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寝ない我が子に「屍作戦」“軍隊みたい”な育児法「ジーナ式」を実践してみた

 参った。9カ月過ぎから始まった長男の夜泣きが、ここまで大変だとは思ってもみなかった。毎日寝かしつけに1時間以上。なのに1時間半もすれば目を覚まし、朝までに最低3回は泣いて目を覚ます。時には深夜にどうやっても泣き止まず、気づいたら夜明け……なんていう日もあった。

 両親、義両親ともに遠方で頼れず、夫婦ともども寝不足で疲労困憊。母親に聞いた「散歩して日光にあてる」「疲れるようにたくさん遊んであげる」といったことも試してみたが、効果はなし。毎日ネットで「夜泣き 改善法」と検索する日々……。

 そんなある日、『ジーナ式 カリスマ・ナニーが教える赤ちゃんとおかあさんの快眠講座』という本と出合った。

 イギリスのカリスマ・ナニー(乳母)のジーナが、多くの赤ちゃんをお世話する中で編み出した快眠法だ。ジーナが提唱するスケジュールや寝かしつけを実践することで、赤ちゃんが夜通し眠るようになるという。これが本当なら、なんて素晴らしい……!

 調べてみるとイギリスで20年以上前に出版されて以来のロングセラーで、日本でも10年以上前に出版、最近その改訂版が発売されたという。早速、わらにもすがる思いで手に取ることにした。

 しかし、本を開いて早々に慄いた。スケジュールがあまりにも緻密なのだ。例えば9カ月~12カ月の子なら、朝7時に起床、授乳後、9時30分~10時に15分~30分以内の昼寝。その後11時45分~12時に授乳し、12時30分から再び昼寝……といった具合。授乳、入浴の時間も決まっており、夜はなんと19時に就寝する。これで、その後1回程度の授乳で夜通し眠らせることを目指すのだという。こうしたスケジュールは生後1週から12カ月まで、月例に合わせて9パターン用意されており、授乳回数が多い最初のころはまさに分刻みのスケジュールなのだ。

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 そもそも、赤ちゃんにこんなにきっちりしたスケジュールが可能なのか。3児の母である妹にジーナ式について聞いてみると「そんな軍隊みたいなスケジュールできるの!?」と驚いた様子だった。ですよね。

 とはいえ、そもそも他の解決法を知らないので、ダメ元で実践してみることにした。

 まず、ジーナ式を実践する以前の長男の一日を紹介すると、起床や昼寝の時間はもちろん、食事や入浴時間まで日によってバラバラ。朝は6時に起きる日もあれば9時30分頃まで眠る日もあったし、昼寝も4時間近く眠ることもあれば15分だけの日も。就寝は早くて21時、遅いと23時過ぎで、夜中に3回は泣いて起きる。清々しいほどにジーナ式からは遠い。

 とりあえずジーナ式にしたがって朝7時に起こすことから始めてみたが、すぐに午前中の昼寝で行き詰まる。今までぐずったら授乳して眠らせる、場当たり的な昼寝だったため、突然「今日から9時半にお昼寝だよ~」と寝かしつけたところで当然のごとく眠ってくれない。

 ここで立ちはだかるのが、ジーナ式のポイントの一つ「間違ったねんねサインを身につけさせないだ。ねんねサインとは、赤ちゃんが「これをしたら眠るんだ」と覚える合図のこと。

 例えば我が家では、眠くなると吸いたがるおっぱいが「ねんねサイン」になっていた。長男はミルクと母乳の混合から完全ミルクに移行していたので、ほとんど出ないおっぱいは眠る前のおしゃぶりになっていたのだ。おっぱいを吸わせ続けると目をつぶり始めるので、その後しばらく抱っこし続け(ここが長い)、完全に寝入ったところで布団にそっと置く……というのが眠る時のルーティーン。だいたいこの方法で寝てくれるが、寝かしつけに1時間以上かかる上、ひたすらおっぱいを吸わせ続けるのがしんどい方法でもあった。

