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2022年7月の記事一覧

医師・おおたわ史絵が、執筆やコメンテーターを必死で続けた理由と家族の崩壊

 わたしは、実家を離れてからは生活の基盤を夫との暮らしに移し、医療のほかにも連載エッセイを書いたりラジオ番組をやったりと、なかなか盛りだくさんな日々を送っていた。  そもそもなぜ医師としての生きかただけに飽き足らず、メディアなどに足を踏み入れてしまったのか?  これもよく訊かれる質問なのだが、これについては自分のなかで明確な答えが出ている。  ただひとつ、「誰かに認めてほしかったから」。  幼少期から母親に褒められることがなく、認められた感覚のないわたしは、自己評価が

大量の食べ吐き、飲酒…“サバイバー”夫が歩んだ壮絶な20年 家族が苦しむ「すき間」とは

 大量の食べ吐きや飲酒、自傷行為、極端な感情の浮き沈み。精神障害を抱えた妻の闘病をたどる『妻はサバイバー』を4月に出版した。これまでの経過をありのままに書いたところ、「壮絶だ」「言葉にならない」という反響が多く寄せられている。  妻の症状を知ったのは、20年前にさかのぼる。  結婚から3年たった2002年、彼女が29歳のとき、摂食障害がわかった。何時間もかけて大量の食べ物を食べては吐く。食料代がかさんで借金を抱えた。人が変わったようになった彼女は私を罵倒し、時折暴力もふる

【ノンフィクション本大賞ノミネート作】摂食障害、アルコール依存症、認知症…妻の介護を綴ったルポ『妻はサバイバー』著者の願い

――本の発売から1カ月近く経ち、多くの感想が寄せられています。  反響の大きさにとても驚いています。「あまりの壮絶さに驚いた」というご感想をたくさんいただきましたが、私にとっては意外な感じがします。というのは書いたことは日常なんですね。やはり妻のような疾患のことはあまり知られていない。同じような障害を抱えている皆さんは、ひっそりと人知れず生きている。それが大きいんだろうなと思います。その壁が大きいからこそ「壮絶だ」という驚きにつながるように感じます。 ――当事者の手記がほ

大谷翔平がアメリカの小さな少年野球チームに与えた「希望」

■「オオタニ」を愛する3歳の少年  大谷がメジャー2年目だった2019年秋、物心がついた時から野球が好きでたまらない自分の息子(当時3歳)を地元の少年野球リーグに入れた。他に手を挙げる親がいなかったので、私は息子のチームの監督を任された。  3~4歳で構成されるこの最年少ディビジョンに参加するのは、よほどの野球好きか親が熱心な子どもたちなので、人数は4チームだけ、合わせて30人弱しかいなかった。アウトや点数も記録せず、子どもが楽しく体を動かすことが目的である。言葉もたどた

タバコの火を押し付けられそうになっても「虐待だとは思わなかった」医師・おおたわ史絵の壮絶な母娘関係

■顔色をうかがう子  母はすごくアップダウンが激しい気性だった。  頭痛や腹痛持ちだったので体調によって日々態度が違った。  鎮痛剤や睡眠薬をしょっちゅう飲んでいたせいもあっただろう、とても不安定な精神状態で、同じことをしても叱られるときと叱られないときがあった。その基準は第三者にはまったく判断がつかず、文字どおり彼女の気分次第だった。  ただひとつブレることなく決まっていたのは、人を褒めることはほとんどないという点だ。  記憶の限り、彼女が誰かを褒めているのを聞い

大谷翔平の初ホームランボールをめぐる 「おじさん建築員」と「9歳少年」の知られざる物語

 大谷が記念すべきメジャー初本塁打を放ったのは、2018年4月3日、本拠地での初打席だった。打者・大谷の「ホームランショー」の幕開けだったとも言える。  そのホームランボールを最初に手にしたのが、外野席最前列で観戦していたクリス・インコーバイアさん。彼はその歴史的なボールを拾い、ちゅうちょなく隣に立っていたエンゼルスファンの男の子に譲った。3年ぶりに記念球に関わった二人に連絡をとり、ホームランの瞬間や大谷との面会を改めて振り返ってもらった。  オハイオ州クリーブランド出身

