込める、宿る、滲み出る(前半・無料) 手の魔法。(後半)
込める、宿る、滲み出る(前半・無料)
僕はアーティストとして色んな顔を持っているのだけど、大きな側面として「物書き」という顔を持っている。我ながらよくまあ飽きもせずに文章を書きまくっている。
小説を書き始めたのは29歳の頃で、本気で小説家や文筆家を目指すようになったのは、32、3歳くらいだろうか。そして、フィクションではなく、情報発信のブログを書き始めて(初めは健康ネタだった)、作家としてデビュー(?)したのは2019年。
よく「10年やれば必ずプロになる」とか「10年で何らかの形になる」とか言われるけど、確かに僕が本気で小説家を目指して、馬車馬のように書きまくって約10年で「作家」という肩書きがついたし、こうしてnoteというプラットフォームを使って、文章で収入を得ている。
うん、本当に「10年頑張ればなんとか〜」ってやつだ。
で、なんの話かと言うと、とにかく本気で「継続」していれば、なんらかの形になるというは事実であり、本気でなくても、それとなく10年も継続していれば、それなりのものがそこに込められます。
例えば、主婦の方がお料理したり、お掃除したりも、10年もやっていればそこには必ず1日2日では出せないものが宿り、表現されている。
なんなら男性が10年間「俺は毎日髭を剃るんだ!」と決めて、おしゃれな無精髭なんぞ伸ばさずに(笑)、休みの日でも毎朝ツルツルのお顔に仕上げるような人って、確実に髭剃りを通して、そこに滲み出るものがあると思う。
そして、それらはそれぞれの「哲学」「美学」のようなものを生み出し、それが「生き様」として、言葉ではない雰囲気として周りに伝わるのです。
太字で書いたけど、
「込められる」
「宿る」
「滲み出る」
これらって、物質ではないことはもちろん、「形」や「型式」でもない。科学的な「計測」や「数値」ではわからないニュアンスであり、雰囲気だと思う。
でも思い込みや妄想ではなく、確かにそういうものって「有る」と、多くの人が感じている。
それが「続ける」ってことの意味ではないでしょうか?継続することで、そこに『なにか』が、込められ、宿り、滲み出る。
クックパッドとか、Youtubeのレシピ動画みて、誰しも簡単にお料理が作れます。はっきり言って料理って一つ一つはそんなに難しいもんじゃないから、素人でもすぐに「美味しいもの」は作れます。
でも、そこには何が込められ、宿り、滲み出るでしょう?
ただし、「はじめて」には、“初”のエネルギーってあって、それは込められます。無邪気な子供が何気なく急須で淹れたお茶が、なぜだか、なんか知らんけど、妙に美味しい…、と感じたりします。
まあ、子供はさらに言うと、そこに「ソース(源)」と直結しているので、ある意味最強です。
でも、大人だって初めて作った料理とかには、その「初」のエネルギーが入って、何とも言えない味わいはあります。しかし、2回、3回となればなるほど、そうもいかなくなります。l
だから結局「毎日ご飯を作る」をやってるお母さんってすごいです。しかも献立なわけですから、お料理って「一品だけ作ればいい」ってわけじゃないです。だからいくつかの調理を並行させながらやる要領も必要です。
そして、それを「続ける」ということ。
目に見えないエネルギーが、そこに「込められる」のです。それが、料理なら「味を超えた味」になるし、こうして「文章」なら、『行間に宿るもの』になります。わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。でも、分かってなくもて影響する人はするもんです。
さて、料理を例に取り上げますが、もしもそれを
「適当にやる」
「嫌々やる」
「我慢してやる」
だと、
そこに何が込められるかわかりますか?
実際、僕にこんな体験があります。
チェーン店の飲食店でバイトしてました。僕はそこでリーダーで、バイトなのに副店長的なポジションでした。
若い店長に変わり、初めは楽しくやってたんですが、利益を上げるために「人員削減」されて、ぎりぎりの人数で営業させられました。そしてその店長は他の店と兼任の店長だったので、こちらの店は僕らに任された。
初めは店長と仲良かったし、彼の言い分も最もだったので、バイト全員、人員削減に納得して、少ない人数でのオペレーションをこなしました。そして、当然人件費が減るので利益は上がりました。
店長は「社長賞もらったぜ!」とか「臨時ボーナスゲットした!」とか、会社でのポジションも出世し、いいことづくめのようでした。
し・か・し。
新宿駅東口の激戦区で、少ない人数で現場で体張っている僕らには何のバックもありませんでした。時給も上がらないし、最初は「利益上がったら人数はまた増やす」と言ってたのに約束は守られず、現場にいない店長だけがやれボーナスだの、出世だの…。
さすがに僕も含め、バイト勢は我慢できずに、不満爆発になりましたね(笑)。今思うと、その店長はかなり「人を使う」ということを分かってなかったですね。
で、僕らバイトがどうなったかと言うと、めっちゃ適当にやるようになったのです。半ば意識的に、諦めモードで、不貞腐れモードを、バイト同士で共有してました。
やる気もモチベーションもない仕事。頑張って料理を早く出そうとか、丁寧に美味しいもの作ろう、という気持ちがまったくなくなりました。
ただ、調理自体は、ステーキなどがメインのチェーン店で、難しいものはなく、はっきり言って誰が作っても同じようなクオリティになります。マニュアルがしっかりあったので。
だけど、そんな態度で営業するようになって2、3ヶ月した頃、店はむちゃくちゃ暇になりました。びっくりするくらい客足が落ちたのです。近くに同業種の店ができた、とかはないのです。
まあ、おかげで少ない人数で楽にやれるようになりましたが、多分、働いていた我々のやる気のなさや不平不満の“何か”が、出す料理や、お冷や食器に至るまで、その態度から発散されるものが「込められ」「宿った」のだと思う。
食べたら、普通に美味しかったとは思います。マニュアル通りやってましたから。でも口の美味しいだけではない、客足を遠ざける『なにか』があったんだなぁと思います。
反省していますが、よい経験になりました。我々の作るものは、良かれ悪かれ、我々の意識が込もるのです。そして宿り、そこから滲み出る。
めんどくさいかもしれない。でも、どんな仕事も、それを「受け取る人」とか「クライアント」さんがいて、全てはその人たちの喜びや幸福のためにある。だから我々は、そのために心を込めることって必要なんじゃないかな、って思います。
さて、後半はこの「心を込める」ってことについて、もっと深い視点で考察していこうと思います。
そのポイントは「手」です。
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