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孤高のヴァンパイアハンター

「う、うわあああああああ」
 午前0時。飲み会の帰り、誰もいなかったはずの高架下。僕はいつの間にか3人の男に囲まれ、そのうちの1人に抱きつかれ、首筋を噛まれようとしていた。そう。奴らは人ならざる者……吸血鬼なのだ。僕の動きを不自由にしている彼の牙はもう皮膚に触れている。僕は咄嗟に命の危険を感じた。もうだめだ……そう思ったとき。

パアン

 響いたのは銃声だった。音のする方を振り返ると、1人の吸血鬼の脳天が撃ち抜かれていた。彼はその場で動かなくなり、ドサリと鈍い音を立てて前方へと倒れた。銃声に怯み、僕を押さえつけていた吸血鬼の力が抜けたことを確認すると、僕は彼から逃れ、あたりを見渡した。すると少し離れたところに、リボルバーを構えた者の姿を捉えた。背が低く、パーマのかかった銀髪の老婆だった。彼女は眼光鋭く化け物たちを睨みつけている。
「小僧、命が欲しければその場を動くなよ」
 歳の割に通る声で彼女は言う。吸血鬼たちは標的を彼女に変える。
「こい」
 彼女は銃を構え直す。そして向かってくる2体の吸血鬼の頭を順番に打ち抜いた。
「こ、こんなことしていいんですか? 銃刀法違反に、殺人ですよ? 」
 混乱のあまり、僕は命の恩人にそんな失礼なことを言った。彼女は冷静に返事をする。
「こんな化け物どもに、人間の常識など通用せんわ。それよりお主、少し噛まれたろ」
 そう言われ、僕は首筋を右手で触る。手のひらを見ると、微量だが血液がついていた。
「お主、このままだと吸血鬼になってしまうぞ」
「えっ」
「落ち着け。すぐになってしまうわけではない。それに今なら止めようがある」
「一体どうすれば……」
「わしについて来い」
 歩き出す彼女の背中に僕は呼びかけた。
「あの……あなたは一体? 」
 彼女は僕の方を振り向いて言った。
「わしはヴァンパイアハンター。吸血鬼になった娘を討伐するために奴等を追う、ただの老いぼれじゃ」

【続く】

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