「ダメなら別れる」「理解ではなく納得」目からウロコの結婚観をおおたわ史絵と中野信子が語り尽くす

おおたわ:人間は環境の変化にとても弱い生き物だから、何かが変わるということ自体がものすごくストレスになりますよね。うちは子どもがいなくて夫婦ふたりで、しかもどちらも医療従事者なので、外出自粛が呼びかけられた期間中もそれまでと同じように仕事していたので大きな影響はなかったのですが、これまで月曜から金曜まで毎日仕事や学校に行っていた家族がずっと家にいるというのは、たいへんな変化です。1日3食、家族全員分のご飯を作らなきゃいけなくなるとか、洗濯物が増えるとか、あげればキリがないです

トヨタやスターバックスに見る、現代に必要な「DA・DA・DAの無限サイクル」とは

■DA・DA・DAのリズム  皆さんに、60歳からの人生に向けた「エール」を送りたいと思います。 それは「DA・DA・DAのリズム」です。  ビジネスをされてきた方は、「PDCAサイクル」という言葉をご存じのことと思います。「PDCA」とは管理業務を正確にスムーズに進めるための概念で、  Plan=計画  Do=実行  Check=評価  Act=改善  のことを意味します。PDCAの順番にプロジェクトを進めていき、最後まで進んだら、再びPlanに戻る。このサイクルを

※終了※【特別全文公開】異国に売られていった女性たちを取材 故・森崎和江さん代表作『からゆきさん』

※全文公開は終了しました。たくさんの方に読んでいただき、ありがとうございました。 ※全文公開は終了しました。たくさんの方に読んでいただき、ありがとうございました。 ※全文公開は終了しました。たくさんの方に読んでいただき、ありがとうございました。

おおたわ史絵・中野信子が語る依存症「やめたいんだったら死ぬしかない」と思っていた…

おおたわ:依存症とひと言でいっても幅が広くて、もっとも有名なのはアルコール依存症です。あとはギャンブル、薬物、セックス、万引き。DVなどは暴力の依存ですし、最近では痴漢や盗撮なども依存症の側面があるといわれています。何に依存するにしても、だいたいは「意志が弱いからなる」「それだけ気持ちいいからやめられないんだ」と思われてしまう。それは結局、本人がダメな人間だ、家族が甘やかしたせいだという考えにもつながります。依存症というもの自体が、まだまだ理解されていないと感じます。 中野

コンプレックスを“武器”に60歳以降を幸せにする方法

■自分のコンプレックスは武器になる  人生における「死に方」について考えていきたいと思います。  まず、やっていただきたいことがあります。  それは「人生のエネルギーカーブ」を描くこと。  一枚の紙を横長において、まず、大きな升のような線を引きます。左右いっぱいに縦の線を2本、下部に升の底に当たる横線というように、です。そして、この升の左下の角に「生まれる」と書き、右下の角に「死ぬ」と書いてください。  横軸は人生の歩み。そして、縦軸は、そのときどきにおける人生のエ

「毒親」は“いる”のではなく“なる”もの <おおたわ史絵×中野信子対談>

おおたわ:子の成長に悪影響を及ぼす親を“毒親”と表すようになったのは、ここ数年のことですよね。私が子どものころはそうした言葉はありませんでしたし、そもそも私は自分の親を毒親だとは思っていないんですよ。傍から見たら「とんでもない親だ」「毒親だ」と評価されても、渦中にいる本人は決してそう思ってはいないものです。なぜなら、ほかのお母さんもほかの家庭も知らないから。自分の親しか知らなければ、それが普通になるんですよ。だから私は、いまも母のことを“毒”だったとは思っていないですね。