塞いだ耳に嗤う楽園⑩ 大宰府

修学旅行の最終日には太宰府天満宮に寄った。

参拝の時間には、私たち「草木の会」の会員は列からひっそり抜け拝むことを回避した。
最近は総本部との訣別を経て宗教的要素のあるお祭りなどへの参加は緩和されつつあったが、それでも他宗教の信仰の対象に対して拝むことは禁忌とされていた。

「えーと、小銭はどこにぶち当たればいいんだ?」瀧澤はそんなことを言ってはいたが、普通に列に並んで参拝していた。

この日、小曾根は妙に機嫌が悪かった。
堤芽依に某アイドルに似てると言われたことに対して、さっきから愚痴を溢している。

罰ゲームの電話の時に沢口風花から一瞬電話を変わったのは堤芽依だったな。

私は彼の気持ちは理解できなかったが、彼は彼なりに美意識があり、某アイドルに似ていると言われることがその美意識から逸脱することだったのだろうか。

小曾根は太宰府天満宮の駐車場に向かい、ずんずん歩いていく。
途中、信号が赤にも関わらず無視して歩いていた。
「誰にも俺を止めることはできない」と、意味不明なことを言っていた。


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