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サウナドクターが教える「MAXととのう」サウナの入り方

 サウナ文化はもはや我々の日常になったと言っても過言ではないだろう。ワイン樽や蔵を改装したサウナや、築100年以上の古民家を使った泊まれる隠れ家サウナなど、想像を超えるサウナも次々に誕生し、サウナーたちを楽しませている。漫画やドラマ、SNSなどをきっかけに若者や女性にも支持され、“おじさんたちが楽しむもの”だったサウナが今や注目の“カルチャー”として存在感を増しているのだ。

 フェスやキャンプなどのイベントには必ずと言っていいほど併設され、最近では自宅にサウナを造る人も珍しくない。正しい入浴法をマスターすれば、体の疲れをとったり、頭をスッキリさせたり、自律神経を整えたり……といった効果が期待できるほか、香りや映像を楽しんだり、アウフグースのパフォーマンスで盛り上がったりと、エンターテインメントとしても楽しめる。

 ここまで読んで「アウフグースって何?」と思った人には、サウナの基本と奥深さを同時に知ることができる『GO!SAUNA & SPA GUIDE [関西+全国編]』(2023年2月発売)が役に立つ。個別の用語は、本に収録された用語集を見ていただくとして、この本の中から3人のプロサウナーへのインタビューを公開したい。

朝日新聞出版編著『GO! SAUNA&SPA GUIDE【関西+全国編】』
朝日新聞出版編著『GO! SAUNA&SPA GUIDE【関西+全国編】』

 サウナドクター、サウナブームの立役者、プロアウフギーサーの3人だ。

■サウナドクターが教えるMAXととのうサウナの入り方

 加藤容崇医師は、日本サウナ学会代表理事も務めるサウナドクター。『医師が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)などの著書もあり、サウナの効能を科学的に解明する研究に取り組んでいる。

 加藤医師が勧める基本のサウナの入り方は、「サウナ→水風呂→外気浴」の基本セットを繰り返すという方法だ。

「サウナ→水風呂→外気浴を1セットとして、3回ほど繰り返すのが効果的です。サウナでは、高温という極限の環境に体が順応しようとすることで、生存本能(交感神経)が働きます。そこから水風呂に移ると、極限まで温まった体が急激に冷やされ、再び体が順応しようと生存本能(交感神経)にスイッチが入ります。そこから外気浴へと移行すると、『もう安全だ』と判断した体がゆるまって、通常よりも深いリラックス状態に入ります。結果、血流が増加し、体が軽くなるのです」

「スパメッツア おおたか 竜泉寺の湯」(千葉県流山市)は今注目のサウナ施設。早朝から深夜まで利用でき、日本最大級のととのいスペースを備える

「サウナ室を出る時間は施設や体調によって体の温まり方が違うので、心拍数が軽く運動したときの心拍数と同じくらいになったら、が目安。“ととのう”という感覚は、体内に、極限状態からリラックスへという目まぐるしい変化を起こすことで得られるのです」

 具体的には、サウナにはどのような効果があるのだろうか。

「サウナの効果はいくつかあります。一つは、疲労感がとれて思考がクリアになる、ということです。そもそも脳疲労の原因は、何かを考えてしまうこと。サウナに入ると高温に対応しようと思考が強制的に停止され、結果的に脳疲労が軽減されるのです」

「二つ目は、肩こりや腰痛などが改善すること。温熱効果によって硬くなった筋肉がほぐれ、血行がよくなるからです。血液が体を疲労させる物質を運び去るので、体がスッキリします」

「三つめは、集中力がアップすること。サウナに入ると、リラックスしたときに出る脳波であるα波が正常化します。α波の正常化は、認知機能や集中力の向上につながると報告されています」

■ととのえ親方が仕掛けたサウナのリブランディング

“ととのえ親方”こと松尾大さんは、昨今のサウナブームを語るうえで欠かせない人物。このサウナブームの仕掛け人と言ってもいい。ずばり、このブームをどう作り出したのか。

「ブームのきっかけを作ったのは、間違いなく『マンガ サ道』を描いたタナカカツキさんですね。彼の漫画によって50 ~ 60代の、昔から銭湯に通っていたおじさん層に広まった。そこにYouTuberなど若い層に影響のある人を結びつけてサウナを“リブランディング”していったというのが僕らなんです。それまでは古くさいイメージのあったサウナが、今では最も“イケてる”コンテンツとして認知されているのはうれしいですよね」

松尾大さんは日本全国のサウナ施設のプロデュースを手掛ける実業家であり、“ととのえ親方”として知られるプロサウナー。TTNE代表

 いま、人気のサウナの特徴は?

「やはり根強い人気は奇をてらっていないスタンダードなサウナですね。昔ながらのドライサウナのみだった施設も、熱したサウナストーンに水をかける“ロウリュ”の設備を新たに導入することによって、息を吹き返している」

「あとは、僕もプロデュースする際に意識している“エンタメ性”“アミューズメント性”のあるサウナ。サウナ室にすてきなデザインだったり、楽しさだったりを求めるようにしています。最近プロデュースしたものでいうと、サウナ室に5台のストーブが並んでいる『スパメッツァ おおたか竜泉寺の湯』や、サウナ室にいながら野球観戦ができる『北海道ボールパーク』(2023年3月開業予定)などがそうです」

「プロデュースするときはとにかくワクワクするようなサウナを造るようにしています。常に30~40件くらいのプロジェクトが動いていて、最も先だと8年後にオープンする施設もあるんですよ」

 サウナにも、関西と関東で文化の違いはあるのだろうか。

「関東はサウナ+水風呂というのが基本ですが、そもそも関西は温度差のあるお湯と水に交互に浸かる温冷交代浴の方が根強い人気ですよね。でも、これからどんどんサウナ専用施設も増えていくと思いますよ」

■「アウフグース」こそエンターテインメントだ

 最近、サウナ周りでよく聞く言葉が「アウフグース」。ドイツ生まれの入浴法で、プロアウフギーサーなる職業まであるという。その一人、鮭山未菜美さんに話を聞いた。アウフグースこそ、サウナで楽しむ「エンタメ」だという。

「ロウリュによって発生した蒸気をタオルであおぎ、サウナ室やひとりひとりに熱風を送るサービスがアウフグース。アウフギーサーが音楽に合わせてパフォーマンスすることもあります。アウフグースを受けているとあっという間に時間がたってしまうので、あまり苦しさを感じることなく、勝手に体が温まる。その結果、水風呂や外気浴がより気持ちよくなり、“ととのい”やすくなるんです」

鮭山未菜美さんは、ACJ2022世界大会チャンピオンアウフギーサー。全国70以上の施設で毎日アウフグースを行う(撮影/Ryszard Rak)

 そのやり方はさまざま。パフォーマンスを競う世界大会もあるという。

「アウフギーサーのチームによってもカラーが全然違います。私が所属している関東のチームでは、サウナ室の温度管理もしながら、しっかり風を届けるのがポリシー。関西のチームはテクニックで魅せるという違いがあります」

「私は2022年、日本代表として世界大会に出場しました。ストーリー仕立てで10~15分間、音楽に合わせながらパフォーマンスを行います。評価基準はタオルテクニックだけでなく、構成やアロマ水のセレクトなど多岐にわたります」

「アウフグースというと『熱さに耐えられないんじゃないか』と思う人も多いのですが、熱さにまだ慣れていない人にこそアウフグースを受けてほしいなと思っています。あっという間に時間が過ぎて、水風呂もすんなり入れるはずですよ」

※初出:AERA dot. 2023年2月12日

(構成:高島夢子/編集:生活・文化編集部)


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