ゲームと仕事

あるすぱ短編集1
「ゲームと仕事」

さて、今日も仕事が始まる。
朝のコーヒーで目を覚ましてから、近くの公園へ走りに行く。帰ってきてからはバランスのいい食事を食べる。こういった体調管理も仕事の内だ。

始業時間の30分前にはデスクにつき、準備を整える。
さて、今日の仕事は何だろう。課長が現れ、社員にゲームが配布される。
「本日の担当分です。」
ああ、今日も多いなぁ。三本もゲームしなくちゃいけないのか。さてさて、泣き言ばかり言ってないでチェックするか。

お、これは当たりだな。ノベルゲームが多い。このゲームは適当にボタンを押して文章を読んでいれば終わるタイプだ。今日は楽だな。新作の格闘ゲームに当たったりすると、それぞれのキャラクターのコマンドを覚えたりと大変なのだ。

「どひゃ」
隣で悲鳴が上がる。どうやら制作に7年かけた超大作RPGに当たってしまったようだ。ご愁傷さま。少しは手を抜けばいいのに。彼ときたら隠し要素まで全てこなそうとする凝り性だから大変だろうな。仕事に真面目なのだ。

僕の会社の仕事はゲームをクリアする、それだけだ。AIが世の中をコントロールしている今、働く必要がどのぐらいあるのか知らないけどね。
それが何の役に立っているのかって、さあ、そんなこと知らないで仕事してる人がいつの時代も多いんじゃないのかな。

さてさて終業時間も来たし、セーブして今日はこのへんで終わりにしようかな。昔の人は時間を守らずゲームをしてたって言うけど信じられないね。これからが楽しい時間なんじゃないか。

仕事が終わると馴染みの場所へ行く。
「おい!遅いじゃないか!」「すみません!!」
「この資料明日までに作っておけって言ったよな!」「一週間後だって……」「早め早めが社会人の常識だろ!」
「あの部長ぶっ殺してやる!」「セクハラだよねぇ」

ここでは過去に行われていたという仕事の環境を再現している場所だ。
上司からの理不尽な叱責だったり、感情的な言葉が飛び交う。
ゲームだけしている無機質な現代とは違う。こんな人間的なやり取りが豊かだった時代。僕も戻ってみたいものだ。

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