俺独自のゲームワールド[俺独ゲー]3-1〜魔人襲撃編〜

今、俺谷口圭吾はシュバルツ達王都騎士団の第3団と共に洞窟の深部へ進行していた。シュバルツは隊列の先頭を歩いている事から腕が立つ、もしくは階級が高いのだろうか。俺はちょうど隣を歩いていた茶髪で眼鏡をかけた兵士に訊ねてみた。
「あの、シュバルツって階級が高かったりします?それとも強いから前にいるんすか?」
「いや、彼は目立ちたいから前にいるんですよ。」
「そうなの!?」
「違う!僕は強いから前にいるんだ!この僕の美しい剣を前に相手は何もできなくなるんだよ!」
「やっぱり目立ちたいからじゃないですか。」
「何をぉ!?」
俺はそんな光景を見てふと思った。
「シュバルツは思った通りの目立ちたがりか。」
「彼は私と同期なので新入りの時から振り回されているんですよ。」
「マルクスぅ!!僕の悪口を広げるなあ!」
彼はマルクスというらしい。いわゆる腐れ縁とかいうやつなのだろう。俺はその様子を見て羨ましくなった。現実でそんな友人はいなかった。ずっと家に引き篭もって誰とも関わらなかったから…。
「いいなぁ、仲良さそうで。」
「良くないです!」「良くない!」
ガシャアン!
「「「!!!」」」
突如天井から何かが降ってきた。全身鉄クズに覆われた蜘蛛のモンスターだ。
「こいつはアイアンスパイダーです!高ランクモンスターなので警戒を!!」
「分かった!って、シュバルツ!そんな前にいたら危ない!」
シュバルツはさっきと同じく先頭で剣を構えている。3メートル以上ある蜘蛛相手にその距離は危険じゃ…
「[(刺突き)クードロア!!]」
シュバルツはそう叫びながらアイアンスパイダーの体に剣を構えたまま突進し、アイアンスパイダーの体を貫いていた。
「グギャッ!」
アイアンスパイダーは何が起きたのか分からないまま消滅した。
「!つ、つえぇじゃん…」
シュバルツは剣に付いた血を振り落としながら振り向いた。
「さあ、進むぞ。圭吾によると奥には魔人がいるから警戒を緩めるな。」
「「「はっ。小隊長!」」」
「いやシュバルツ、小隊長なんかい!」
「どう見ても小隊長だろう!この僕が!!」
多少キレ気味に言い返してきた。
――――
しばらくして、さっきツカキチ達3人の兵士に出会った通路に着いた。そこでマルクスがリュックからランプを取り出した。
「ん?それなんですか?」
「これは[道導のランプ](みちしるべのらんぷ)。これを照らすと、足跡が映し出され誰がどこを通ったのか見る事ができます。魔人の向かった先がどこなのか判別できるんです。」
「へー、そんな道具があるんだ。」
道導のランプをかざすと地面に複数の足跡が現れる。
「この靴跡は王都騎士団の制服の靴ですね、それが複数。先程ケイゴさんが救出してくださった兵の物ですね。そしてこの靴跡はケイゴさんのですか?」
「えーと、うん。多分靴の模様的に俺だな。」
足の裏を見てみたが、足跡と模様が同じなので間違いない。
「あと、俺の足跡の横にある2つの足跡は俺の仲間のキースとミランのだと思う。横にいたから。」
「なるほど。ではこの兵士の足跡が引き摺られた跡から予測すると、この先に魔人がいて、兵士の体を引き摺り込んだ。ということですね?」
「はい。そうです。というかマルクスさんすごいですね。言ってもないのにそれだけでそのときの現場の状況を把握するなんて!」
「私のスキルは[推理]。証拠や現場があればその時の状況が動画のように頭に流れ込んでくるのです。」
「へー!良いスキルですね。」
「……そうですか…良いと思いますか…」
「…?はい。」
なぜかマルクスは俯き、話を止めた。何か気に障ることでも言ってしまっただろうか?
「では、こちらのようですね。進みましょう。」
マルクスはそのまま足跡を照らしながら進んでいく。それに続いて残りの兵士達も歩み始めた。
「(……、触れないでおこう…。)」
俺達が魔人に遭遇した空洞に着いた時には魔人はいなくなっていた。
「くそ、逃げられたようですね。」
マルクスはさっきと同様に道導のランプをかざす。しかし不自然なことが判明した。足跡が突如途切れたのだ。
「どういう事だ?魔人の足跡とキースさんの足跡が消えている…彼らは一体どこへ?」
「おい、見てみろ。近くにさっきまで無かった足跡が増えている。」
シュバルツが指差したところには先ほどまでには無かった大きな足跡が二つだけあった。だが、二つだけしかないのだ。他にその足跡がないという事は[突然そこに現れた]ということになる。
