それはいつの間にか咲いていた花のように、知らない間に降り出していた雨のように、唐突といえば唐突で、でもびっくりするほどいきなりでもない、そんな間合いで始まった話だった。 「いたんだよね、亀が」 不意にそんなことを言い出したまっちゃんに、愛用しているヒッコリーのドラムスティックを片付けていた私は、んああ? と変な声で訊き返した。 「だからいたの、亀が。衣装ケースの中に」 「まっちゃんの家の?」 「違う。大学のときに住んでたアパートの、隣のアパートの前に置いてあった洗濯機の、