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[創作]リリー(before) 4 [R18]

 リリーはせめてこのメイドさんにだけでもと歩きながらお礼をのべる。そのメイドさんは特に気にとめていなかったけれど、どういたしましてと返事をくれた。リリーの心残りが少しだけ軽くしてもらえたのはすごくありがたかった。
 そんな二人がついたのは一つの扉。鍵を開けて中に入るとベッドが一つ、デスクと椅子のセットがあるこじんまりとした一室だ。メイドさんはリリーに部屋の事などを手短に説明する。食堂とシャワーとトイレ等生活で利用する場所についてや学校生活のこと。

「卒業したら実家に帰らずにそのままメイドになりなさい。もうずっとここにいて生活をしてくれればいいの。自分の趣味もやりながらね。」

 車においてきたはずの見覚えのあるギターケースを近くに控えていたメイドが持ってきてくれる。驚くリリーに渡すと下を向く。優しい言葉を掛けたメイドさんは下を向く少女を抱き寄せて頭を撫でてくれる。大粒の涙を流しながらリリーはもう死ななくてもいいんだととても安堵した。

 一方応接室だが、リリーの父親が若い執事によって取り押さえられていた。この屋敷の主人に向けててを出そうとしたからである。そうして押さえられたところで女主人は改めて彼に宣言した。

「今後、あなたのお嬢さんは私の元で育てます。」

 理由は少女を襲った強姦は彼女の家のとなりに住む男性だということが判明した。いつも夫婦で欲を満たしている深夜の決まった時間に帰ることを知っている。彼女の行動を調べて犯行に及んだ。深夜に帰らないとふたりきりになりたい両親がリリーに暴行を加えていますよね、と女主人はとても冷たい視線を向けている。
 それをめちゃくちゃ短い時間帯で調べられたのはこのお屋敷の執事にしておくには勿体ない位に優秀な弁護士がいるためだ。彼は警察に拭いた傷を洗い流すために使った布から出てきた体液や指紋に少女やメイドのものではないものが含まれていることを突き止めた。そしてその結果で出てきた人物の場所のとなりにはロックミュージシャンのポスターが貼ってある部屋が見えた、と。
 恐らく警察はその弁護士が調べた家のことをもとに家宅捜索、下手したら逮捕しているかもしれない。もちろん少女の母も父もただでは済まない。
 つれていきなさいと命令する。執事によって静かになった部屋で優雅に紅茶を飲んだ。これは少し性に合わないことをいい続けたかもしれないなと分析する。しかし今回はここまでしないと命を救うのが難しいと理解しているのでやらなければいけない。これは自分の家族に対してはできなかった後悔の決着への一歩だった。

 リリーのその後であるが、車で送り向かいしてもらっているうちに執事と仲良くなった。名前はオリバー・マクドナルド、5歳年上だ。たまにリリーのお店についていくと車を運転しているせいで飲めないのになぜかチキン野郎というレッテルを貼られ、お前にはままのおっぱいがお似合いだと牛乳を出されるようになる。そんなふうにされても気にしないのにリリーのことは見ているし、なにかトラブルがあるとそれとなく守ってくれた。頼りない演技をしている意外と頼れる兄貴分である。
 そんな生活がリリーが卒業するまでの数ヵ月間、大きな事件が起こるでもなく続いた。卒業してからは今までの大恩を返すためにこのスチュワートのお屋敷で働く。メイドさんは実はメイド長、貴族様はご主人様。この二人のためにリリーができることをこれから一生かけてやっていくのだ。

<了>

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