夢のレイクサイド
ぽっかり空いた時間が生まれると、とりあえずどこかへ出掛ける算段をするのがこのところの常でありますが、みなさんどうですか。
先日、福井県は三方五湖へ行ってきました。
金曜夜の2時に静岡を発ち、新東名に乗り西へ。この時点で目的地は決まっておらず、ただし翌日土曜の夕方に帰還したいことを思うと、片道4時間くらいの距離がちょうどいい。そのことは先日、同様に思いつきで旅立った栃木行きの折に学習済。
ちなみに西へ向かったのは、前回東を目指したからという至極単純な理由にて。
さて静岡から西に車で4時間となると、京都周辺が射程に入る。
いいねぇ、京都。しばらく行ってないなぁ、京都にしようかなぁと思いつつも、夏の京都の厳しい暑さに思い当たり、早々に目的地から除外。
では奈良か?琵琶湖か?と考えているうちに思い出したのが、琵琶湖のちょい北に位置する三方五湖のことだった。
俺が小学生だった頃の数年間、我が家には年に一度、三方五湖に釣りへ行くイベントがあった。
派手な内容のイベントじゃないし、たぶん数回のことだったけど、なぜか俺の記憶の表層にずっと居残っており、今もなお、けっこうな頻度でその時のことをぼんやり考えていたりする。
そんなわけで目的地が決定したのが浜松を通過したあたり。
まっすぐ走れば5時頃には着けるだろうと思ったが、愛知に入った矢先、睡魔に襲われ抗わず、長篠設楽原PAで仮眠。3時。
想定と実際に大きな差が生じはじめてるお年頃。
6時起床。外はすっかり明るく、一瞬いまどこにいるのかわからずうろたえる。
車中泊をするとしばしばこの感覚に陥るが、それほど悪くないなと思ってる。
Youtubeでミルクボーイの漫才を流しながら走る。永遠に聞いていられる。
名古屋を過ぎ、高速はいつのまにやら名神に。
岐阜の養老SAで朝飯、と思ったが、あまりの人の多さに断念。
滋賀の米原JCTで北陸道へ。
ここから福井に向かい、琵琶湖に沿って北上していくが、あいにく高速からは琵琶湖が見えない。
北陸道に入って間もなく工事渋滞によりふたたび眠くなる。渋滞を抜けたところにあった賤ヶ岳SAで仮眠。8時半。
小一時間寝て出発。強烈な陽射しにより、そう長くは寝ていられない。
福井に入り、敦賀JCTで舞鶴若狭自動車道へ。かつて来たとき、高速は敦賀までだったなぁ。
ナビの目的地に設定していた三方五湖PAで車を降りる。
展望台があったので湖を眺めるも、なんだかピンと来ない。
ここじゃない感じがすごい。
名の通り、三方五湖は5つの湖の総称である。
いまでこそ「である」とか言ってるが、三方五湖をひとつの湖と認識していた俺がまさにそこにいた。
さて、困った。
PAから見下ろしているのは、地図によると「三方湖」という名のようだ。残る湖は4つ、はたして俺の思い出の湖はいったいナニ湖なのか。
記憶を総動員させ、なにかランドマーク的なものはなかったか?と考える。やがて、近くに球場があったことに思い当たる。
「三方五湖 球場」で検索すると、三方湖より少し北の久々子湖の湖畔にある「美浜町民野球場」がヒットした。
「久々子湖」という字面に見覚えもなければ、そもそもなんて読むのかもわからない。
ただし美浜町という地名には記憶があり、また湖畔に野球場のある湖は久々子湖のほかにない。間違いないだろう。
三方五湖PAから久々子湖へは、来た道を戻る形で向かうことになる。しかし高速道路上で「来た道を戻る」のはそれなりに難儀なものであります。
スマートICの機能も兼ねた三方五湖PAではあるが、SICはPAに入るときにしか使えない。ゆえに次のICまで進み、そこから戻ってこなくてはならない。いささか面倒だが、そうするほかない。
まあ結果としては、その遠回りにより下道で走った「若狭梅街道」周辺の田園風景が大変に素晴らしかったので、むしろよかったんだけどね。
そんなこんなで11時頃、ようやく久々子湖へ到着。
ちなみにこれを書くにあたり調べたところ、「くぐしこ」と読むらしい。
驚いたのは、記憶と寸分違わぬ風景がそこに広がっていたことだった。
