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【村人編】第1話 村人、シャーマンと出会う

出会い

3年前の早春。
面白い子がいるから、と言って友人がある人を連れてきました。
友人の横にいるのは小さなふわふわ頭の女の子。

友人とその子は植物療法士の勉強で一緒のクラスだったらしく、
向かい側の席になった時に「あなたはいい子だね」ニコッ
っとされたのがきっかけで仲良くなったらしいです。
ちなみにここでいう「いい子だね」は、「いい子を演じているね」の意味。
結構パンチの効いたこと言うじゃん…と興味が湧きました。

あなたは鮪みたいな人ね

この森の2月はうっすら雪景色

その子と初めて会った時は、確か私の自宅の駐車場で立ち話をしました。
春の兆しをうっすらと感じるようになった2月の終わり頃だったでしょうか。

「今の時期、山からパキパキ音がするんだ。
 春が来たよって言ってる気がするんだけど 何か聞こえる?」

と質問すると

「うんそうだね。木々が一本ずつ春が来たよーって順番に教え合っているみたい。
 この季節にこういう環境に来たことがなかったら私も今まで知らなかったよ。ありがとう。」

そんな会話をしました。

そして例のパンチを私も食らったのです。

「あなたは自分が嫌いなんだね。それに気づかないようにいつも仕事で忙しくしてクルクル動いて、止まれない鮪みたいね」ニコッ

初対面だったし、私のことは何も知らないはずだけれど、そんなことを言われました。

その当時は自分に自信があるし自己肯定感が高いと思っていたから
「そうなのかな?忙しくしちゃう癖は確かにあるけど」くらいにしか思いませんでした。
まさかこの言葉がジャブのように、じわじわと後から効いてくることになるとは…

土地の声を聴く人

考えるシャーマン

その子はひとみちゃんと言います。
見た目が小さいから妖精みたいで、年齢があるのが不思議な感じもします。
私の感覚的には3000歳くらい。(え?)

後から聞いた話だけどこの子はシャーマンなんです。
聞いた時はシャーマンって現代にいるのかよ!っと心の中で突っ込みました。
しかも東京の普通のアパートの3階に住んでるらしい。
シャーマンキングとかアメリカの先住民とか遠い存在だと思っていたのでなんだかイメージが違います。

それからひとみちゃんは、時々遊びにきてくれるようになりました。

私の父と彼女と3人でうちの目の前の山を登ったとき、
彼女は目的地の少し奥の方をみて言いました。
「マコモって聞こえる。マコモっていう植物を植えてほしいみたいだよ。でもマコモってなんだろう?」

それを聞いた父は
「ここは昔田んぼだったんだ。マコモは田んぼに植えるものだから、復活させればマコモを植えられるかもしれない」と言いました。

そこは今は大きな杉の木が生えていてすっかり山の一部になっているけど、その昔は田んぼだったようです。私が知識で解釈すると、ここは水が沸くところだからちゃんと人の手を入れて沢を整え水を流した方が土地のためになるんだろうな。と理解しました。

ひとみちゃんは都会生まれ都会育ちで、山のことも畑のことも知識はないはず。だけれど、教えてくれることは、山や畑で得た私の経験知と一致するのです。
彼女は知識を超えた智慧を持っている人なんだな、とすんなり納得しました。

こちらがマコモです

内側と外側

彼女は土地や植物の声が聴こえます。
植物だけでなく人間も同じらしく、私がパンチを食らったあの時、おそらく私の“内側“とおしゃべりしていたのでしょう。

人は生きるために、いろんな鎧を身に着けます。そしてその鎧を着ている自分を自分だと思い込んでいるのです。
私は、彼女から聞く土地の声や植物の話、自分の“外側”の話であればすんなりと納得するけれど、自分の内側の話をされると「え?そうかなぁ?違うと思うケド」と言葉を受けとろうとしませんでした。

自分に都合のいいことしか受けとらず、外側のことだけしか話さない。
私は鎧を剥がされるのが怖くて、無意識に内側には触れられないようにと抵抗していたのでした。

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