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そしてTrustedになる/なった/なっていた

最近、ひさしぶりに「青天の霹靂」ということばを思い出すできごとがあった。

そう、Trusted昇格である。

「VRChat」には「ユーザーランク」と呼ばれるシステムがある。「Visitor」から始まり、「New User」「User」「Known User」「Trusted User」という順に昇格していく。
条件は不明だが、おおむねプレイ時間やフレンド数などが寄与していると言われる。裏を返せば、「ユーザーランク」は「VRChat」をどれだけ遊んでいるかという証左になり得る(VRChat Plusでブーストがかかるものの)。
実益は、「New User」になればアバターが、「User」になればワールドが、それぞれアップロード可能になる(「User」でもPrivateなワールドで公開はできる)。それ以上はおそらくない。純粋なトロフィー実績に近いものだと個人的には思ってる。

そう、そんな「ユーザーランク」の"果て"に届いてしまった。到達時点のプレイ時間は800時間にやや満たない程度。VR睡眠や「放置」はしてない。VRChat Plus課金もなんだかんだしていない。去年の10月くらいから純粋にコツコツ遊んでいたらこうなったという感じだ。

……と、ここまで書いておいてではあるが、「ついにTrustedになれた……!」という感動は意外と少なかった。ずっとKnownを漂ってたので気にはなっていたが、「なってるじゃん!!!!!」という最初の驚きと喜びから先は、特に感慨深いものはなかった。

実感としてあるのは、「それだけ遊んだのな」ということだった。

MidJourney曰くこれが「trusted user」とのこと

「Trusted(信頼できる)」という表現はなかなかにおもしろい。「Known(知られている)」より上の位置に「信頼」という概念を当て込むのは、しかしプラットフォームから見ても、ユーザーから見ても、意外に理に適っているように感じる。

ポリゴンテーラーグループでは、「Trusted」という概念を会社のポリシーのような位置づけに据えている。数千時間メタバースに滞在したユーザーは、それだけ"現地"の文化に精通していると解釈し、実態に即した事業展開ができる根拠としている。メタバースブームに乗りかかろうとする「部外者」へのカウンターも込めた印象もありつつ、「長く居たから理解できる」というロジックはそこそこ素直に理解できる。

実際、Trustedになるまで遊んでいる人は、「VRChat」のことであればだいたいある程度知っている。この「知っている」は、純粋な知識というより「経験知(値)」に近い。「それならこうすりゃいいんじゃない?」というアンサーを、Wikiなどを経ずスラッと口にできること。逆にスラッと出ないときは臆せず調べること。そんな地に足着いた知だ。

「経験の積み重ね」というのはバカにできない。1年間なにかを勉強し続けたり、取り組んだりするだけで、それなりの強度を獲得した「自分なりの知」が意外と生まれるものだ。それこそ「ノウハウ」と呼び得るものなのかもしれない。
そういうものが、書籍などから得られる知識よりも役立つ場面は、そこそこある。水先案内人のようなポジションは、知識と経験が両立していたほうが安定する。ある種の「場」「空間」「世界」「コミュニティ」として成立している「VRChat」ではなおさらだろう。

ポケモンには「個体値」と「努力値」というシステムがある。「個体値」は生まれ持った能力水準を、「努力値」は後天的に積み上げた能力水準のようなものであり、この2つがポケモンのパラメーター決定に大きく関わる。
「個体値」の固定はポケモン育成において非常に重要だ。しかし、理想の「個体値」を得たポケモンでも、「努力値」がゼロだとポケモンバトルでは不利になる。「努力値」を積み上げた分だけ、はじめてポケモンは実力を発揮できる。そして、経験値とともに上昇する「レベル」もまた、重要な積み重ねのひとつだ。それとよく似ている。
(個体値、努力値、レベルの全てで勝っていても実力に差がないときは、「種族値」という種族固有の能力水準が関わる。きっとそれは「専門性」なのだろう)

「信頼できそうな人」からだいぶ遠そうな筆者近影

ひるがえって、自分に設定された「Trusted」は、なにが積み重なってできたのだろうかと考える。思えば去年の10月から本格的に遊び始めて、いろいろあった。

人とのつながりが増えた。外側からは見えないコミュニティの実情を見た。表現の可能性と対面した。「VRChat」に対する「実感」というものが体に(いまでも少しずつだろうけど)染み付いた。

そしていま、「VRChat」で起きているいろいろなことを取材し、記事するというお仕事を、比較的自然にいただいている。おそらく去年まではこうもいかなかっただろう。いろいろな積み上げのループが、今現在の自分の位置の基盤になっていることはたしかだと思う。

……じゃあ、他のユーザーから見た自分は、果たして「Trusted」なのか?

幸か不幸か、いわゆる「チュートリアル完了」とされるプレイ時間:1000時間までは、あと200時間ほど猶予がある。チュートリアルがめでたく完了したときに、その答え合わせができたらいいな。


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