祝福のルーレットが廻る⑩ 屋敷優佳

私は、桜庭の家で高井戸を含めた3人でテレビゲームをして遊んでいた。
桜庭が少しそわそわしているように見えた。
桜庭の両親は不在だった。

ドアホンが鳴った。
「来た」高井戸が言った。
テレビゲームをそのままに、ふたりは玄関に向かった。私もふたりの後を追って玄関に出た。

屋敷優佳がいた。
驚いた。
この頃、屋敷優佳は既に大手の芸能事務所に所属し、とある映画に出演したことで元日蔭小の同級生たちの間でも話題になっていた。

高井戸が呼んだらしい。彼はコミュ力お化けだ。
桜庭は、屋敷とは初対面だった。

なんとなく、気まずかった。
ちょうど日が暮れかかっている時間帯だった。
私は、ひとりで家に帰った。

小学校の卒業式の日…式が終わった後。
クラスの大人びた男子が屋敷優佳に頼み込み、何人かが屋敷の体を触らせて貰った…という話を同級生たちがしている声が、その頃には既に私の耳にまで届いていた。
私はそういう話をしてはいけない。そういう感情を持ってはいけない。そういうキャラクターなのだ。私は自分のことをそう思い込んでいた。

帰ってからも、妙なもやもやを、私は脳とへその下のあたりに感じていた。


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