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[創作]アメリアと7

 シャーリーはすごく興味ありそうなキラキラした表情でリリーを見つめる。そして自分が座るソファーの隣に座らせると、質問いいかな、と問いかけてきた。

「オリバーと何かあった?今は大分いいけど目が赤かったし。涙を流すほどの何かをされたのかもしれないし。でもオリバーは変なことする人じゃない、だから気になったの。」

 リリーは顔を真っ赤にしてシャーリーの視線から自分が合わせていた視線をはずした。リリーがうろたえるときは大抵自分に降りかかるすごく嬉しいこと、ということを何となく理解しているシャーリーは笑顔で話を続けた。

「うん、やっぱり変なことじゃなかったのか。よくわからないけれど、おめでとう。」

 リリーは少し間があってからシャーリーに今まで彼女に見せてきたどの笑顔よりも幸せそうにして見つめる。そしてお祝いに対してお礼をのべた。

「シャーリーお嬢様、ありがとうございます。実は、オリバーにプロポーズされました。」

 自分から告白したことは伏せて最終的なところだけ話す。シャーリーは興味津々そうにいろいろ質問した。

「プロポーズを受けたの。キャー素敵。改めてリリー、おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「それじゃあ婚姻届は明日出すの?指輪は?」
「おそらく今回のことで婚姻届は出せないと思うので指輪だけ。」

 シャーリーはゆっくりと自分のことを話してくれるリリーに嬉しくなってたくさん聞く。リリーも最初こそうろたえていたけれど、少しずつ実感を持ってきたみたいでそこからはいつもの感じで答えてくれた。

「そっかー、いいなー。」

 リリーが話してくれることに対してのシャーリーが口にする相づちがこの台詞。いずれ自分もこの家を次に繋ぐために必ずしなければならない結婚。でもきっと貴族だから自分の意思とは別に人に決められてしまうのかなと心の中で少し落ち込んでしまっているのを隠している。
 リリーは湯冷めしないようにとシャーリーをベッドにお連れする。使わない部屋の電気を消してベッドルームに。ベッドルームも大きい明かりは消して柔らかい光だけにした。

「結婚、したいなー。」

 シャーリーは好きだと思える人との結婚という意味で呟いた。決して自分の意思はどこにもないという結婚という意味ではない。
 おそらく隣にいるのがクレアだったら、急に抱き寄せてシャーリーに甘くて深い大人のキスをする。そしてこう耳元でささやいてから体にも愛を注いでくるはずだと想像した。

「それじゃあ、結婚は私とする?」

 シャーリーはそれはそれで嬉しいかもしれないけれど、クレアだと別れた時の自分がすごく怖い。彼女しか見えていなくて一緒に後を追ってしまいそうで。少し目蓋を閉じて妄想を書き消す。なんとなく手が震えていると思う。
 しかし、リリーは怯えたシャーリーの前髪をすこし手で避けるとおでこにキスをしてくれた。そして、その考えを一気になくしてしまうほどの笑顔と言葉を掛けてくれる。

「シャーリーお嬢様はできますよ、幸せな結婚。」

 リリーは自分がどういう環境で育ってきてどうしてここのメイドをすることになったのかをシャーリーを寝かしつけながら話す。オリバーがどんな存在なのかとかもきちんと。おそらくシャーリーを元気づけるためのエールになればと思ってくれているのだ。
 電気を全て消して、ベッドに横になったシャーリーを抱き寄せてリリーは頭を撫でる。シャーリーはリリーの腰に腕を回してしばらくリリーに甘えた。

 リリーは規則的な寝息をたてるシャーリーから離れて改めて寝ようとした。しかし、腰に回された手が体にジャストフィットしているようで無理矢理剥がすと起こしてしまうなと思った。仕方ないかと諦めてそのまま目を瞑る。
 しかし、すぐ目蓋を開けた。部屋の扉が開く音がしたのだ。心なしかこちらに近づく気配がする。リリーはできる範囲でシャーリーの盾になろうと体勢をかえた。

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