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[創作]アメリアと5

 2台の車が屋敷の表玄関に停車し、もう一台の車はそのまま停まらずに奥へと向かった。本当なら2台ともひとまず玄関前で停まることになっていたはずだ。車を降りた3人はおそらくリリーのために停まらなかったんだなと察した。
 ヘレンとシャーリーをメイド長のシーアとローラで出迎える。屋敷は特に問題なかったことを報告されるとヘレンはシャーリーにそのままついてくるようにと歩き始める。

シャーリーは言われるままついてきた先は、迷子になったときに見た気がする扉の部屋だ。
 そして、その部屋に入るときにはこれをと差し出された。それはごく普通の針だ。それを指に刺して血を出してからドアノブに触れるようにと説明される。
 シャーリーはおそらくクレアみたいにここが今後自分の部屋になるのだと理解した。リリーも同じことをするからということだ。そうすることで命のメイドであるリリーが生きている限りは鍵が開いている限り入ることができる。そして、リリーがいなくなった時点でいまのクレアの部屋と同じく許可した人のみ部屋に入れる。
 ここでリリーが到着する。彼女の目が赤いけれど幸せそうな表情をしているのでオリバーと何かあったのだなと確信した。

 シャーリーは針を自分の右の親指に刺す。そして少し回りを押してあげると血がにじむように出てきた。この状態で言われた通り怖いけれど思いきってドアノブをつかむ。すると何か熱いものがドアノブをつかむ手から自分に流れ込んでくる。めまいがしてきて立っていることができなくなるほど血からが抜けて座り込んでしまう。
 それを優しくリリーが支えた。心なしかこの短時間見なかったうちに艶が出てきたこのメイドはどうしたらこんなに変化があるのかと気になった。

 続いてリリーが同様に行う。リリーはシャーリーを支えているので座ったままで。彼女は右の薬指にする。そしてシャーリーが握ったドアノブに同じく手を伸ばした。おそらくシャーリーが味わったものの同じかそれ以上の体験をしているだろう。つらそうに見える彼女は目を閉じて呼吸を整える。そうして目蓋をあげたときにもとの彼女に戻っていて、心配そうな表情をしているシャーリーの頭を撫でた。

 これで中に入れるからとヘレンが話終えるとメイド長を伴って部屋には入らず立ち去る。そして今夜は二人でこの部屋で過ごすようにと付け加えた。リリーはシンプルに驚いたがシャーリーは嬉しかった。パジャマパーティをしたことがないから。密かに夢見ていたのだ。
 ローラはパジャマを持ってきますねと席をはずした。リリーは主人をこのままにしておけないので、立ち上がるとシャーリーの前に手をさしのげるのだ。

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