最後に訪れたのはおそらく四半世紀以上も前のことだし、なんかこう、古びたというか、経過した年月相応の色褪せた光景を想像していたのだが。
件の球場であるとか、湖畔の柵の手触りであるとか、ほんとそのまんまな印象。
夢でしか行ったことのない町に迷い込んだような、それは非常に奇妙な感覚だった。同時に、あまりに遠い記憶は、実際にあったことだとしても、夢のそれと大差がなくなってしまうものなのかなぁと思うと、少し切なかった。
数枚写真を撮り、ぼけーっとすれば、もう他にすることはない。20分ほど湖畔にいて、車に戻った。
深夜なのをいいことに、静岡から寝間着のような格好で走ってきたゆえ、久々子湖の駐車場にてよそ行きに着替える。このあとどこか店に入ってメシを食う可能性があるからだ。
目と鼻の先にある日本海も見たかったので、数分走ったところにあった海水浴場で写真を撮るなど。
二組の家族連れが水浴びをしており、波は穏やか。なんのためらいもなく「夏」とか「夏の日」とかいうタイトルを冠して間違いない風景。
まあ日本海とはいえどそこは若狭湾の内側だし、イメージの荒々しさとは程遠いのかもしれないけれど。
さて腹も減ったので、「敦賀 ランチ」などで検索すると「ヨーロッパ軒」という、そのネーミングからしてそれなりの歴史を感じずにはいられないレストランが散見される。
調べると、福井市や敦賀市を中心に、福井県内に複数店舗ある老舗とのこと。静岡の「さわやか」みたいなものか。
古き良きホームページには「元祖ソースカツ丼」の文字が。元祖。
昼飯はここに決定、敦賀市街地にある店舗へ向かう。
しかし昼時だったこともあり、目的の店舗は駐車場も満杯。やむなく別の店舗に向かうこととする。
ところで、敦賀の市街地を走っていると、やけに路上駐車が目立つ。
路駐が暗黙の了解の街なのか?と無礼なことも思ったが、よく見てみると、車道と歩道の間に、色の違った細長いエリアがあることに気付く。
↑は本来目的地としていたヨーロッパ軒(奥に見える高い建物)の店の前の様子で、ストリートビューの撮影時は定休日でガランとしているが、先日はこの細いエリアに車がびっちり停まっていた。
このエリアが公的に許可された路駐スペースなのであろうと推測する。
さらに市街地を走っていると、より興味深い路駐スペースを目にすることとなる。
商店街の店舗前に、路駐、というかもはやちゃんとした駐車スペースが設けられている。少なくとも俺はこういった街並みを見るのが初めてだったので、けっこう驚いた。
車社会の地方都市において、駐車場の有無は、その店に行くか否かの重要な決定を左右する。
幅の広い道路だからこそ為せる技ではあるが、お店にもお客にも親切な街のつくりだなぁと思った。
敦賀の市街地から10分ほど走ったところのヨーロッパ軒岡山店にて、無事昼飯にありつく。
ところでメニューに「パリ丼」なるものがあり、どうやらメンチカツ丼のことを指すようだった。なにゆえの「パリ」なのか、謎を残してきてしまった。
そして帰路に着いた。休憩や仮眠をはさみつつ、18時頃帰宅。
旅の目的はほんと人それぞれで、俺がひとりで車で出掛ける場合、移動することそれ自体が目的のほとんどを占めることとなる。
好きなラジオを聞き、作ってる最中の曲を書き出したものを聴き、時には無音であれこれ考える。
正直体力の消耗は甚だしいが、こんなことでメンタルがだいぶ回復することに、今年に入って気付きました。
とはいえ、行き当たりばったりのとんぼ返りでは、多少のやり残しが生じてしまうものです。
今回でいえば、敦賀市街地の散策。
本文でも少し触れた路駐スペースのこととか、「気比神宮」という深い意味のありげな神社のこととか、時間の都合や、なにより暑さにより断念してしまったが、普通に街歩きをしてみたかったな。
ただしそのやり残しが、また次の旅へのいざないになるわけだから、まあそれはそれでいいのかなぁと思ったり。
自分にとっては、気ままであることがもっとも大切なことだから。
それではさようなら。
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