久しぶりに会った姉が大手ジャンルの腐女子になっていた話

私には一つ上の姉が居る。
大人になってからは年1、2回、買い物やランチなどする友達のような付き合いだ。

姉の推し活。

事の発端は私が某古本屋さんで姉の推しの写真集を見つけて送ってやったことにある。
姉はここ7、8年GACKT様のラバーズである。
私たちの世代はそれまでも可も不可も無く知っていたGACKT様なのだが、突然ライブに誘ってきた姉の言い分がおかしくて今でも忘れられない。

『転職期間中に暇だからガンダム観ていたらハマった』

ガンダムを観ていてGACKT様にハマる人はどれだけいるのだろうか。
私にはご本人が元々ファンで何かのシリーズの何かの歌を歌っていた記憶が薄っすらとある程度だ。

ともかくその姉と久しぶりにランチでも、という話になった。

姉と会うには少々覚悟がいる。
おひつじ年✕おひつじ座、のほほんとおおらかさがキャラ化されたような姉だ。何をするにもぽわ~としていてゆるい。
一方の私は、サル年✕かに座という、一人猿蟹合戦を体現したかのような性格を地でいく。負けず嫌い、やられたら3倍返し、より効率・効果的に何かを仕組み、末代まで目にもの見せてやる精神、サイヤ人もびっくりの好戦的戦闘民族である。
ぽわぽわした姉と会う度、良いからテキパキ動けとイラッとすることが一度はある。

それも大人になってだいぶマシになった姉が、ランチを提案してきた。
「古民家カフェ巡りでも」

(==)

その瞬間の私はほんとうに↑こんな顔をした。

姉はコーヒーを飲まない。
コーヒーを飲まないくせに、某県の喫茶店にGACKT様が行ったから行き、家では常温のミネラルウォーターしか飲まないとかいう意識高い系のくせにネスカフェのバリスタ機にGACKT様がコラボすれば買って、彼女の夫だけが側面に描かれたGACKT様をちょっと馬鹿にしながらも「美味いね」と飲んでいる。そんな状況だ。

もちろんコーヒーだけに限らないが、お洒落系カフェというのは大体コーヒーに力を入れている。姉がカフェに何の用があるというのだ。
しかも古民家、姉は歴史にも興味がない人だ。
なのでそれは何故突然に……

「近頃の推し活で」

ほら、やっぱり。
またGACKT様が古民家いいよねと言い出したのかと思ったら

「アキバらしくぬい撮りもしたい」

ぬい撮り?! アキバらしく?!

GACKT様のぬいかと思ったが、何やら新規の推しが出来たということだけ教えてくれた。どうやら二次元らしい。
そのままランチの約束の日になる。

姉の新・推し

古民家カフェはとてもお洒落で美味しかった。
料理の皿が出てきた時、姉の新規の推しが登場した。

「これー」

ちっちゃい手のひらサイズのぬい……、
デフォルメされているが私が知る限りこれはGACKT様ではない。

これは……なんだっけあの苗字

なんで……
何故これなんだ?

と思いながら自分の知っているキャラ名で恐る恐る聞いた。




「これは…… カゼバシラサマですよね?」

「うんー!」



なんでキメツーーーーーーーーー?!
しかも風ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!

まず、そんな超超超大手ジャンルの漫画・アニメであることに驚く。
何せ原作は読んだと聞いていたが、その時点では沼っていなかった。
誰もが知っている国民的アニメ、王道的な作品は普通に楽しむ程度でどっぷりハマるようなタイプではない。しかも原作も完結しアニメにもほぼ出てこないキャラに、いま突然ハマるのは何故だ。

キメツといえば一時期GACKT様が某無惨さまにネタ的に寄せていたし、キャラ的にも姉がそっちは好きだなとは思っていた。
なのにアニメでもまだ出番の少ない(まだアニメは遊郭編まで)風の人、少々ヤンチャでまぁあのガサツな言動のキャラじゃないですか……?
いわば怒鳴り系、激昂キャラを姉が好む気がしなかった。
大人気の煉獄さんや冨岡義勇でないのは姉らしいが、そのマニアックな趣味でいったら無一郎くんか派手派手宇随さんあたりのが納得だ。
姉のハマり方は今までも謎だったが、今回も『今までこれが好きだったから』と理由付けできるものがなにも浮かばない。

