるために上司の長所を探していると、嫌悪感が中和されてきたということでした。

 誰かの長所を実際に文字にしようとすると、今までの言動を詳細に思い出し、あらゆる視点から分析することになるので、見落としていたことに気付く場合があります。特に嫌いな人や苦手な人の長所を探すのは、普段はその人に対するマイナスの記憶ばかりが蓄積されているので、非常に苦労しながらいいエピソードを掘り起こしていく作業になります。

 そのような苦労を経て、相手の本質的な美点に気付くと「なにもかも嫌い」という気持ちが薄れて「まあ、こういう長所もあるしな」と思うことができる。そうすると、感情をコントロールでき、嫌悪感が止めどなく膨らんでいくのを防ぐことができます。

 ただ、さまざまな努力をしても、どうしても本質的な長所が見つからない相手もいるかもしれません。でも、それでいいのです。相手をどうしても好きになれないのに、他の人と同じように親しくする必要はありません。どうしようもなく嫌いな相手を好きになることほど、難しいことはないでしょう。

 そういう場合、付き合いを断つことが最善の策ですが、それが無理なら相手との間に「壁」をつくっておくことです。壁をつくっておかないと、相手は勝手にずけずけとあなたの領域に入ってきてしまいます。

 基本的に「相手を必要以上に自分の領域へ入れない」という意志を持ってください。そのうえで、相手に不快なことをされた時に、相手が一瞬ハッとするような言葉を投げかけるようにします。これが壁をつくる第一歩です。

 たとえばパワハラ上司にひどい言葉を投げつけられたら、「その言葉、かなり胸に刺さりました」「今、すごく驚きました」などと、相手の言葉をどれだけ自分が「重く」受け止めているかを伝えるのです。

 ただし、否定的な言い方にならないように気を付けてください(否定してしまうと相手が攻撃してくる可能性があります)。

 そのような言葉を伝えると、相手の様子が変わると思います。無意識的に壁があることを感じるからです。パワハラ上司の言葉に対してあなたがまったく反応しなければ、エスカレートしていく可能性がありますから、なるべく早い段階で壁をつくりましょう。

 壁をつくるという意志を持っていないと、相手の言動に振り回されてしまいます。ついつい相手のペースに巻き込まれて、したくもない話をしたり長時間一緒に過ごす羽目になったりすることもあるでしょう。これでは、どんどんストレスが溜まってしまいます。

 でも「この人に何か言われたら、きちんと壁をつくろう」と決めていれば、何もかも相手に左右されることはなくなるということです。

 いったん設定した壁の高さが変わることもあります。相手を知るうちに、もう少し受け入れてもいいかなと感じることもあると思います。相手との関係は常に変っていくものなので、必要に応じて修正をしてください。

 一度適切な壁を設定したら、これ以上相手を嫌いになるということはありません。人間関係は最も厄介なストレス源と言われていますが、実はこのようにして自分でコントロールできるものなのです。


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