甘い汗、夏の憧れ⑭ 試合後の懇談

「『草木の会』の未来長さんが、孝と懇談してくださることになったわよ」
母が言った。
私は面倒だと思った。
私の地元のいくつかの組織の中学生の中で、私と金田清の2名が選ばれたらしい。
私は「勉強を頑張っている」、金田清は「信心を頑張っている」とのことだった。
また勉強を頑張っていることになってしまったのか。頑張っていないのに。普通にやっているだけだ。そう思った。

問題は懇談の日程だった。
バレー部の公式試合の日と重なった。
私は最初、それを理由に断った。だが、金田は参加すると言う。
指定の日に公式試合があるのは木霊中も日蔭中も変わらない。だがあいつは二軍じゃないか。私は弱小とはいえレギュラーなのだ。
正直、ものすごく不満で不快だった。

この日の試合は、私にしては調子が良かった。
猛烈なスパイクも果敢に拾いに行き、相手チームのアタッカーやチームメイトの三ツ木にもガッツを褒められた。
それだけに、その余韻のまま、私は帰りたかったのだ。
「草木の会」の幹部が運転する車に乗せられ私は本部に向かった。正確には、恐らく本部と思われる場所に向かった。腹が立ちすぎていて場所も覚えていないのだ。

「勉強、頑張っているんですね?」知らない兄ちゃんが言った。
「まぁ」
「山田先生は勉強に対して、こう指導されています」
「はぁ」

「孝は反抗期で…すいません」
母は幹部の人に恐縮していた。
勉強なんてできなければ、こんな思いもしなかったのに。
私は少し、うんざりしていた。

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