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暮らしの勉強メモ④フィンランドのプロダクト

お久しぶりです!雑貨屋「あるくらし」店主の絢音です。
初のイベント開催と期間限定オンラインストアが無事に終了し、次の活動に向けての準備を進めております!そして本日は、そんな次の活動に関する勉強メモのコーナーです。

店主の暮らしの勉強メモって?
雑貨屋オープンに向けての歩みの記録や、店主のリアルな暮らし日記を続けていく中で、
「暮らしの中のモヤモヤや、興味を持った分野に対して、もっと調べたり、勉強する時間を確保したい…!」と感じる場面がでてきました。(暮らしの勉強メモ1に詳細を記載しています。)
そういった「学びたい!」と感じる瞬間をチャンスに、こちらのnoteを利用して、少し立ち止まる時間を確保し、学んだ内容を残していける「勉強メモ」コーナーを作成しました!
勉強!と気張らずに、ゆるりとお付き合いをいただければ嬉しいです。

今回は、フィンランドのプロダクトについて。

シンプルだけど、どことなく温かみのあるデザインが好きです。

実は雑貨屋あるくらし、4月の後半から5月上旬にかけて、念願のフィンランドに旅行兼買い付けに行きます!(初めてのヨーロッパ、そして初めての買い付けのため、どうなるのか全く予想ができていないのでドキドキワクワクハラハラであります!)
2年半ほど前に勤めていたインテリア雑貨のお店では、北欧の雑貨やビンテージ家具等の取り扱いがあり、その頃から北欧雑貨の魅力にはまり、関西の北欧雑貨やビンテージ家具等を扱うお店に通うようになり、小さな所から少しずつ雑貨や家具を集めていました。
そういった影響もあり「北欧に行って、雑貨の買い付けをする」事が私にとっての夢のひとつでした。
そこでフィンランドに行く前に、フィンランドのプロダクトに関する知識をもう少し蓄えておきたい!と思い、今回の勉強のテーマにしました。
(フィンランドに行く前に記事を書いていたのですがバタバタとしてしまい投稿はフィンランドから帰国後に行っております・・・)

フィンランドってどういう国?

旅行へ行ける日を夢見て集めていた本

フィンランドに対して、魅力的なプロダクトが多いという印象の他は、福祉国家、幸福度の高い国という漠然としたイメージを抱いていました。
調べていて驚いたのは、スウェーデンやロシアに支配されていた時代が長く、独立したのは1917年で、独立国家としての歴史は100年余りと比較的新しい国であるという事でした。
(12世紀~1809年:スウェーデンによる支配、1809年~独立まで:ロシアによる支配を受けていた。)
幾年もの間他国の支配を受け、独立後は内戦を経験し、第二次世界大戦では敗戦により一部領土を失う等(現在の国土面積は日本の9割ほどの大きさです。)の歴史を経て、中立国として東西貿易を支えたり、世界的なメーカーが誕生(ノキア等)する等、先進国として発展したフィンランド。
現在、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、北欧地域の安定性と安全保障を強化するためNATOに加盟しています。
またフィンランドは、国土に対する森林割合が約75%もあり、OECD加盟国の中では第1位(2020年度。日本は第3位)と自然に恵まれた環境です。
誰もが「自然享受権」を持ち、土地の所有に係わらず森に入ってきのこやベリー狩り等を楽しめます。(羨ましい…)
長期に渡り他国の影響を受けながらも、自然に恵まれた環境で独自の文化を築いてきたフィンランド、今では、日本人の私でもポン!とイメージできる「アラビア」や「マリメッコ」等の有名なブランドが生まれています。
では、そういった魅力的なプロダクトはどのように生まれてきたのでしょうか?次章より探っていきます!

フィンランドのデザインの歴史

渡部千春さんの「北欧デザイン」の考え方をメインに参考させていただき記載しております!