 しかしジーナ式では、この方法がNGとなる。ジーナは、静かな寝室のベビーベッドでひとりで寝つくことを身に付けさせるように提唱しているのだ。が、実践するには問題があった。まず、我が家はベビーベッドではなく布団派。加えてジーナ式を始めた時点で10カ月になっていた長男は、一人で寝室に置いておくと泣きながら自力で引き戸を開け、寝室から脱出するのだ。

 そこで考え出したのが「屍作戦」だ。布団を敷いた暗い寝室に長男を連れて行き、私はできるだけ存在感を消し、基本、屍のようにただただ布団に横たわる……という方法。長男は当然、室内を徘徊したり、寝室を出ようとしたりするが、その際は淡々と阻止。布団に連れ戻し、自分はまた静かに横たわる、を繰り返す。

 やがて眠くなった長男はおっぱいを吸いたがって泣き出すが、これも淡々とやりすごす。正直、これが一番つらかった。おっぱいをあげたいのをぐっと堪え、作戦を続行するのだ。すると、泣き声が徐々に弱まってくることに気がつく。そのうちに泣きながらも布団をゴロゴロし始め、次第にその動きも緩慢に。そしてついに、寝息が聞こえ始めたのだ。

 初めておっぱいなしで眠った……! 感動しつつ時計を確認すると、寝かしつけにかかったのは50分程。短時間とは言えないが、以前よりは短くなっている。

 午後の寝かしつけも、時間はかかったが同様の方法で成功した。これは、いけるかもしれない! いそいそと「ジーナ式」用のノートを作り、日々の睡眠時間や授乳時間を記録。ジーナ式スケジュールに近づける日々が始まった。が、事はそう簡単ではなかった。

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 初日はたまたまスケジュールに近い形で進められたが、その後が全く続かない。朝はかろうじて7時~8時の間に起きるのだが、30分以内にすべき午前の昼寝で長いときは2時間半も眠ってしまう。

 ミルクや離乳食の時間、入浴の時間もスケジュール通りにいくことがほぼなかった。寝かしつけも「屍作戦」で眠る日がある一方で、どうしてもおっぱいがないと眠らない日も多かった。

 次第に、スケジュール通りにいかないことで落ち込んだり、イライラしたりするように。夫から「そんなにきっちりしなくていいんじゃない?」と言われても「今寝かせないとスケジュールに合わなくなる!」とピリついてしまう始末。10日間続けてみたが、スケジュールにかすりもしない日が続き、夜泣きも相変わらずだった。

 なんとかしなければ……と寝不足の頭で考えている時に、ふとひらめいた。何も完璧にしなくとも、できるところだけ実践してもいいんじゃないか。

 思えば自分は元々ずぼらで、初めて作る料理のレシピすら作りやすいようにアレンジするような性格。ならば、今回も長男に合わせてアレンジしてもいいのではないか。

 そこで「軍隊並みジーナ式」を「ゆるジーナ式」にして実践してみることに。長男の生活スタイルと照らし合わせ、分厚い書籍の中から以下の4点だけを守るという、かなり「ゆるゆる」な方法にアレンジしたのだ。

●朝は7時台に起こす(夜泣きで眠らなかった日は多少長く寝かせる)
昼寝は極力、ジーナ式の規定の時間内(長男の場合2時間半以内)に
 収める
お風呂から出たら部屋を暗くする
 (ジーナ式では19時には暗くするが、難しいので)
おっぱいでの寝かしつけは極力避ける

 これが長男には合っていた。1カ月ほど続けると、1時間以上かかっていた寝かしつけは30分程度になり、夜泣きは3回から1回程度まで減った。日中に散歩したり、疲れさせたりしなくても毎日20時半前後には眠り始め、なんと夜は5時間~8時間も連続で眠るようになったのだ。

 しかし、今回の勝因はなんといっても「継続」できたこと。うまくいかない日があっても、諦めず続けたことが大きかったように思える。これからジーナ式を試す人や、同じように途中で心が折れてしまった人は、こんなずぼらな方法もあることを知ってもらえれば、少し気楽にできるのではないだろうか。完璧を求めすぎないことも、育児のコツなのかもしれない。

(ライター・山田美月)


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