受かる「志望動機」の書き方とは?大切なのは“理解”と“納得”
■志望動機は「主張」を出発点に考える
今道:小論文を書く時は、4つの要素「主張」「理由」「方法論」「具体例」をベースに下書きを作るといいとお話ししましたね。大学入試の志望動機を想定して考えてみましょう。次の問題は、どう考えれば良いでしょうか。
もとゆき:下書きの初めに置くのは、「主張=私はこう考える」ですね。
今道:ええ、そうです。それが出発点になります。なぜ、この大学を選んだんですか?
もとゆき:もともと、環境政策とか、持続可能な社会とかそういうことに興味があったんですよ。それで総合環境学部があるこの大学は面白そうだなと。だから、「私は持続可能な社会に関心があるので、貴学に入学したい」、これで、最初の「主張」は良いですかね。
今道:はい。とりあえず、それを最初の「主張」として置いておきましょう。
もとゆき:それから、「主張」に対しての「なぜなら=理由」が必要なんですよね。総合環境学部という学部があるので、興味のある分野と一致しているというのが大きかったです。他にはどんなことを挙げれば良いんでしょう?
今道:「なぜこの大学を選んだのか」は、言い方を変えると「他の大学にはない、こういう魅力があるからだ」ということですね。この大学ならではの話があると良いです。ちょっとしたことでも良いですよ。
大学案内などを見て他に興味を持ったことはないですか? 例えば、こんな先生がいるからいいなと思ったとか。オープンキャンパスに行ってこんなところがいいなと思ったとか。「具体例」を挙げてください。
もとゆき:わかりました。下書きにすると、こんな感じです。
もとゆき:「方法論」はないですが、いいですか?
今道:今回、答案を読む側は大学の関係者です。その人たちに、なぜこの大学に入りたいかを「納得」「理解」してもらうために答案を書いています。「持続可能な社会実現へ向けての方法論」は、これから研究するわけですから、今の段階でわかっている必要はないですよね。だから、この答案に関しては、その要素はなくてかまいません。
■大学受験では2つの選択をしている
もとゆき:じゃあ、これで下書きは完成でいいですか?
今道:大学の志望理由を書く場合は、答案にもうひとつ大きな要素を入れた方がいいですね。
もとゆき:というと?
今道:実用文では、読み手の「納得」「理解」を得ることが大事だと言いましたよね。この答案では、今挙げてもらったことに加え、読み手としてはもうひとつ「納得」したいことがあるんですよ。大学を受験するときって、2つのことを選択するでしょ。
もとゆき:2つの選択ですか。1つは「この大学を選んだ」ということですよね。
今道:それと、「どの分野に進むか」ですね。
もとゆき:ああ、そうですね。
今道:文学、法学、経済学、理学、薬学、いろいろある中で、ある特定の分野を選択したわけですよね。ですから、「なぜその分野に興味があるのか」を知りたいのです。
「私はこういう理由でこの分野を学びたい」、「そして数ある大学の中でも、貴学はここが良いから入学したい」と、この2つの要素が納得できると、「それであなたは、うちの大学のこの学部に進みたいんですね」と腑に落ちます。
もとゆき:ということは、「主張」のところで出てきた「持続可能な社会」になぜ関心があるのかを、はっきりさせないといけないですね。
今道:そうです。これは「理由」の部分です。この問題に関心を持ったきっかけは何ですか? その部分の下書きを、4つの要素を参考に書いてください。
もとゆき:わかりました。こんな感じになりました。
今道:これで、なぜ、持続可能な社会の実現に関心があるのか、わかるようになりましたね。では、答案にしてみましょう。最初にまとめた「なぜこの大学を選んだのか」という話と、「なぜ、持続可能な社会の実現に関心があるのか」という話を、1つにまとめるとすれば、どちらを先に書きますか?
もとゆき:今の順番で書くのは変ですか。
今道:ここでは2つの選択を書きますが、「まず、高校1年でこういう経験をして持続可能な社会に関心を持った。その結果、環境分野を学びたいと考えた。そこで、大学案内やオープンキャンパスで調べるうちに、貴学に進学したいと考えるようになった」という前後のつながりがあります。こういう場合、採点者側もそのつながりを追いながら読んでいくので、時系列に沿って書いてもらった方が、スッと納得・理解できます。
もとゆき:なるほど。では、「下書き(2)」を前の方に持ってくる形で答案としてまとめてみます。
今道:良く書けていますね。まず、冒頭で全体として言いたいことを端的に言ってから(主張)、「なぜ、持続可能な社会に関心があるのか(理由1)」「なぜ、この大学を選んだのか(理由2)」と、順番に説明していくと良いでしょう。
就職の志望動機も同じです。公務員なら「なぜ公務員になりたいか」「なぜこの自治体か」、民間企業なら「なぜこの業界か」「なぜこの会社か」の2つを書くと良いのです。