◆フィンランドの国家主義と手しごと(19世紀~1930年代)
1917年まで、他国の支配を受けていたフィンランドですが、19世紀半ば、フィンランド独自の神話を説いた叙情詩『カレワラ』をフィンランド語で刊行します。またこの時期、従来の公用語であったスウェーデン語に並びフィンランド語も公用語化する等、フィンランド独自の文化が急速に発達していきました。
その後は独立国家としての地位を確立すべく、産業を盛り上げるとともに、独自のフィンランドらしい文化(農家による手工芸など。※フィンランドの農家の人々は、農閑期には収入を安定させるため、副業として生活道具を作っていた。)の伝承を行うべく、アート、クラフト、産業が一体となったモノづくりが提唱されます。
芸術学校設立等、造形教育機関が整備され、自国のデザインの体系化や教育普及への意識が高まり、その後、1900年のパリ万博の参加を機に国際的に文化を認知されることになりました。

◆近代化の影響(1930年代~1950年代)
世界的に手仕事中心のモノづくりから機械による大量生産が行われるようになった近代化に伴い、世界各地では、それを受け入れる、または反発するような文化的な運動が起こりました。(イギリスでのアーツ・アンド・クラフツ運動等)
北欧ではデザイン史上、目立つ動きはなかったものの、労働者階級を含む国民の“平等性”を重視した暮らし(衣食住)、特に“食”関連の陶磁器ブランドが活躍します。
フィンランドでは、スウェーデンの陶磁器メーカー「ロールストランド」のロシア市場向け工場として設立した「アラビア」が、近代化の流れの中で1932年に「クルト・エクホルム」をアートディレクターとして迎え入れ、美術部門を開設する事で、簡素で合理的な量産品の生産と、自由な作品制作のバランスが取れた商品を生み出していきました。
「クルト・エクホルム」は、日本でも有名なパラティッシを生み出した「ビルゲル・カイピアイネン」や蝶をモチーフにした陶板が代表的な「ルート・ブリュック」、今もなおロングセラーアイテムとなっているティーマを生み出した「カイ・フランク」をアラビアに呼びこみ、博覧会等で評価を受け、アラビアの名が世界で有名となります。

◆世界的ブームになる北欧デザイン(1950年代~)
戦後、西側諸国の主役アメリカは、諸外国の規範となり、あらゆる国がアメリカのライフスタイルを目指すようになります。
そんなアメリカでは、1950年代以降、北欧のデザイナーを対象とした賞を設けたり(氷が溶ける様子をガラスで表現したウルテイマツーレを生み出したタピオ・ヴィルカラやカイフランクが受賞。)、北欧四か国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)から集められたプロダクト(フィンランドは、曲木加工を施したスツール等で有名なアルヴァアアルト等の作品。)を集めた展覧会を開催、北欧とアメリカでのデザイナーの交流等も行われており、アメリカで次第に「北欧デザイン」の認知や評価がされるようになりました。
人々が戦後の粗悪な環境から、新しい「良い」生活様式を求める中、「良い」という曖昧な概念を「グッドデザイン」という言葉で定義づけ、アメリカでは、戦勝国としてのアメリカの文化的に洗練されたモノを展示した、「グッドデザイン展」が開催されます。
その展示に、「北欧デザイン」のプロダクトもセレクトされており、アメリカを起点に各国に北欧のプロダクトが広まります。
また、有名なテキスタイルブランド「マリメッコ」は、1960年、アメリカ大統領選の際、候補者ジョン・エフ・ケネディの妻がドレスを着用しメディアに登場したことをきっかけに世界的に広まる事になりました。

北欧の代表的なブランド/作家/作品

◆陶磁器/ガラス 
ブランド:アラビア、イッタラ

【カイ・フランク】
イラストレーター、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナーを経て、アラビアに就職。
代表作は「カルティオ」、ロングセラーの「ティーマ」、ティーマの原型となった「キルタ」など。

【ビルゲル・カイピアイネン】

食器棚に飾っているときも目をひく美しさがあります!