「この第三者が溶解の魔人とキースを連れてテレポートしたって事か?」
そう考える他ないのだ。あとは空を飛べる奴が連れていった可能性もあるが…
「あっ!!そういえば溶解の魔人には空を飛べる仲間もいたんだ!」
「何っ!?もしやそいつが溶解の魔人を逃がしたかもしれないのか!?それならば手がかりが…」
「それはないわよ。」
「「「!!」」」
声が聞こえてきた方を見ると、ミランがさっきの鳥人間と共に歩いてきていた。
「ミラン!!良かった、無事だったのか!でもなんでそいつと一緒に?」
「ビュッフェは溶解の魔人と共闘関係にあったけど私の事を助けてくれただけでもう敵対する気はないんだって。(まだ私も信用しきってないけど、今の所は何もしてきてないわ。)」
「(そうか。まあ無事なら安心だ。)」
「ええ。そうですよ。貴殿がミランお嬢さんのお仲間のケイゴさんですね。よろしくお願いします。」
「あ、ああ。よろしく。」
「ちなみに彼は飛来の魔人らしいわよ。」
「飛来!?」
シュバルツやマルクス達王都騎士団は驚愕し固まったが、すぐに剣を構え直した。
「飛来の魔人ならば排除すべき!覚悟!!」
「ええっ!ちょっと待って!!ビュッフェは私達に危害は加えないから!」
「関係ない!魔人は王都の法律において危険人物であり、剣舞の魔人、自然の魔人、時空の魔人以外の魔人は見つけ次第死刑対象として扱うものとする。これは騎士団に所属している限り破ってはならない法なのです。」
マルクスはそう言い、剣を構えながらビュッフェに近づく。
「おやおや、私の事は認められないようですね。溶解の魔人さんを倒すのに協力しようと思っていたのですが…」
「(おいおいどうすんだよミラン。俺はどっちに味方すればいいんだ…?ビュッフェはいい奴だとしても魔人は信用できるかわからねぇよ?)」
「(でも明らかに格下の私を、倒さずに溶解の魔人から逃がしてくれたのよ?いい奴だと思うんだけど…)」
俺達は険悪な雰囲気のビュッフェとマルクス達王都騎士団の間でオロオロしていた。すると突如シュバルツが声を上げた。
「君たち!!!」
「「「「「!!」」」」」
シュバルツは彼らの間に割って入って鋭い目つきでマルクスに詰め寄る。
「王都騎士団の最も大切な法はなんだ!?[魔人に脅かされた民を守る]ことだろう!!」
「!!」
「今、彼らの仲間が溶解の魔人に捕まってるんだ!飛来の魔人という新しい敵を増やす暇はないだろう!!」
「ぐっ。」
「飛来の魔人…いや、ビュッフェ。あんたも裏切るつもりはないと誓ってくれ。そしてもしも裏切るようなことがあれば、僕の剣が許さない。」
「私は女性と誠実な人間には味方する主義です。裏切るつもりはありません。私はこれでも鳥人族の長です。約束は守りますとも。」
「そうか。信じさせてもらう。」
そうしてビュッフェと王都騎士団の一時協力関係を築いた。
「良かったー…ここで暴れられたら体力持たねえって……」
「ほんとに安心……」
俺とミランは一息ついた。だが安心はしてられない。
「でも話を戻すとビュッフェでもないんだよな?この足跡は。」
さっきの足跡が誰の物なのかは分かってないのだ。
「ええ。私は靴を履いてないので。鳥人族という種の為靴は履けないのですよ。」
見ると、ビュッフェの足は鳥の足と同じで靴を履けないのは見れば分かる。という事は…
「やはり別の誰かが溶解の魔人とキースさんを連れ出したというわけですね。それも高度な空間魔法で。」
マルクスは足跡の近くに屈んでそう言った。
「空間魔法?」
「空間魔法は空間に穴を開けてその穴を通って移動したりその穴から何か取り出したり色々できる魔法よ。でも空間を移動する物が多い程、魔力が必要になるの。3人以上を空間によって運ぶとなるとかなり高度な技術が必要になるわ。」
「その通りだ。それに加え、魔力量も一般の人間では3人を運ぶ程の魔法は使えない。かなりの魔力量があるはずだ。」
シュバルツは壁にもたれながら考え込んでいる。するとビュッフェが思い出したように顔を上げた。
「っ!そういえば、それほどの空間魔法の使い手が近くの界域にいます!彼かもしれません。」
「そうなのか!」
「ええ、彼の名はベルジュ。エルガゴーム3配下が1人ですね。」
「!!エルガゴーム…!!」
俺はこの前出会った殺戮の魔人を思い出していた。

3-1  完

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