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日本人のたんぱく質摂取量は“戦後と同レベル”!不十分だと起こる身体の不調とは

「日本人は栄養不十分」と聞いたら、多くの人は驚くだろう。これまではむしろ食べすぎのカロリー過多や肥満、それらによる生活習慣病を警告されてきた。しかし、実際には現代日本人の多くが、生きていくためのエネルギーや体のもととなる、大事な栄養素「たんぱく質」が不十分な状態にあるという。

 戦中や戦後のものがなかった時代、日本人のたんぱく質摂取量は目標量に届いていなかった。それが、戦後から高度成長期にかけて伸びていき、バブルと呼ばれる時代には目標量を超えてとりすぎの状態に至る。だがそれ以降、急激に摂取量が減少し、現在は戦後と同じレベルまで落ち込んでいるというのだ。生活習慣病に対する意識が高まり、ダイエットやメタボ対策で摂取カロリーを減らした結果、大切なたんぱく質まで不十分な状態になっていると考えられる。

 現在、たんぱく質の摂取量は、ほぼすべての世代で目標値に届いていない。『たんぱく質のきほんとレシピBOOK』(朝日新聞出版)を監修した早稲田大学の宮地元彦教授は、「とりわけ若い世代の女性で、事態は深刻です」と話す。たんぱく質不足は筋肉の減少や、免疫力の低下を招くほか、女性では月経不順といった全身の不調にもつながるからだ。

監修:宮地元彦/料理:ほりえさちこ『美容・健康・免疫力アップ からだづくりに欠かせない たんぱく質のきほんとレシピBOOK』(朝日新聞出版)
監修:宮地元彦/料理:ほりえさちこ『美容・健康・免疫力アップ からだづくりに欠かせない たんぱく質のきほんとレシピBOOK』(朝日新聞出版)

 たんぱく質の目標摂取量は体重を基準に決められ、体重50キロの人なら1日に60グラムが目標量となるが、日本人女性の平均身長158センチで体重50キロはちょっとやせ気味。筋肉量も十分ではない。筋肉は年齢を重ねるほどに減少するので、もともとたんぱく質の摂取量が少なく、筋肉を十分に蓄えていない人の場合、筋肉の減少によって足腰が弱り、寝たきりを招くなど、老後に大きな影響を及ぼす。人生100年時代といわれるが、80歳、90歳になっても元気に若々しく過ごせるかどうかは、蓄えているたんぱく質の量にかかっている。

植物性たんぱく質を多く含む食材がこちら。大豆や大豆製品に豊富で、米やそばなどの穀類は、精製されていないものほどたんぱく質の割合が高くなる(写真:キッチンミノル)

 人の体を構成している物質としてもっとも多いのは60%を占める水分だが、たんぱく質は18%と、残りの大きな部分を占めている。人の体には、約10万種類のたんぱく質が存在するとされており、体内のあらゆる部分にたんぱく質が使われている。筋肉の材料となるだけではなく、内臓や皮膚、髪の毛といった体の組織、血液、ホルモンなどの分泌物、消化酵素など、あらゆるものがたんぱく質からつくられている。たんぱく質がなければ、免疫システムを担う免疫細胞や抗体などもつくられなくなってしまう。

動物性たんぱく質を多く含む食材がこちら。 植物由来、動物由来のたんぱく質を、どちらかに偏ることなくバランスよくとるのがおすすめだ(写真:キッチンミノル)

 具体的には、20歳以上の男性で10~13グラム、女性では2~7グラム程度、目標量下限を下回っている。たった今から、大切な栄養素であるたんぱく質を積極的に摂取するようにしたい。

(構成:生活・文化編集部 森香織)