1.とりとめなく、序文
頑張って働いたり、
相手にわかるように話したりして、
五感をにぶくさせていれば、
今日も食べていけるけど、
どんどん離れてゆくよ。
私のなかの、
みずみずしい命。
だからクレヨンで遊べよ、
画用紙の上。
私の手で、私の色で。
無限の色を見るだけで、
気持ちいいとこに戻れる、うれしさ。
はばからない弱さで、描くんだ。
画用紙の上に、私。
ようちで、臆病で不恰好。
でもほんとに好きなこと、知ってるかわいいやつ。
震える、
たくましい命。
…………………………………………
今日のアートワークは「はじめてさん」が来るぞ。
なら、紙のサイズは、うんと小さめに。
その紙も、ハサミで切ったやつじゃ、よそよそしい。
はしっこは手でちぎり、さりげない感触に。
画用紙の上に、心を遊ばせてもらうために、
私は、あーだこーだ、アートワークの準備をします。
仲間とつくるときは、
ミーティングも、たっぷりします。
時には「ああ、ごめん。私があの時、ああしていれば~」と、
もんもん、翌日もメッセしあったり、
「らしくない」と、ぴしり、導いてもらったり。
ーーでも、その手間ひまが楽しいのです。
だってそのテマヒマこそが、
私を大切にすることだから。
そんな私は、
びびりで、ずいぶんめんどくさい奴です。
でもアート表現は、だれかの繊細な唯一無二だから、
そのくらいこっちも、ナイーブでいい、とあきらめています。
だってびびりじゃなきゃ、見落としてしまう。
たとえば、
どばっと、黒を落とした右手の、心細さ。
かすれた、線のきわより、余白。
でこぼこ、ひんまがる形の揺らぎ。
その人が画用紙に表した、「それ」。
私はアートワークで、
人を癒したり、よくする、なんてできません。
いつも「それ」に、感動するばかりで、
しかも相手もうれしそうなので、
きっとこれは、私に合っているんだと思うくらいです。
でも時々「私はもっとすごいことができるんだぞ」みたいな顔をして、ばかを見ます(笑)
それでも、生きててよかった級の、
感動を何度もいただくから、
きっとずっと続けます。
とりとめなく、序文 高橋恵子
参考リンク : 高橋恵子のアートワークの現場いろいろ🔽
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