ゲシュタルト
鏡を覗き込んだことはありますか?
ええ、ええ。
そうでしょう。
そう仰ると思っていましたよ。
そんなのあるよ。ってね。
では、こう聞いたらどうでしょう?
アナタは鏡の中を覗き込んだことがありますか?
今、こう思いませんでした?
”鏡を覗く”ことと、”鏡の中を覗く”ことの何が違うんだって。
もし、そう思われたのなら、まだ引き返せるでしょう。
ええ。
深入りはオススメしませんよ。
ここから先に進むのは危険なことかもしれないですから。
これでも、良心的なんですよ。
ワタシはね。
それでも、”鏡の中”を覗いてみたいのでしたら、
今からワタシがお伝えすることを試されるのもいいでしょう。くどいようですが、必ずしも安全とは限りませんので悪しからず。
鏡を覗き込んでください。
そうです。そうそう。
そうやって、しばらく覗いていてください。
おや、アナタ、今何か考えてますね?
それじゃダメですよ。
リラックスして何も考えず、ただボーッと覗くんですよ。
そうそう。その調子。
おっといけない。
今、鏡に映っているのはアナタだけですよね?
いや、なに、ただの確認です。
お気になさらず。
それでは次に、鏡に映ったアナタから少しだけ視線を外してください。
そうですね、肩の上辺りを、焦点を合わせず見るのがいいかもしれないです。
ああ、アナタはとても筋がいいですね。
そうそう。
そうやって、しばらく覗くんです。
決して急いではいけないですよ。
そうそう、そうやって...........
どうでした?
え?
何もなかった?
そうですか。それは良かった。
え?
良くない?
いえいえ、それで良かったんですよ。
いや、それはもう、本当に良かった。
ん?
小さな違和感?
それはまずいですね。
そうでしたか。
小さな違和感に気づいてしまいましたか。
ああ、これはワタシからのささやかなアドバイスですが、
そこでやめておいた方がいいかもしれません。
何度も繰り返すのはやめた方がいいですよ。
やめろだなんて
ちっとも良心的じゃない?
いえいえ、良心的ですよ。ワタシは。
だって、もし、鏡の中から覗き返すのがアナタでなかったら、アナタはどうします?
微笑みかけられたらどうします?
ほらね。
良心的でしょう。
それでも衝動が抑えられないアナタへ良心的なワタシから一言だけ
どうかアナタの常識の土台が崩れませんよう、コチラから祈っていますね.......
キヒヒ.....