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戦後の2つのアニメーションからみた世界

 1984年宮崎駿により『風の谷のナウシカ』が発表される。この世界は、巨神兵による「火の七日間」で世界が焼き尽くされ、「腐海」と呼ばれる人間が住むことが出来ない森が蔓延り巨大な蟲がそこに住み、中でも王蟲と呼ばれる蟲がキーポイントになっている。

その「腐海」の植物から発せられる胞子により、人間の住む町も汚染され人が住めなくなるという世界である。この世界はもともと高度なテクノロジーをもった社会であり、繁栄を尽くした人間たちが自ら世界を破滅に導き、残った人々がまた再び自分たちの繁栄の為に世界を変えようとしているのである。
これは未来の世界のストーリーとして描かれてる。

 1988年大友克洋の作品『AKIRA』が発表される。これは東京が1988年7月16日に第三次世界大戦で「新型爆弾」により壊滅した31年後に出来た2019年の人工都市「ネオ東京」が舞台である。混沌とした繁華街があり暴走族やアーミー(軍隊)、自由を求める宗教団体などがはびこり、それらが対立し暴動が起ることも描かれている。
物語の最初と最後に映し出される目映い白さは、核破壊後のようでもある。
この爆発は政府が子どもを使った超能力研究の暴走による大爆発である。

この物語にはしばしば「コントロール」という言葉が出てくる。科学が作り出した力を制御しなければならない。制御しきれなかった力が暴走した結果がもたらす世界を表現している。  

1980年代、日本は経済的繁栄を謳歌した。この時代に発表された両作品に共通する点は、物語の始まりがどちらも「戦争後の廃虚化世界」から始まっているのである。

『風の谷のナウシカ』では、人間の罪の贖いは、より良い世界のためのヒロインの自己犠牲という行動である。
『AKIRA』も同じように人間が自然の摂理に干渉するという越権行為の罪に基づいている。

『風の谷のナウシカ』の巨神兵や王蟲の同じように『AKIRA』の世界の第三次世界大戦や老童たちも科学が人間達のエゴによりもたらした結果である。人間がより良い生活を得る為の科学、テクノロジーは時には破壊をももたらすのである。この二つの作品はそれを示唆していると言える。

 敗戦により日本は国家的尊厳を失った。それを打ち破るかのように、手塚治虫の『鉄腕アトム』は科学技術の発達で生まれた未来社会を舞台にした。

 戦後の復興をとげ、豊かさが飽和状態になった日本社会。1980年代のアニメーション作家は、しばしば廃墟化した世界を描き、これからどう社会と向き合うかという問題を定義している。日本のアニメーションは世界でも認められ認識されるようになった。世界規模で同じ作品を共有し、考えることでこれらの作品のメッセージを受け取ることが出来たとき、人類の未来をより良いものにしていく意識が広がるのではないかと考察する。

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