ジーン・ラヴズ・ジザベルとコクトー・ツインズ
「Fool's mate」1986年3月号の今月のレコードのコーナーで紹介されていたジーン・ラヴズ・ジザベル。超美形の双子、アシュトン兄弟がフロントを張っていたという事実だけで、十分にインパクトがあり、私はその妖艶さが好きだった。ポジティヴ・パンク〜ゴスのムーヴメントがUKで花盛りだった1983年にアルバム「Promise」でデビュー。続く「Immigrant」(日本語のタイトルは「過ちの美学」。誰がこんなタイトルをつけたんだか?)は初期傑作との声が高く、硬質なギターと夢想空間をつくりだすエコー処理、妖しく翳りをもったヴォーカルは今聴いてもなかなかに刺激的。「Immigrant」のレコード評ではポスト・ヴァージンプリューンズとか、ポスト・ジョイディビジョンと高評価だった。4thアルバムを最後にマイケルが脱退し、「双子のフロント」という一枚看板は崩れるが、バンドは活動を続行。私はこの頃にはもうこのバンドの追っかけはやめてしまった。ポップ色を強行に打ち出していき、90年代初頭にはハードなアメリカン・サウンドに移行しているが、この辺りからファンの間では賛否両論を巻き起こしている。この傾向は、同じポジティヴ・パンク〜ゴスのムーヴメントの文脈で語られるサザンデスカルト→デスカルト→カルトにも言えることだが・・・
Gene Loves Jezebel - Upstairs
From Promise (1983) Picture by Eugène Atget
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Gene Loves Jezebel - The Immigrant - YouTube
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同じくレコードコーナーで紹介されているコクトー・ツインズ。1985年の2枚のシングル「Tiny Dynamine」と「Echoes in a Shallow Bay」が紹介されている。このグループも私が好きだったレーベルの4ADの代表選手で、ずっとレコード(懐かしくて後にCD)を集めていたのだが、4ADを離れて1993年にリリースされた7枚目のアルバム 「Four-Calendar Café」以降は買わなくなった。どうも私は、個々のアーティストよりもレーベルカラーが好きだったようだ。その4ADも変わってしまったが・・・私が好きだった4ADらしさとは、退廃的な音と耽美的なデザインの一致だったり、ゴシック調のスタイルを特徴としたアーティストだったりしたわけだが、1990年代にロサンゼルスにオフィスを設けたあたりから変質していく。
コクトー・ツインズが、フレイザーの声は幽玄と粗野が入り交じり、ガスリーの強いエフェクトがかかったギターと結びついた2枚目のアルバム「Head over Heels」で追求し始めたスタイルは、1990年にリリースされた6枚目のアルバム「Heaven or Las Vegas」で頂点に達し、商業的に最も成功したが、4ADの創始者アイヴォ・ワッツ=ラッセルとの諍いやガスリーのアルコールを含む薬物中毒等が原因で、バンドは4ADと袂を分かつこととなる。アルコールを含む薬物中毒と聞けばほうっておけない私である。何があったのだろう?コクトー・ツインズは、英国その他ではマーキュリー・レコードのフォンタナ・レーベルと契約を結び、アメリカではキャピトルとの関係を維持したとのことだが、5枚目のアルバム「Blue Bell Knoll」 や 「Heaven or Las Vegas」 での処理を重ねた複雑で重層的なサウンドから離れたのも、私が聴かなくなった原因でもある。どうもUKのアーティストがアメリカナイズされると良いことない。
Cocteau Twins - Wax And Wane
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Cocteau Twins - Pitch the Baby
~PEMAの本棚~
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