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筑豊の画家と筑豊の仕出しや

こんにちは、アーツトンネルのタカキです。

アーティストはどのように社会と関わるべきなのか?
アーティストは地域と関わることができるのか?

筑豊地域にartの拠点を作ろうとしているアーツトンネルにとって、これらの「問い」はとても大きな「問い」です。

大分県別府市の「BEPPU PROJECT」や神奈川県横浜市の「横浜トリエンナーレ」など、その「問い」に対する様々な試行錯誤が全国で行われています。

今回は、そんなアートプロジェクトのような大きな動きではなく、筑豊地域の一人の画家と筑豊地域の一つの企業さんのartを通じた関わりについての話です。

5月のゴールデンウィークに開催したトンネル市の出展作家である河村陽介さんと、直方市にある仕出しのしまやさん、この一人の画家と一つの企業さんそれぞれの想いが重なった物語は、現在もなお進行中です。

地方でartに関わる人達にとって、とても大事なことだと思うので、ぜひ、最後まで読んでみてください。

河村陽介さんと筑前しまや

筑豊の画家 河村陽介さん

宮若市に生まれた河村さんは、幼い頃から美術が大好きで、美術館に行って、収蔵作品や郷土作家の作品を鑑賞していたそうです。

大学で美術を学ぶため、赤星月人先生の画塾にて絵を学び、大学入学後は、現代美術に興味を持ち、美術の世界にのめり込んでいきました。

大学卒業後、一旦就職するも、画家への道を諦めることができず退職。画家としての活動を続けることを決断し、今も絵を描き続けています。

写真中央が河村さん、その右が島添さん
そして河村さんの左は
「きみちゃんからあげ」のきみちゃん

おとどけ料理 筑前しまや 代表 島添耕治さん

昭和42年にからあげ屋として創業した筑前しまやは、昭和58年に仕出し屋に転換し、「仕出ししまや」として、宴会やイベントで出される仕出し料理やお弁当の製造販売事業を開始。

筑豊の道路を走っているとたまに見かけるこの看板は「仕出ししまや」さんの看板です。注意して走っていると「あっ、ここにもある!」と言う感じで、よく見かけます。

そんな仕出しやしまやがからあげ事業を再開するにあたり、効果的なPR方法を考える中、しまや代表の島添耕治さんが河村さんに「きみちゃんのからあげ」の作画をお願いしたのだそうです。

さらなる事業拡大に対する投資!しかし・・・

筑前しまやさんが発行した絵本

以後、河村さんと島添さんは、パートナーとして事業を開始します。それは「きみちゃんのからあげ」のプロモーションだけではありませんでした。

『しまやの筑豊物語』

これは筑豊に伝わる伝承や物語を河村さんの絵とともに紹介する事業。

一見、飲食事業と関連がないように思える事業ですが、島添さんにそのことを尋ねたところ、このような答えが返ってきました。

「河村さんの絵が人気になれば、しまやもその人気に引っ張ってもらえると思いました。それに筑豊物語は、私自身『後世に残していきたい』という想いもあります。

河村くんの絵は、かわいいし、子どもたちにも人気です。子どもたちは数年後、大人になっていきます。

子どもたちが河村くんの絵と一緒にしまやを覚えてくれていれば、大人になった時に、しまやにやって来てくれると思うんです」

しかし、コロナ禍により、宴会やイベントが出来なくなってしまったことで、しまやの仕出し事業は大打撃を受けてしまいます。

しまやさんの想いに応えたい

しまやさんにとって『しまやの筑豊物語』で河村さんに絵を描いてもらうことは、認知拡大や事業継続のための投資でした。

河村さんが人気になれば、しまやもその人気に引っ張ってもらえる。それは、ある意味で『賭け』のようなものかもしれません。

代表の島添さんは、河村さんの絵の力に賭けたのです。

しかし、大打撃を受けてしまったしまやさんに、投資や賭けを続ける力は残っていませんでした。

しまやとしては、今、河村さんの絵に投資できない。

そこで河村さんは『しまや筑豊物語』を続けるため、絵を書き続けることを決断します。

河村さんの想いと島添さんの想い

トンネル市にて

「しまやのプロモーションに関わってもらうなら、絶対に地元の作家の方が良いと思っていました」

しまや代表の島添さんは、このように話します。一方で河村さんは、このように話してくれました。

「絵を教えてくれた恩師、赤星月人先生も、『直方碑物語/続・直方むかしばなし』という筑豊の話を伝える物語の挿絵を描いていました。

僕が『しまや筑豊物語』を続けているのは、島添さんの想いに応えたいという理由もありますが、亡くなってしまった赤星先生への恩返しにもなるかなという理由もあります」

河村さん、島添さんの想いが重なる『しまやの筑豊物語』ぜひ、YouTubeのチャンネル登録をしてみてください。


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