[創作]アメリアと4
リリーはこうしてオリバーの運転する車に乗っていた毎日がもう半年以上前の出来事なのかと言う事実に驚いていた。シャーリーお嬢様ことアメリア・スコットと言う俳優がヘレン奥さまとリリーを繋げてくれた。そして、こうしてそばにいることを許してくれている。リリーがヘレン奥さまに拾われるまではそうではなかったけれど、いまはとても幸せな日々。それを謳歌することを許されていることに感謝した。
ただ一つの心残りを除いては。
今回の行程はシャーリーお嬢様のお墓参りとリリーのお別れ。そして、屋敷でやることをして朝を迎えるまでがひとくくりだ。ただ、屋敷に帰ってからは形式だったものは最初だけ、それ以降は意外と自由なのだそう。お墓参りの前に軽く打ち合わせをした時にヘレン奥さまが微笑んでお話ししてくださった。
いまは屋敷へと移動する車の中。ヘレン奥さまとシャーリーお嬢様はイーサンと運転手と別の車に乗っている。リリーはオリバーの運転する車の後部座席にアタッシュケースと乗っていた。
オリバーは車に乗ってるときにリリーが話さないことを知っているので最初に小さい飴を口に頬張る。お決まりになっているこの行動をこちらもいつものようにボーッと見ていた。
リリーが学校を卒業してからもオリバーはなにかと助けてくれていた。これが当たり前になる程に。心地よくて甘えていたけれど、これも今日で終わらせないといけないのかと。もうこんな風にいられることもなくなる。いつかは彼が結婚する姿を見ないといけないのかと思うと、なぜか涙が出てきた。あぁ、これは心に思っているだけではだめで、きちんと伝えないといけないとどんなに結果になったとしても納得するために必要なのだと。
オリバーはおそらく飴がなくなっているのだけれど話さないでいてくれることを良いことにリリーは話し始める。
「あのさ、オリバー。」
「ん?」
リリーは少しずつ話す。すごく意識しているのがわかるので動悸がすごい。でも話し始めてしまったので続ける。
「私あんたのこと最初兄みたいな気持ちでいたんだけど。今回で一つ言いたいことができた。」
ここまで言ったけれど次の言葉つまって下を向いてしまう。オリバーはなにも話さないで待っていてくれる。リリーはいままでもうオリバーしか考えられないのだ。一番リリーに優しくて一番頼りないくせに、でもだからかな一番・・・。
「あなたのこと、好きだったよ。」
ボロボロに泣きながらなんとか絞り出した言葉だ。状況としては自分は自分だけど自分の命だけではなくシャーリーという主の命でもある。だからたぶんもう結婚できない。もし結婚できたとしても死んでしまったら大好きなシャーリーお嬢様の一生もここで終わってしまうから。子供、ほしかったけれど諦めないといけないなと思う。そもそも結婚できないから仕方ないかと目蓋を閉じた。
「あと、こんな状況になってからでしか言えなくてごめんね。」
ボロボロ泣きながらなんとか話を終わらせた。
オリバーはここで始めて言葉を発する。言いたいことって1つじゃなくて2つじゃないか、好きとごめんってさという。あくまで冗談めかして年下の少女に話しかける。
「でも、俺こそごめんな。リリーをずっと守りたかったけどもうお嬢様の命になっちゃって。自分の自由が利かない中で告白させてさ。これからもずっとそばにいるからさ、お嬢様の命になっても変わらずにいてくれると嬉しい。」
オリバーは車を路肩に停めてリリーに振りかえる。リリーはずるいとい言うと下を向いて涙をボロボロ流しているままだ。
「あとさ、子供要らないから、結婚してください。僕のかわいいスカーレット。」
「プロポーズはもっと雰囲気のあるところで肌に触れてもらいながら言ってほしかった。」
止まらない涙を流しながら憎まれ口を言う。しかし、ひとしきり涙を流すとはにかみながらオリバーのプロポーズに答えるのだ。
「こんな私でよければ喜んで。」
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