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[創作]アメリアと12

 シャーリーの食事を運んでいると、ローラが近寄ってきてくれた。リリーにふらふらしているけれどとローラは指摘する。リリーとしては絶対にオリバーがしたキッチンでのことで頭がいっぱいすぎてというのが正しい理由なのだけれど、ローラには違うことを理由にした。

「ご飯をまだ食べていないから頭が回っていないのかもしれない。」

 ローラはリリーにちゃんとしっかり食べてねと言った後でこれからの自分について報告してくれる。今日からローラはクレア様の世話をヘレン奥さまから引き継ぐらしい。ご飯を届けたり、彼女の希望で追加になった着替えの手伝いなどだ。そして、それと平行してシャーリーが屋敷に来てからあの部屋に移るまで過ごしていた部屋の片付けもする。リリーに一言残すとシャーリーのもといた部屋へと向かった。

「何かあれば手伝うから。遠慮なく言ってね。」

 リリーは心のなかで早速お世話になりそうと力なく呟いた。

 リリーが二人の部屋に戻るとクレア様がシャーリー様と雑談している。数時間前のことを根掘り葉掘り聞く。

「シャーリーが無表情で固まるの始めてみたわ。」

 リリーは部屋と廊下を隔てる扉の鍵をそっと掛ける。これでここにいる人を除いてはいることができなくなった。
 シャーリーは私のことはいいよと顔を赤らめる。リリーがご飯を用意する傍らでシャーリーはだってと話し始める。

「だって、リリーかわいかったんだもん。寝てる姿も起きて話してくれるときも全部。そう思ってたらいつのまにかキスしてた。」

 リリーはポーカーフェースを装いながら朝食を主人の前に並べる。本当は自分のためのご飯をクレア様の前にお出しした。心のなかではもうシャーリーは少し自重してください、恥ずかしすぎて仕事ができません、と大声で叫びながら配膳していた。
 そしてそんな二人の表情の変化を観察しながらクレアは全くかわいい子達ねと母のように生暖かい笑みを向けるのだ。

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