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農産物は機械からポンっと出てくるんじゃない

今まで妻が投稿してきましたので、今回初投稿のてつろうです。

もともとぼくは非農家の出身だったこともあり、農産物の生産プロセスを何も気にとめていませんでした。そんな自分が農業に携わることになり、考え方がガラっと180度変わりましたのでお話しさせていただきます。

その前に簡単な自己紹介ですが、農業に関わることになったのは妻の実家がぶどう農家だったことが始まり。細かい話は省きますが、もともと銀行員として働いていた中でいろいろと話を聞くうちに面白そうと考え、2015年に就農します。そして今年から自分名義でりんご畑を約5000㎡借り、新しくりんごを植えることになりました(当初植えてあったりんごの木は耕作放棄されていたため病気になっており、すべて伐採しました)。

太陽と水と大地に気づかされたこと

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農業を始めて思ったことは、当たり前ですがほんとに天気の影響を受けるんだということ。雨の日ばかりが続くと病気が拡がるし、糖度が上がりにくく甘くならない。そうかといって晴れの日ばかりが続くと土壌が乾燥し、木や果実の成長を阻害してしまう。人間の手を及ぼせないことがこれだけあるんだと気づかされました。

でもこの人間の努力だけでは及ばないところに、農業の魅力があると感じています。

これまでに多くの生産者と話をする機会がありました。多くの人が自然に翻弄されながらも最大限の努力や新しい栽培方法を試行錯誤をしている。ぼくが話した最高齢のぶどう農家は90歳を超えても未だに新しい栽培方法に取り組んでいました。「自然を前にして完璧なぶどうをまだ作れていない」と話されていたのです。人間の力だけでは足りないからこそ、何歳になっても情熱を持ち続けることができるのだと思いました。

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よく天・地・人と言われますが、太陽と水と大地がぶどうやりんごの木を育み、人はその成長をサポートする。これらの要素がすべて揃ったところで、ようやく美味しい果実が収穫できるのです。このように、一つひとつの農産物が食卓に届くまでに長い道のりがあり、いろんな物語があるんだと自分が生産者になったからこそ強く感じるようになりました。

そしてこの栽培の過程や他の作り手の考え方を含めた物語を知ることは、自分にとってとても大切なことでした。自分が栽培しているもの以外の農産物でもよりおいしくなり、もっと農業を面白く感じる体験となったのです。タイトルの通り、農産物は機械からポンっと出てくるんじゃないと気づいたのです。

(現在、植物工場やハウスの活用により環境からの影響を軽減できる技術はありますが、当農園が露地の果樹中心ということもありここでは詳細について触れません。)

りんごのオーナー制度開始

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そんなこともあり、農産物が食卓に届くまでの物語を知ってもらいたい。そして「食べる人」が農業についての理解を深めることにつながってほしいという思いで、りんごのオーナー制度を始めることにしました。他の農園でもオーナー制度はありますが、苗木の植え付けからできるところはありません(調べた限り)。なぜなら植え付けから初収穫までに4〜5年と長期間かかるためです。

それでもこの時間をいっしょに味わってもらいたい。途中でうまくいかないことやちゃんと育つのかといった思いまで丸ごと共有したいと考え、このオーナー制度を始めることにしました。

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そして今年の3月にクラウドファンディングでご支援いただいた方やぶどうのお客様、知人らといっしょに無事植え付けを完了することができました。写真はオーナー様ご自身で描いていただいたプレートです。

農産物は工業製品じゃない

苗木の植え付けも終わり、ようやくスタートしたと思ったのも束の間。

木の様子がおかしいと思いよく見ると、腐らん病が発生。調べると昔からりんご農家が苦しんできたというとんでもない病気。下はその時のツイートです。

そして今度は病気が治まったと思ったら、苗木の芽がもげている。隣の畑のおじさんによると、鹿に食べられた可能性が高いとの話。

想像以上に次から次へと恐ろしいことが起こります。でもこれが自然なんです(と自らに言い聞かせています)。もちろん自分の腕が未熟な部分も多々ありますが、自然は人間の力で完全にコントロールすることはできないのです。

でもこんな出来事を共有しながら、「食べ物」の裏側にある自然の移ろいを感じ、農産物は工業製品ではないと思う人が増えてほしい。それにより、「作る人」にとっても「食べる人」にとっても農業はもっと面白くなるし、もっとおいしくなると信じています。

ぜひ食卓の上にあるお米や野菜、果物など農産物の裏側に思いをはせてください。そこには豊かな世界が広がっています。

最後までお読みいただきありがとうございました。また来年も若干りんごの植え付けを行う予定です。数に限りはございますが、ご興味のある方はTwitterのDMやメール等でお声かけいただければ幸いです。

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