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企業が「DXのプロ」を採用できない理由と選ばれるための6つのポイント
「デジタル技術を活用して、顧客に価値を提供できるDX(デジタル・トランスフォーメーション)人材。そのニーズが採用マーケットで高騰しています。それは同時に、オールドタイプの企業に組織・文化の変更を迫る起爆剤にもなっています」
『デジタル技術で、新たな価値を生み出す DX人材の教科書』(朝日新聞出版)の著者で、480社以上にDX人材教育サービスを提供する株式会社STANDARDのCEO、石井大智さんが、DX人材の争奪戦がもたらす「ディープ・インパクト」について解説します。
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■「DXリテラシーの高い文系人材」のニーズが上昇中!
最近、新卒採用でも中途採用でも、目に見えて「DX人材」の募集が増えています。国の「デジタル庁」設置の影響もあって、県が「DXセンター」といったセクションを立ち上げるなど、公的セクターが本格的にデジタル技術の活用に取り組み始めたのが大きな要因でしょう。
もちろん民間セクター、特にグローバルに事業を展開している企業は、それ以前から積極的にDX人材を集めています。
募集対象は、エンジニアやデータサイエンティストに限りません。当たり前ですが、彼ら彼女らだけでDXプロジェクトは成功するはずがない。プロジェクトマネジャー(PM)など、企画・開発・運用の各フェーズを総合的にマネジメントできるビジネスサイドの人材も積極的に募っています。両者がそろわなければ「組織」として機能しないのだから当然でしょう。
盛んに「エンジニア不足」が叫ばれ、その人材集めがブームになったのは3年ほど前です。それがいったん落ち着いたのは、「エンジニアだけではDXを推進できない」という当たり前のことに、多くの企業がようやく気づいたからとも言えます。
つまり、いま最も求められているDX人材とは、エンジニアサイドとビジネスサイドを橋渡しできる、いわば「DXリテラシーの高い文系人材」なのです。
![石井大智著/鶴岡友也著『デジタル技術で、新たな価値を生み出す DX人材の教科書』](https://assets.st-note.com/img/1648522669990-GiqGna3b0g.jpg?width=800)
『デジタル技術で、新たな価値を生み出す DX人材の教科書』
■「DXのプロ」を採用できない一番の理由
文系・理系問わず、「DXのプロ」を既存の給与テーブルとは別軸の数千万円という高額の報酬で集めようとしている企業も少なくありません。でも、それで優秀なDX人材の採用、その後の人材活用がうまくいくかどうかは、かなり微妙だと思います。
実際、多くの企業は思うようにDX人材を採用できていません。なぜか。それは彼ら彼女らが高額の報酬だけでは決して動かないからです。「DXのプロ」が転職する大きな動機は「この会社なら大きな成果を出せそうだ」という期待です。なので、会社を選ぶ時には成果が出やすい「組織環境」かどうかをシビアに判断します。
彼ら彼女らの一番の懸念は、自分のような「外様の人材」が社内で異色扱いされがちな企業文化です。なので、たとえば社長がDXの必要性を理解していないなど、DXの話が通じないようなオールドタイプの会社には決して行こうとしない。つまり、「DXのプロ」は孤軍奮闘に陥りそうな、経営層を含めて、DXリテラシーの低い会社を避けるわけです。
要は、人寄せパンダ的な会社のPRが目的なら別ですが、本当にDXが目的であれば、企業は同時に、DX人材がちゃんと活躍できる「組織環境」を作っておかないといけない。「DXのプロ」が孤立するような旧来の組織・文化のままでは、優秀な人材も採用できないし、運よく採用できたとしても、肝心のDXプロジェクトは全く進まないでしょう。
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(撮影/朝日新聞出版 写真部・張溢文)
■DX人材が行きたい会社、6つのポイント
DX人材が大きな成果を上げられるように、企業はどう「組織環境」を整えていけばよいのか。そもそも彼ら彼女らのミッションであるDXとは、「デジタル技術を活用して、顧客に付加価値を与えられる組織・文化を創り続けること」です。その実現のためには、会社全体を巻き込んでプロジェクトを推進する必要があります。
つまりDXに成功するには、トップが経営方針として全社的にDXに取り組んでいくことを明確に掲げる、DX人材が横断的に各部門とコミュニケーションできる体制にしていく、全社員のDXリテラシーを上げていくといった環境整備が不可欠なわけです。
もちろん経営層には、その前提となる「顧客目線の経営戦略」をしっかり構築しておくことが求められます。
最後に、DX人材が会社を選ぶ際に注目する主なポイントを整理しておきましょう。
(1)経営戦略が明確である。(2)経営戦略の中にデジタル技術の活用がきちんと位置付けられている。(3)デジタル技術に明るいメンバーが多くいる。理想は全社員がDXリテラシーを身に付けている。(4)アジャイル的なマインドセットが全社的にインストールされている。たとえば「失敗してもいいから、まずやってみる」という実験主義の文化。(5中長期でDXに投資できる資金面での余力がある。つまり、DXの成果を短期で求めない投資余力がある。(6)データ収集やデータ整理など、既に一定程度のデジタル化が進んでいる。
この6つは、言うまでもなく「DXで成果を出しやすい条件」です。採用マーケットでDX人材が引く手あまたの状況である以上、彼ら彼女らはこうした条件がそろっている会社を選びます。加えて、「その会社でチャレンジできる仕事がどれだけ面白いか」といった視点での判断もあります。
要するに、DX人材を採用してその人材に活躍してもらうことと、デジタル化に適応するように会社の組織・文化を変えていくことは、あくまでも「ワンセット」というわけです。