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寺山修司をたずねて 青森ライヴ旅行2018その2

2018.07.01

 恐山までは青森駅から三時間ほどかかる。ライヴまでに青森市内に戻って来なければならないので、早起きして青い森鉄道に乗った。朝ごはんは鯖の棒ずしを買って、乗り換えの野辺地駅で食べた。待合室の駅そばは種類がいっぱいあっておいしそう。
 野辺地はサッカー日本代表の柴崎岳選手のホームタウンらしく、全力で柴崎選手を推していた。

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 ここでまさかのアクシデント、大湊線が倒木の影響で運転見合わせになってしまった。復旧の見込みがたたず、下北駅までタクシーで振替輸送されることに。えっこれどうなっちゃうんだ……恐山へたどりつけるんだろうか……と不安になりつつ、下北半島へ向かって爆走する車内でぼんやりしていた。
 途中、巨大な風車が見えた。位置的に六ヶ所村の風力発電だと思う。

 なんとか下北駅に着いたものの、二時間に一本しかない霊場行きのバスは行ってしまっていた。バス停で途方に暮れていると、同じバスを目指してやはり振替輸送されてきたらしき人たちが「恐山に行くなら、よかったらタクシーご一緒しませんか」と声をかけてくれて、四人でタクシーに同乗して恐山へ向かうことになった。
 結果、バスの運賃と変わらないぐらいの金額でほぼ予定の時間に到着でき、さらに道中タクシーの運転手さんに観光案内もしてもらえて、むしろ得した感がある。恐山冷水のところでわざわざ車を止めて湧き水を汲ませてくれたし。災い転じて福となすとはこのこと……よかった……!
 原発が止まっている影響で、定期検査の作業員が来なくなってしまって周辺の産業がヤバい、みたいな地元ならではのしんどい話も聞いた。しんどい。

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 恐山は硫黄の匂いがして、圧倒的に異界だった。
 写真や映像の恐山、それこそ『田園に死す』で見た恐山はやけにあかるい印象があったが、実際の景色もあかるかった。終始曇っていて、天気雨が降ったりして天気がよかったわけでもないのに不思議にあかるくて、あのあかるさが異界っぽい。

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 とくに賽の河原のような地獄谷を通って、急に景色がひらける極楽浜には彼岸を感じた。おそろしく水が透きとおっていて、それもまた俗世のものではないという感じがした。この世の外へ続いている風情があった。

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 無数の風車が回るキュルキュルキュル……という音が絶え間なく聞こえて、こわい。けれど風が止んで音も止んだところにカラスがひと声鳴いたりするともっとこわい。
 どこを見ても絵になるフォトジェニックな風景なのに、実際にはぜんぜんうまく写真が撮れなかった。

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 境内には温泉があり、入山料だけで入浴できるので思いきって浸かった。いいお湯だった気がするけど、小屋の中に湯船があるだけの、戸を開けると外から丸見えになるような環境なので、正直裸になるのは勇気がいる。私もハラハラしてのんびりはできなかった……

 天気は朝から不安定だったのだが、山を下りて食堂で山菜そばを食べているうちにものすごい土砂降りになった。

 来たはいいけど帰れなかったらどうしよう……という心配も多少あったのだけれど、帰るころには大湊線もちゃんと復旧しており、電車でつつがなくホテルへ戻って来られた。
 時間までに戻って来られてほんとうによかった……と噛みしめながらシャワーを浴び、着替えて青森市民ホールへ向かった。本人も完全に失念しつつあるが、そもそも青森へはBUCK-TICKを観に来ているのだ。

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 ライヴは素晴らしかった。セットも演出も凝っており、アルバムの世界観や物語がよく伝わってきて、音楽劇を観ているような気持ちになった。虚構が強かった。
 BUCK-TICKは十三年ぶり、「十三階は月光」のツアー以来の青森公演らしい。そういえば、「十三階は月光」ツアーの青森公演にはめちゃめちゃ行きたかったのに行けなかった覚えがある。その悔しさがどこかに残っていて、今回青森まで来てしまったのかも知れない。
 開演前に、デビュー当時から好きだけれどライヴには初めて来るという地元のかたに話しかけられて、少しお話できたのも楽しかった。

 ライヴのあと、お寿司屋さんでウニとイクラとホタテがどっさり載った海鮮丼を食べた。幸せ……

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 翌日は青森駅の近くの青森港で、海と青函連絡船の八甲田丸だけチラッと見てすぐ新幹線に乗ってしまったのだけれど、帰る前の夜になって地元のBUCK-TICKファンのみなさまがまとめていた青森市内のおすすめグルメ情報を入手し、もっと早く知っていれば……と激しく後悔した。A-FACTORYとかねぶた館(外観がおしゃれ)とかにも行きたかったなあ……。
 こんな調子で各地に次回の宿題を残して、また行かねば……! となってしまうので、旅行すればするほど行きたい土地が増える一方なのだった。

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