アラビアに入社後、姉妹企業のスウェーデンのロールストランドで働き、その後はアラビアで勤める。代表作は花とフルーツの柄が描かれた「パラティッシ」など。

【オイバ・トイッカ】

カステヘルミは、光が当たった時の影も素敵です。

大学で陶芸を学びアラビアの美術部門に所属。その後ガラス部門に移行し、イッタラなどで作品を発表。代表作は、朝露にインスピレーションを受けた「カステヘルミ」や「バードシリーズ」がある。

【タピオ・ヴィルカラ】
イッタラの専属デザイナー。1951年のミラノトリエンナーレでは3部門でグランプリに輝く。代表作は「ウルティマツーレ」など。

【ルート・ブリュック】

数年前に偶然ルート・ブリュックさんの美術展が開催されていた際訪れ、美しさに感動しました。

陶板を媒体にイラストレーションのような具体的な表現から徐々に抽象的な表現へと変化しつつ、独自の表現方法を行う。代表作は蝶の陶板など。

◆家具  
ブランド:アルテック

【アルヴァ・アアルト】

妻のアイノ・アアルト、資産家でアートコレクターのマイレ・グリクセン、美術評論家ニルス=グスタフ・ハールとともにartek(アルテック)を設立し、製品の販売と併せて展覧会など文化啓蒙を目指した。代表作は積層合板の曲木加工を活用して制作されたスツール60など。

【アイノ・アアルト】

アルヴァ・アアルトの事務所に入所し結婚。多くの建築プロジェクトを共同で手掛ける。
代表作は、ガラスウェアのボルゲブリックなど。

【イルマリ・タピオヴァ―ラ】

アルテックのコレクションでアアルトに次ぎ有名なイルマリ・タピオヴィーラ。戦後、民衆のための量産家具の開発に注力。代表作は学生寮の内装を請け負った際にデザインしたドムスチェアなど。

◆テキスタイル
ブランド:マリメッコ、フィンレイソン

【マイヤ・イソラ】
マリメッコの前身であるプリンテックス社時代から在籍。中心デザイナーとして活躍。マリメッコのために作った図案は500種類ほど。代表作はケシの花を大胆にあしらったウニッコなど。

【石本藤雄】
日本で広告デザインの仕事をした後、1970年にフィンランドへ。マリメッコにてテキスタイルデザイナーになった後、アラビアで陶芸制作も行う。
現在は日本ムスタキビから作品を発表。

【アイニ・ヴァーリ】
フィンランド最古のテキスタイルブランド、フィンレイソンより作品を発表。代表作は幾何学模様のコロナ花柄のタイミなど。

フィンランドに行く前にnoteを書きあげるぞー!と意気込んでいた今回の記事ですが、出国する前に投稿できず、実は、フィンランドから帰国し時差ぼけが治った現在日本で投稿しております。。
今回取り上げた北欧プロダクトは、自然モチーフのモノや収納・使い勝手の良さを追求しているモノが多く、心身の心地良さを大切にしている印象を受けました。
隣接する2つの国に支配されていた時期が長く、独立後、政治的に中立的な立場をとる時期が長かった事等も影響してか、人が平等に安定・安心して暮らせる事を切に願った人が多いのかもしれないですね。日本人の私も思わず心惹かれるのは、そういった人を想うデザインが多いからかもしれないです。
記事作成にあたり調べて初めて知る情報にも触れ、これまでよりフィンランドの事を知れたぞ!と、渡フィン(こんな言い方するのだろうか)を楽しみにしておりました。行ってみて何を見て何を感じたのかという事は、追って別の記事で記載したいと思いますのでそちらもお楽しみにお待ちください!

はじめましての方も引き続き読んでくださっている方も、お付き合いいただきありがとうございます。今後も焦らずゆっくり続けていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

店主 絢音

【参考文献】
渡部千春(2022)「北欧デザイン」の考え方 
発行人:サーフェン智、編集人:林紗代香(2022)TRANSIT58号 春夏秋冬フィンランドに恋して 

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