ハマったキッカケはやはりGACKT様情報交換に使っている垢のTLでらしい。あぁいう方々の中にも絵をお描きになる人は多い。
二次創作が流れてきて、それがどれもプロ級で刺さる、尊い……と衝撃的だったそうだ。

私もキメツは好きだ。
どのカプでもどのキャラでも素敵に描かれているから二次創作も覗いては「あぁ素晴らしい……いい作品だった~」と眺めている。
しかし特に追ってはいない。
追っていないので、あそこまで母体の多いジャンルの中から自分の目に留まるのは万リツファボされたような、中身がしっかりしていて心に刺さるような作品だけだ。もちろん大きい母体の中にはいわば駄作もあるのだろうが、そういったものは流れても来ない。

それは姉も同じだろう。
だから姉の中では

「キメツの二次創作している人、みんなすごいの!!」

なのだ。
そして姉のフォローしている中にやたら原作後生き残り組を推している方が居てよく回って来る。そこに描かれたさね●ゆ・ぎ●さねに、んあーーー!尊い!とハマったと。

こいつは本編準拠派だァ……

驚きなのは腐どころか二次創作同人をまったく通ってきてないのにBLに抵抗が無いことだ。「関係性が好き」「なのでリバも別カプもわりと平気」と私とまったく同じ事を言い出した。
姉はただ眺めていいねとRTするだけのROM専を楽しんでいる。
リプなど話しかけたりはしないのか、と聞いたら、

「自分が創作するわけじゃないから~」

と無難な返事だった。
姉も私も美術の成績は良いほうだったが、どちらもアニオタ・漫画オタ・同人を齧って来なかった。アニメ絵を嗜んで来なかったし、もし絵が描けたところで姉から神絵師さんたちのようなストーリーのある作品を出て来るかというと、私にも姉本人にも想像できない。そういう人ではないのだ。

それなら安心だ……と油断して居たら

「コミケに行きたい」

と言い出した。

リアイベに行きたい姉

「行ったことある?」
「う、うん……」

一応、私は自分の夫には、私がハマっているジャンルのアニメ仲間が居る、その中には同人誌を出すような人が居る、その人たちの薄い本は持っている、コミケに行ったことまでは告げてある。なので姉へもそこは隠さなかった。

しかし姉も夫も、私がアニメキャラに

あっ、あっ……んっ……と喘がせたり
ろくに会話もしてないカプを捏造したり
なんならBL風味な話を書いたり
原作にない妄想小説を書いたり本にしている、
とはさすがに思っていないと思う。

そもそも二次創作は知っているが、そこに字書きや二次小説という存在は頭になさそうなのだ。一般人だった頃の私も知らなかった。
妄想二次小説は、昔からお絵描きが好きな子が「好きなキャラ描いてみたよー」といえるのとはわけが違う。
ここに私の葛藤が生まれる。
コミケに行ったことあるのと、自分が創作しているカミングアウトはまるでレベルが違うのだ。
自分の創作物の内容に関してはそれほどエロくもなく見せられなくはないのだが、妄想小説という部類がある事すら薄っすらな時点で「こいつやべぇ」になりかねない。

まぁコミケなら、、、私が知り合いに会いに行かなければいい話で……
と思っていた。
「連れてってよ〜」と姉が無邪気に言い出すのを「やだよー」と最初は軽く流していた。
「いいじゃん、行ったことあるんでしょー」
「やだよ」
「18日の日曜だよー」
「それ、コミケじゃないよね?!それスパークだよね!」

即座に回答してしまった怪しい妹。
ご存じの通り『コミケ』と呼ばれる夏・冬年二回の大規模な同人即売会は年末だ。18日のそれは一般に呼ぶ「コミケ」じゃない。別の赤ブーイベントだ。
そして姉の言っている日付に私はとてもとても覚えがあった。

