マガジンのカバー画像

ほんの記事

360
朝日新聞出版から発売されている本にまつわる記事です
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

チャンス大城が圧倒された、明石家さんまの鋭い反射神経と人間的な優しさ

 お酒をやめ、勝手にコンビニのトイレ掃除や、道の吸い殻拾いを始めてからしばらくたったとき、スピードワゴンの小沢君から電話がかかってきました。 「いま、六本木でカラオケやってるんだけど来ない?」 「えっ、行ってもええの?」  小沢君に教えてもらった住所に向かうと、そこはカラオケ店といっても、尼崎で友達と通っていたような店とはまったく違う、超高級店でした。  フロントに行くと黒服のお兄さんが、個室まで案内をしてくれました。個室のドアを開けると、中には10人ほどの男女がいてす

【驚きの実話】チャンス大城が恋した真夜中3時にハイライトを買いに来る「美しい人」の正体

 尼崎から東京に出るとき、東京に住んでいた唯一の知り合いは、NSC13期の同期生だった俳優の三浦誠己君でした。実を言えば、三浦君が東中野に住んでいたから、僕も東中野にアパートを借りることにしたのです。そして、三浦君の紹介で東中野のセブン・イレブンでアルバイトを始めたのでした。  なにしろ事務所も決まっていないし、完璧に無名でしたから、芸人としての仕事が入るはずもありません。とりあえずはバイトをして、当座の生活費を稼ぐしかありません。  コンビニでバイトを始めてしばらくたっ

「日本の遅れ」と「同調圧力」をスタンフォード現役教授が分析!日本の未来を切り拓くキーワード「バナキュラーライゼイション」とは

■バナキュラーライゼイションという発想 筒井:前回の記事で人材の循環性や流動性の話をしましたが、日本は敷かれたレールの上を歩いていくのがベストだと多くの人が考えている社会、アメリカは自分で新しいレールを敷いていくことに価値を見出す社会という違いがあります。その違いがスタートアップに人材が集まるかどうかに顕著に表れていると思います。  本書『未来を創造するスタンフォードのマインドセット イノベーション&社会変革の新実装』に登場するスタンフォード大学出身の日本人には、いくつか

【8コマ哲学】男女問わずモテモテだった哲学者・サルトルが変えた“結婚の意味”とは?

「あなたは何にでもなれます」なんていわれても、「そんなことねぇよ」ってぼやきたくなりますよね。でも、理屈上は本当に何にでもなれるんです。サルトルはこんなふうに言ってます。「人間は自らつくるところのものになる」ってね。  物はいったんつくられたら、生涯その物のままです。運命は変えられないわけです。いくら頑張っても。でも、人間の場合は頑張れば運命は変わります。たとえば、ペーパーナイフは、紙を切るという用途や役割(本質)が先にあって、この世に存在(実存)する。つまり、本質が実存に

日本とアメリカ「教育・研究・起業・リーダー育成」分野での驚くべき格差をスタンフォード現役教授が徹底分析

■日本の平等主義がイノベーションの足かせになっている 筒井:大学発のイノベーションという点で、中内先生の分野において、現在の日本の大学の研究レベルはどんな感じでしょうか。 中内:アメリカのVC(ベンチャーキャピタリスト)のなかには、少数ですが常に日本の大学に目を向けている人がいます。彼らは「日本は、シーズ(種)の数は少ないけれども、クオリティーは高い」といっています。つまり、日本の大学にいる研究者は、非常によくデータを蓄積していて、信頼性の高いデータに基づく特許やアイデア

欧米の名門大学の中でも異質 スタンフォードの凄さは「人材」と「資金」のエコシステムにあり

■欧米の名門大学のなかでも異質なスタンフォード大学 筒井:私は日本の学部・大学院で修士号を取ってから、スタンフォード大学で博士号を取りました。それで2002年からニューヨーク州立大学に勤め、2005年に客員助教授としてスタンフォードに戻ったのですが、1年後にミシガン大学に移って、2020年にスタンフォードに教授として戻ってきました。なので、まずアメリカの東海岸や中西部の大学との比較を中心にスタンフォードの特徴を話したいと思います。  一番の特徴はスタンフォード大学がシリコ

スタンフォードで学んだ新たな「トラブル解決方法」 オンライン紛争解決(ODR)をデジタル社会のインフラに

 ODRは紛争解決のイノベーションになる――スタンフォードロースクールで在外研究をしていた筆者は、デジタル化によって司法制度が大きく変わるであろうこと、そして、パソコンやスマートフォンといった端末でトラブル解決ができる未来が訪れることを強く感じていた。2014年のことである。  ODRとはOnline Dispute Resolution(オンライン紛争解決)のこと。紛争解決手続といえば、裁判に代表されるように、対面で行うのが基本である。それを文字通り、ICT・AI技術を使

【8コマ哲学】140年前、「神は死んだ」とニーチェが喝破した理由

 ニーチェと言えば、日本で一番知られている哲学者の一人。世界でも人気のある哲学者なのですが、その理由は彼の虚を衝くような独創的な視点と、力強い思想にあるように思います。  彼のもっとも有名な言葉である「神は死んだ」という発想。これはまさに虚を衝くものだといっていいでしょう。神様が死ぬなんて誰も思っていませんから。しかもそれは、キリスト教に頼ってばかりいて主体的に生きようとしない、当時の人々への警告だったわけです。  そうして彼は、力強く生きていくための超人思想を唱えたので

スタンフォードで学んだ東京電力社員が、保守的な大企業で社内ベンチャーを成功させるまで

※第3回よりつづく ■社内ベンチャーへの挑戦:MW2MHプロジェクトとアジャイルエナジーX  福島第一原子力発電所(1F=イチエフ)事故に関する事実関係と教訓について英語で発信するため、2011年9月から4年間務めた米国駐在を終え2015年に日本に帰国。本社で1Fの廃炉を安全に進めるためのフレームワークを構築する責任者となった。世界でもっとも過酷な現場ともいわれる1Fで、安全性や環境への影響等を考慮しながら、速やかに、かつ低コストで廃炉を進めるという、きわめて難解な多元方

スタンフォードで学んだ東電社員が3.11の緊急事態で発揮した「グローバル・リーダーシップ」とは

※第2回よりつづく ■東日本大震災:緊急事態でのグローバル・リーダーシップ  2011年3月11日は、STPプロジェクトに関する法律事務所との会議が15時から予定されていた。地下鉄銀座線の赤坂見附駅で降り、地下道を同僚と歩いていたところ、14時46分、激しい揺れに襲われた。会議はキャンセルとなり、電車は不通となっていたため歩いて内幸町の東京電力本社まで戻った。  福島第一原子力発電所(1F=イチエフ)では、運転中の原子炉は地震により、設計通りに自動停止した。外部電源は喪

【8コマ哲学】人間の認識能力の限界を説いた、哲学者・カントの逆転の発想「コペルニクス的転回」とは?

 カントは、厳格な性格で有名でした。時計が時を刻むように正確な日常を送り、コツコツと研究をする「ザ・哲学者」といっていいでしょう。散歩も食事も読書もすべて決まった時間にしていました。町の人は彼の散歩の時間で時計を合わせたとまでいわれています。その厳格なカントの哲学もまた、とても厳格なものでした。人間はどう物事を認識し、そこにどのような限界があるのかといったことを厳密に理論化したわけです。  たとえば、私たちは犬を見て、「あ、犬だ」と思いますが、カントにいわせると違うのです。