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2022年上半期ボカロ5選

まえがき

2022年上半期のボカロ5選を紹介していきます。
え、2021年の10選? 知らない子ですね……(紹介してないことすら忘れてた)。

先に選出曲リストを見たいというせっかちな方は、以下のリンクをどうぞ。

なお、選考対象、選考基準はいつものように、今年公開されたソフトウェアシンガー(VOCALOID、UTAU、CeVIO (AI)、Synthesizer V (AI)、Neutrino等)歌唱楽曲のうち「印象に残った曲、私自身が好きな曲」です。
それでは、いざ。

1. 三角コナ / “可呼吸”(1/28投稿)

壮大なオケが印象的な可不のポエトリーリーディング。

私のDJ動画(【ボカロDJ】あたしのことが好きなら呼吸の仕方から……MIX【ボカコレ2022春】)でも使わせていただいているので今更何をや言わんという感じでもあるのですが……。
感動的な上に爽快感もある楽曲で、聴いてすぐに「これで終わるDJをやりたい」と思わせられたくらい圧巻の壮大さです。
可不の調教も良いですよね。歌唱は言うまでもなく、喋り部分もまるでトーク機能がデフォルトで付いているんじゃないかと思うくらい没入させられます。

「呼吸の仕方から始めよう」という決めフレーズもとても感動的なのですが……どうしても何かを思い出してしまうような……w

2. なおりん / “翡翠色のマジックワルツ”(1/30投稿)

バンドサウンドにストリングスをたっぷりと乗っけた、ヒロイックなアイドルソング。

本作を聴き始めてまず違和感を抱いたのは、何と言ってもそのリズムの異常さに対してです。
本来であればビシっとビートを定めるべきベースとドラムの動きが明らかに複雑過ぎます。しかもボーカルのCeVIO AI 東北ずん子もすっぴん感のある声質で、まるで幼稚園児の合奏のように今にも全体が瓦解しそうな印象に襲われました。
そしてこの猛烈な不安定感はBメロに入っても止むどころかなお加速していき、「こ、このままサビに入って大丈夫なのか!?」と心配になるくらいギリギリのラインまで崩れていきました……。

が! その先にやってきたサビの輝かしさと言ったら!
文句なしの優勝進行、力強く駆け上がってゆくメロディ。非の打ち所がありません。

このサビのおかげで不安定さに対するネガティブな印象が全てひっくり返りました。今にも転んでしまいそうなビートも、飾り気のない歌声も、その全部が泥まみれで駆け抜けるような生き生きとした人間的美しさの象徴に変わったのです。まるで魔法にかけられたようなカタルシスでした。

数多なる福音を導け
生命らの産声を いざ包め 至福の交響曲

という壮大な歌詞すら揺るぎない説得力を持って伝わってくる、気力も実力も十分に注ぎ込まれた傑作だと思います。拍手!

3. アオワイファイ  / “知らん。”(2/28投稿)

ハイテンション四つ打ちロック。こちらも“可呼吸"と同じDJ動画で使わせていただきました。

もっとコチラ側に 歩み寄ってくれたまえ

みたいな態度がとても優しいんですよね。今年上半期の歌詞で最も歌詞に共感した曲かもしれません。
自分に歩み寄ってこない人に歩み寄ろうとして疲弊するのはばからしいですよねえ……。「他人の言うことの本質を汲み取れ」とか言う人ほど、こちらが言うことの本質は汲み取ろうともしてくれないですし……。

さて愚痴はこの辺にしてw もちろん歌詞だけでなく曲もお気に入りです。
ハイテンポでダンサブルなビート、砕けた口調と流れるようなメロディ、華やかさと見通しの良さを両立させたサウンド。
どこを取ってもキャッチーで、歌詞のひねくれ具合とは裏腹にこの曲を苦手だという人は少ないのではないでしょうか。

アオワイファイさんと言えば“明晰夢”の人というイメージが強いのですが、実はもうニコニコでもYouTubeでも本作の方が伸びているのですね。
良さを損なわないまま順当にパワーアップされている印象があるので、今後のご活躍にも大いに期待しています。

4. ネギシャワーP / “フルール”(4/23投稿)

ジャンル的にはR&Bっぽいでしょうか? Pご自身の言によれば「お洒落ピアノポップ」とのことです。

一聴してえげつないくらいの透明感に惹き込まれます。ネギシャワーPは毎作パンチのあるサウンドが印象的ですが中でも本作は特に素晴らしいです。
ピアノのリバーブ感やカスタネットのキラキラ感、バスドラムの沈み込みあたりはさすがの完成度だと思います。

ただこの感動はどうやらオーディオ環境によって感じやすさが変わるようで、自宅のヘッドホン環境(DT1990PRO&Brooklyn DAC+)だとこの透明感だけでうっとりしてしまうほどなのですが、外出時のイヤホン環境(Falcon 2)ではその感動を感じにくかったです。
せっかくですから、用意できる方はぜひ良いオーディオ環境で一度聴いてみることをおすすめします。

ちなみにネギシャワーPってずっといわゆる「難しいポップ」の人だと思っていたのですが、流行の主流とは異なる遅めのテンポの曲が多かったり、個性的なイラストが印象的だったりするのが原因でそう思っていただけで、実は気軽にキャッチーなポップとして聴いていいんだなあとこの数か月でようやく気づきました。これからはもっと肩の力を抜いて聴きます……!

5. 柊マグネタイト / “傀儡阿修羅”(5/11投稿)

この重厚感を待っていた!

読経のような4つ打ちのベースと漢語だらけの歌詞はベースミュージックと宗教の融合を感じさせ、思わず低く身構えて祈りを捧げたくなるようなシリアスさを醸し出しています。
そして「拝!!」のインパクトとともにぶっ飛ばされる感覚の痛快さときたら、これこそ音楽を聴くことの醍醐味とすら言えましょう。
1:38からのドロップも良いですよね。クラブミュージックの面白さを非常にうまく歌物に落とし込まれたなと思います。
これで3分半にまとまっているというのは驚異的です。5分台後半くらいの曲を聴いたときの満腹感ですよこれは……。

そもそも柊マグネタイトさんといえば昨年中盤からはしばらくポップな構成の曲が続いていましたけど、そもそもは“旧約汎化街”のような曲も書かれる方なんですよね。
それを考えると本作は久しぶりにあの頃の柊マグネタイトさんが帰って来たぞという気もします。それもただ帰ってきただけでなく名実ともにパワーアップして。

それから星界の話もちょっとだけ。
KAMITSUBAKI STUDIOの音楽的同位体第2弾としてリリースされた星界、まだ可不ほどの話題には達していないようにも思いますが、個人的にはかなり好きな歌声です。
というか、“グレートフィルター”、“遠心力”、“セレネ”あたりを聴いているうちにどんどん好きになってきたんですよね。
幼い雰囲気からすると意外なほどに力強く、かわいくもカッコよくも聴かせられる歌声は魅力的だなと思います。今後ももっと良い曲をたくさん歌ってくれたら嬉しいですねー。

あとがき

以下、あとがき……と言いたいところですが、今回はあまりコメントしたいことがなかったり。
強いて言えば、昨年の10選では1曲しか選ばなかったAI合成音声から今回3曲も選んでいて、いよいよあの歌声も定着してきたなという印象はいたしますね。
ちなみに私的最高金賞は傀儡阿修羅です、初聴時のインパクトが一番凄かったので。

それでは下半期もしっかりボーカロイドしていきましょう。またいずれ!


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