「すぱーく!それ〜。それはコミケじゃないの?」
知っているのなら話は早い、とニコニコする姉を目の前に私は戦慄していた。

残念ながら私はその日、初めてその大手イベにサークル参加する日である。
私はいままでネット中心頒布で、某ジャンルでの小規模同人即売会にしかリアルイベントには出ていなかった。しかしこの度熱心に動いてくれた同ジャンルの方々の尽力でオンリーが開催されるというから、他のジャンルも集まる大手の即売会に初めて出てみることにしたのだ。

そこで初めて知る。

 さね●ゆオンリー

が同日にある。
しかも同じホール。

まさか初のサークル参加で、現地で家族にオタバレの危機とかそんなことある?

そもそも姉が一般でウキウキ来たとしても、私はサークル参加である。
一緒には入れない。
自スペースを開けるのもどうかと心配しているのに、そんな大手ジャンルの人気アンソロ列や壁サーなどに並んではいられない。
そこで気づいてしまった。


……こいつにサークルチケットを渡せばいいのでは?

いっそ、売り子も手伝わせれば。
あまりにwin-winな結果に揺らぐ。バラしてしまえば全てが上手く行く。

『お前も売り子にならないか?』

思わず出かかったがその場では思い留まった。
こっちも初参戦であって、スペースを回りたい姉を構ってはあげられない。
何せ同人即売会がどんなものかもわかっていないのだ。
せめて一度でも入った事があるなら、入場だけは手助けしてあげるから頑張れ、と送り出す手もあったのだが。

さぐりさぐり話をしていったけれど。
姉自身はとても謙虚に実に正しく楽しくROM専を楽しんでいたので、やはりお手を触れないでおくことにした。
創作側・サークル側になるのは姉本人の自発で起きたほうがいい。

帰った私は姉の垢を探す

帰った私は姉の垢を探しまくった。
しかしROM専のアカウントをどうやって見つければいいんだ。

私には姉のGACKT様垢を「ついったー始めたんだ~」と聞いて数秒で見つけ出した実績がある。
その時はライブに一緒に行き、運良く私がステージから投げられたバッグバンドの方のネクタイを取って姉にあげたため、翌日「妹 ネクタイ」で画像検索をして案の定炙り出すことに成功した。

しかし今回のROM専のアカウントはどうやって見つければいいんだ。

まず、ぎ●さね・さ●ぎゆ絵師さんのツイを片っ端から漁った。
片っ端からいいね欄をひらき、それっぽい垢を探した。
しかし検索で出て来るような作品のツイには皆3桁近くいいねが付いている。まだ甘い。
あやつはRTもしていると言った。
偉い、偉いぞROM専の鏡……
RTした垢の欄をひたすらスクロールしていくと、いくつか見ているうち「さっきも居たな」と同じ垢が目につくようになる。

姉の付けそうな名前は絶対わかる自信があった。
たとえば澪とかレイとか優愛とかまったく自分に関連ないどなたかの名前は名乗らない。みかんとかコタツなど、何かの名称でもない。響きだけの「みゃー」とかでも絶対無い。
本名に関連付いているはずだ。

そしてプロフ写真が未設定なんてことは絶対しない。
かといって絵も描かないし公式絵を持ってきたりはしない。あるとすれば公式で、自分の手元にある物の写真だ。
手がかりはそう、あのぬいである。まだグッズはほとんど集めてなくあのぬいだけだと言っていた。
ぬいの写真をプロフにしている人で、近い名前の人も居る。
すごいな大手ジャンル。同担の中でこんなに居るの……

姉との会話で、
・フォロー数は200前後。
・ROM専だけど4,5人はフォローしてくれている
とヒントを得ている。

その結果、これかな……?と思う垢が2、3あったので非公開でリスイン。
数日後、やはり第一候補であった垢が私と行った店の写真を上げていたので確証を得てめでたく全垢でブロック。

無事、18日のイベントでは姉に尻尾を掴まれずクリアできたのでここに供養。

以上、note使ったことないからnoteっぽい文章で書いてみたかった話。

※もし姉付近の方が読んだらいっぱつでわかる内容ですが、
その時はその時で遠慮なく売り子になってもらおうと思います。