未だ至らぬプシュケを追って INアラタケ
――頁を捲る音がする。
机の上には、球形に暖色の領域を広げる燭台の蝋燭数本。
傍らの安楽椅子に座る何者かが、組んでいた脚を解いて降ろした。
木造りの床の上、ゴトリと重たげな音を立てて革靴が落ちる。
何者かは、手にしていた本を閉じる。
机の上に質素な装丁の一冊を丁寧に置く。
その手は手首から先だけの石膏の手だ。宙に浮いている。
大きな真紅のひとつ目が、瞬きをする。
辺り一帯は仄暗い闇に包まれていた。
此処にいるのはお前達、そして俺だけだ。
???
「そう、俺だ」
???
「