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YOKOHAMA AIR ACT(YOKOHAMA AIR ACT実行委員会)

横浜は、異国情緒あふれる港町、みなとみらいのビル群の風景としてよく知られていますが、郊外にいくと古墳や宿場町といった旧跡があり、鉄道沿線に住宅が立ち並び、森や川、広々とした公園など自然が豊かで四季折々の風景があります。

YokohamArtLifeは、こうした横浜ならではの環境を生かして、アートプロジェクトを実施し、地域と共に芸術体験を深めていくことを試みました。その結果、予期せぬコロナウイルス禍のなかでも、各地で芸術と住民の出会いを生みだし、寄り合える居場所やそこで行われる芸術活動の大切さを地域と共有することができました。

このマガジンでは、すでに発行したYokohamArtLifeの「2019年度-2020年度 横浜市芸術創造特別支援事業リーディング・プログラム YokohamArtLife ヨコハマートライフ報告書」(PDF:28MB)から、実際の活動や仕組みづくりに協力してくださった学識者の言葉を抜粋して、ご紹介します。
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猫の小林さんとあそぼう!プロジェクト 飯川雄大《デコレータークラブ−ピンクの猫の小林さん−》を写真に収めようとする人 撮影:飯川雄大(2019年度)


2019-2020年度YAL(ヨコハマートライフ)採択プロジェクト「YOKOHAMA AIR ACT」(YOKOHAMA AIR ACT実行委員会)の取り組みをご紹介します。


日常生活の延長線上で、アートに出会うまちに


YOKOHAMA AIR ACTは、アーティストやアートが媒介となり、横浜市民誰もが日常の中で文化芸術や創造性を体感できる機会を作ることを目指したプロジェクトです。

19年度は金沢区とみなとみらいの都市開発の歴史をテーマにした連続講座「BankART School 出張編」と、金沢シーサイドタウンを舞台にしたアートプロジェクト「猫の小林さんとあそぼう!プロジェクト」を企画しました。「猫の小林さんとあそぼう!プロジェクト」では、アーティスト・飯川雄大の作品「ピンクの猫の小林さん」の盆栽ワークショップと、屋外作品の展示を行いました。


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猫の小林さんとあそぼう!プロジェクト 飯川雄大《デコレータークラブーピンクの猫の小林さんー》 撮影:阪中隆文(2019年度)


▼2019年度のプロジェクトのインタビュー


20年度はアートを通して金沢シーサイドタウンのまちの魅力を再発見し、地域内外へ発信していくことを目的としたプロジェクト「ナミキアートプラス」を展開。パブリックアートとまちあるきのプログラムを実施し、3組のアーティストが参加しました。

パプリックアートのプログラムでは、団地に滞在して地域住民と交流しながら街の歴史や風景を取り込んだ キム・ガウンの作品と、地域の人たちが自宅や店内で飾っているコレクションをまるで展覧会予告のようなバナー(旗)にして見せる池田光宏の作品を街中に点在させました。


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キム・ガウン《海を想う》撮影:笠木靖之(2020年度)


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池田光宏《BGAプロジェクト:横浜・並木のアートシーン》撮影:川瀬一絵(2020年度)


まちあるきのプログラムでは、いつもと違った視点でまちを歩くorangcosongの作品「冒険の書」を配布しました。

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orangcosong『演劇クエストー白昼のバスケット冒険団とふしぎな依頼人たちー』撮影:笠木靖之(2020年度)


アーティストがいることで、まちは変わるのか? 

ナミキアートプラスは、日常の中で人々がアート作品と出会うことで街にどのような変化がもたらされるのかを考えるプロジェクトです。

1970年代に始まった「横浜市六大事業」によって開発されたみなとみらい地区(都心部)と金沢区(郊外部)のつながりを学び直し、アーティストの活動やアートによるまちづくりを横浜市内に広げていくことを目指して活動しています。

19年度の私有地への巨大なピンク色の猫のオブジェ設置は、目にする人にとっては突然のことだったので「何の目的でやっているの?」と聞かれることもありましたし、多くの住民にはわけがわからなかったと思います。

街を歩く中で偶然このようなアート作品に出会う人は、作品を鑑賞することが目的ではありません。でも、立ち止まった人々が作品を前に言葉を交わす様子を見て、アート作品が異なる背景を持つ人々の出会いの場になっていると感じています。


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猫の小林さんとあそぼう!プロジェクト 飯川雄大《デコレータークラブーピンクの猫の小林さんー》製作中の様子:2019年度撮影


20年度は、アーティストが並木に滞在し、制作風景を公開する期間を設けたり、商店街の中にインフォメーションブースをつくり、スタッフやアーティストが通りがかった人に活動を説明したことで、さらに多くの出会いや対話が生まれました。

地域の神事を題材にした作品や、地域の方と一緒につくる作品もあり、アートをより身近に感じることができる機会になったのではないでしょうか。

近所の小学校の児童たちが校内でこのプロジェクトを積極的に宣伝してくれたり、地域の方々から「作品を残したい」との声が生まれたりと、街が変化していく様子を実感することができました。また、アーティストにとっても新しい表現や挑戦が生まれたように感じています。

YOKOHAMA AIR ACT実行委員会の 立石沙織さん、北野翔平さんへのインタビューを元に、事務局で執筆しました。


アーティストからの声

ここでは、2020年度に実施された、団地に滞在して地域住民と交流しながら街の歴史や風景を取り込んだ作品を制作したアーティスト キム・ガウンのメールインタビューを掲載します。


ーまちでアート活動を行うことの効果はどのようなものだとお考えでしょうか?

作品とそれを見る人との関係、つまりコミュニケーションをすることだと思っています。アーティストが制作をしている時に見るそこの風景や、住んでいる人々と出会うことも、さらに拡張されたコミュニケーションです。

このような出会いがある上にアーティストは、直接ではなくてもその町で感じた跡形を何かしらの形で作品に反映していくことで、町でのアート活動をする根本的な趣旨、即ち町の人の心により伝わる深いコミュニケーションを求められると信じている。

【ナミキアートプラス】キム・ガウン制作現場



ー今回の企画に参加して、人々や街など、変化したと感じるもの / ことはありますか?

最近までギャラリー展示を主な活動としてきた私が並木町の人々とかかわることで気づいたところがある。それはアーテスト本人が製作のはじめから最後までのプロセスを楽しむように、製作段階から出来上がるまでの様子を目撃している町の人もそれと似ているような楽しみを感じていることだった。

つまりお互いに共感することで、時間がたつにつれて応援してくれる人が増えたり、心から並木アートプラスイベントを自分のことのように喜んでくれる人が増えるのを感じた。
そして一言で説明はできない感動を、アーティストとしての自分自身の変化を感じるきっかけにもなった。


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キム・ガウン《君に会う》富岡並木ふなだまり公園 撮影:笠木靖之(2020年度)


このプロジェクトが目指すゴールに向けてどのような歩みがあったのか、そして、自分自身の活動をどのように振り返るのかは、以下の報告書に取りまとめられているので、ぜひご覧ください。

▶『YOKOHAMA AIR ACT』の報告書は こちら (PDF:4MB)
▶ナミキアートプラスの記録集はこちら(黄金町エリアマネジメントセンター ホームページ)

YALが目指すゴールに向けてどのような歩みがあったのか、そして、各参加団体が自分たち自身の活動をどのように振り返っているのかは、以下の報告書に取りまとめていますので、ご覧いただければさいわいです。
▶すべての取り組みの報告書は、こちらから(ACYウェブサイト)


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