生命の源泉
〜大地を食べる〜【2】
山菜採りには暗黙のルールがあると言う話をしました。でも、ボクは野草の採取マナーがイマイチよく解っていません。そもそも野草を採取するのにルールなんか必要ないのかもしれません。山菜とは違い道端で採取することも出来ます。地域性もあるかと思います。道端と言っても都会から田舎まで、はたまた山にだって道端はあります。どうせ除草対象として邪魔者扱いして草刈りしてしまうなら遠慮は要らないはずです。むしろせっせと野草を摘んだ方が除草の手間も省けるかもしれないとも思ったりもします。そこでボクが道端で野草摘みをしている様子を想像してみるのですが…ボクがやるとやっぱりちょっと怪しいかも知れません。
そういえば、道端で野草を摘んでいる人に声をかけたことがありました。なにやら小さな花をつけた野草を摘んでいたのです。
「何を摘んでるんですか?」
するとその女性は手を止め、恥ずかしそうに言いました。
「ん?ああ、この辺りではコメゴって言うんだけど解るかなぁ。」
「コメゴ?」
「正式にはタネツケバナとか言ったかな?」
帰って調べてみると「タネツケバナ」が確かにありました。この花の咲く頃には稲の種籾を発芽させるために水につける時期を報せる花としてこの名がついているとか。姿形は少しナズナ(ぺんぺん草)にも似ていますが、花の時期が早く茎が赤っぽくて種鞘は細く上を向いています。ナズナも食べられるので間違って食べても大きな問題にはならないかもしれません。タネツケバナもよく調べると種類があるようです。ボクには見分けられません。ヨモギもまた細分化されるそうですから同じに見えているものでも違った分類になっている可能性があります。
食べられると聞けばやっぱり気になるので一度か二度ほど川沿いの土手で摘んで来たことがありました。春の野草と言うと小さいものが多いのでマメでないと続きません。タネツケバナは小さくて細いのでボクのような大ざっぱな性格をしていると採取そのものが大変です。何とか少しばかり摘んで来て、天ぷらにすれば間違いなかろうと思い早速天ぷらにしました。面白いのは、そんなに小さな野草であってもそれぞれに個性があって天ぷらにしただけでも風味が違います。美味しいのです。そして「食べられる野草」として脳内にインプットされます。食べられる野草でも美味しくなければインプットされません。
ただ、採取に根気が必要で量を確保するのが難しいので気が向いた時に食べる程度でしょうか。
それでも身近に食べられる野草が結構あるということに気がつくと、散歩に出ても食べられるか否かが気になります。花を愛でるより先に「美味しそうだな。食べられるかな?」という感じです。スーパーの店頭に並ばないだけのことで味は良いのですから食べない方がもったいなのです。
野草を採取するには慎重に場所を選ぶ必要もあるでしょう。タネツケバナやヨモギなど道端や川沿いの土手でよく見られるます。ペットの排泄物はさほど気にならないものの排気ガスや除草剤の影響などは気になります。それから排水溝の近くですね。出来れば健全な土壌で育った野草が望ましいのです。
では、健全な土壌って何でしょう…。
ここで言う健全な土壌とは、土壌の中の生態系がバランス良く形成されていて有機物を効率良く分解することの出来る状態を想定しています。化学的な薬品や人工的な物質での汚染がないこと。体内に取り入れるわけですから当然の配慮だと思うのです。山菜・野草・野菜を食べるということは、大地を食べることだと思うのです。それが明日のボクの身体を作ることになります。当然、思考や精神状態にも影響するでしょう。
ここは大丈夫だと思って採取して食べた後でその一帯に除草剤が撒かれていたりすると、毎年のことではなかろうかと不安になります。今の除草剤は色々研究されているとは聞きますが、好んで除草剤の撒かれた場所で採取する必要もないわけですから。
改めて見回してみると田舎であっても安心して野草を採取出来る場所を見つけるのは難しい気がします。多くの土地が田畑として利用されているので野草だからと言って無闇に田畑に入ることはできません。春の風物の代表格フキノトウでさえも意図的に庭や畑の一角に残しているものでなければ、なかなか見つけることができないのです。一方、ツクシはボクの住む地方では誰も採らないのではないかと思うくらい道端の土手やあぜ道沿いにビッシリ生えているのを見かけます。以前住んでいたところでは、ワラビとツクシは春の主役のような扱いでしたから地方色ってあるものです。たくさん生えているから採り放題かと言うと誰も採っていないのでこれまた採りにくいのですが…。
ツクシやスギナは酸性土壌に育ちやすく土壌をアルカリ化するとか。野草の分布で土壌の状態が解ると言うのも興味深い話です。酸性の土は畑を作るのに不向きとされますから野草の状態によって土質の改良の参考にも出来るわけです。
スギナは健康茶として売られていることがあります。ところが、産地を確認したら海外産だったりしますから驚きです。スギナの除草剤も販売されてるのに…。
一時、喘息の原因と疑われたセイタカアワダチソウでさえ意外な効能が期待出来ると言う話もあります。
よく調べてみると、野草の中には漢方薬や民間療法などに利用されているものが数多くあることに気が付きます。もちろん、効果や副作用など個人差があると思いますから市販の薬のようなピンポイントの薬効を期待することは出来ませんが、調べてみると想像以上に奥が深いことが解ります。
希少なものには飛びつくのにあまりある豊かさには見向きもせず、お金をかけて排除する…おかしな話ですね。
生命の源泉〜大地を食べる〜
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ご精読ありがとうございました。
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