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つながる短歌

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千年を経て愛される和歌と近現代の短歌。二首を比較しながら人々の変わらない心持ちや慣習に思いをはせ、三十一文字に詰まった小さくて大きな世界を鑑賞する『つながる短歌100 人々が心を… もっと読む
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#斎藤茂吉

良寛のスケールと斎藤茂吉の新しさ 二人が詠んだ「母への思い」の味わい深さ

 江戸時代後期の禅僧・良寛は、名主の家柄に生まれましたが、幼い頃から字を書くのが好きで読書にのめりこみ、学問や思索を追求するタイプでした。風雅の道に生きて、早くに家督を息子(良寛の弟)に譲った父親との確執もあったようで、10人の子どもを育てる母の苦労を知りつつも、 良寛自身もまた自らの道のために家を捨てるという、「逸脱者」となったのです。  良寛26歳、母が死に瀕しているという知らせを聞いても、故郷には戻りませんでした。のちにふるさとの庵で、亡くなった母を思い出すとき、海の