ピアスに関する最初の記憶

ピアスに関する最初の記憶。

母たち姉妹の父親が自死した時の事だった。
渦のような悲しみのなか遺された家族は、よたよたとしながらも身を寄せ合っていたのを覚えている。

そんな日々を送っている時、母方の家族が営んでいる商店に宝石屋さんが訪ねてきた。
今はそういうことはないかもしれないけれど、昔は訪問販売の人が時々小さな商店を訪ね歩いていた。
母たちの母親は一緒に働いている次女と三女にピアスを開けることを勧めて、二人にピアスをプレゼントした。
しばらくしてその店は遺言通り、閉めることになった。

今でも、祖父が亡くなった日のことを思い出すと吐き気のような悲しみが押し寄せてくるけれど、そのピアスのことは良い思い出として記憶に残っている。

あの時の母たち親子に、強風に耐えている草木のようなしなやかで、いじらしくもある、強さをみた。
魔法をお互いに掛け合うような姿は、子供心に希望だった。


三つ目のピアスを開けた日に。
小さく魔法をかけた夜に。

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