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地元の伝承。不思議なお地蔵さま。

 京都府八幡市八幡森に古くから背の高いお地蔵様がある。台座を入れると2メートル程ある。このお地蔵様には祠が無くお参りするひとが立つところに屋根がある。お地蔵様は野ざらしなのである。このお地蔵様には古くから言い伝えがあり、この土地で生まれ育った御歳72歳の男性Yさんにお話を伺った。

 この八幡市は京都府の南部に位置しており山城盆地と呼ばれている。八幡市には木津川が流れており、盆地という事もあり、現在は高い堤防があるが当時はなく、よく水害に見舞われていた。

そこでこのお地蔵様が「そんなに洪水に見舞われるというのなら見てみましょう」と言われ木津川を泳いでこられたそうである。そしてこの土地を見て回られて、「根をたくさん生やす竹を植えなさい」と言われたので人々は竹を川沿いの土地に沢山植え竹林ができた。
また、家が建っている土地をご覧になり、「土を盛って高くして家を建てなさい。」と言われたのでその通りに家を建てた。そうすると川が氾濫しても水に浸かる事がなくなったので、人々の間で「お地蔵様のおっしゃることは正しい」という事になった。

今現在も東西に延びて建っている森の町内の南側の家は、道より一段高くして建っているのである。お地蔵様の言われる通りにすると、洪水の被害も収まったので森町内の人たちがお金を出し合って大工さんにお地蔵様の立って居られるところに雨風をしのげるように屋根を建ててもらった。
そうすると、庄屋さんと大工さんが熱を出して寝込んでしまった。ある夜、お地蔵様が枕元に立たれて「私はまだ修行の身であります。故に屋根はまだ必要ありません。その代わりにお参りしてくださる方の所に屋根をつけてください。」と言われたそうである。
そしてお地蔵様の為に建てた屋根をお参りする人のところに建てると熱が下がったそうである。

これは、Yさんが祖父母に聞いたそうなので今から百年から百五十年前の話だろうとのことである。  
そしてこのお地蔵様を呼ぶ名前は未だに無いそうである。 現在は堤防が築かれており、排水ポン場もあるので昔ほどは洪水被害が減ったが、やはり豪雨が続くと今も浸かることがある。
しかし、この地区が水に浸かる事はなく被害は受けていないそうである。

 この地区は実は筆者の里なので幼少期からお地蔵様の存在は知っており、「地蔵盆」などでよく見ていたのだが、この度調査にあたり三十数年ぶりに見ると、当然屋根がないので随分と風化し、お顔がはっきりとしていなかった。未だに屋根がないという事は、このお地蔵様はまだ修行中なのであろうか。
だとすると、人生は死ぬ時まで一生修行であり、名声を上げることに勤しむこと無く、精進していくようにと、お地蔵様は自ら風化しながら朽ちていくのをお参りする人々に伝えたいのかもしれないと考えられる。
 
 

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