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パワーストーンな女


24、5歳の頃に、初めて“スピリチュアルな人々”に接触した。自分の健康回復のために、あらゆる健康法を実践していた時期で、坐禅や気功などの東洋的なものから、「ヒーリング」とか「手かざし」のような不思議世界の門を叩いた。

著作にもあれこれ書いたが(人生をひらく不思議な100物語)、子供の頃からその手の感度とか霊感はある方だったし、なにより呼吸不全でやられてた時に、徹底的に「自分の体を感じる」事をやっていたせいで、エネルギー的な感度はかなり高くなっていた時期だったので、エネルギーを体感しまくり、反応しまくり、あっという間にその世界にのめり込んだ。

目に見えない“エネルギー”があり、それが肉体や精神に作用する事を、自分を通して、また、自分が誰かにヒーリングを施して、その反応を見て、この世界には科学では証明されていないものがたくさんあったのだと実感した。

様々なエネルギーに触れたが、その中で「パワースポット」なる『場』のエネルギーも理解していったし、物質にも、何らかの高波動なエネルギーや霊力が宿ることもわかった。

で、スピリチュアルな人々御用達の『パワーストーン』という、スピリチュアルアイテムのテッパンにも、当然出会うわけである。

色んな石のエネルギーを、手の感覚やエネルギー感度で感じたり、Oリングテストという“筋反射”で確認したり、とにかく色々試した。

エネルギーの汚れを確認したり、浄化したり、強化したり、エネルギーを変化させたり、色んな術を覚え、実践して、“エネルギー遊び”に興じていた。

そんな中、パワーストーン・オタク的な中年の女性と知り合いになった。

スピリチュアルな人々は、往々にしてその手のアイテムを身につけているが、彼女のブレスレットやネックレスは、歩くだけで密教の修行者ばりにジャラジャラと音がなっていたし、それだけで1キロ以上重さがあったのでは?と思えるはほどだった。パワーストーンのショップ店員も真っ青だ。

その女性は若い頃から病気がちで、さらに結婚してからも不幸続きで、何をやっても上手くいかず…。まあ、スピリチュアル世界に身を投じる人は大半がこの手のタイプなのだが、とにかく彼女はスピリチュアルとか、エネルギーとか、神様とか、天使とか、そういうものに救いを求めたのだ。

「石を持つようになってから、すごく良くなったの!」

と、得意げに話していたが、しょっちゅう体調悪くしていたし、「邪気を浴びたわ、クリスタルで浄化しないと」とか言っていたし、明らかに幸福そうには見えなかった。本人的にはそれでもずいぶん身体は回復したとの事で、家族との関係も、少しずつ少しずつ、改善してる、との事。

その女性が1番本人がヒーリングやパワースポット巡りなど、様々なスピリチュアルワーク(?)を行った上で「これが効いた!」と思ってるのは、パワーストーンだった。

「この石は〇〇神社の〜で」「このクリスタルはシャスタ山の聖なる〜」「有名な霊媒師の法力が込められている〜」とか、持っている石について、色々とうんちくやら謎の自慢話をよくしていた。

「ねえ?この石、どう?何を感じる?」

と、新しい石を手に入れると、俺のようなエネルギー感度に敏感な人を捕まえては、鑑定まがいの事をお願いしてくることもあった。

たしかに石を一つずつ手に取ると、パワーは感じる。でも、当の彼女からは、あまり良いエネルギーを感じない…。他のヒーラーさんというか、プロのエネルギー使いの施術者さん達も俺と同じ見解だった。

で、他の人と共同して、彼女にどの石を身につければ良いか試してみよう!という事になり、彼女が普段膨大に身につけている石、バックに忍ばせているパワーストーンをテーブルに並べて、Oリングや筋反射テストなどしていきながら、彼女に合う石を探した。

だが、どれをやってもしっくり来ない…。そして、驚きの結果が…!

なんと、“何も身につけていない”状態が1番身体の反応が強く、彼女のエネルギーもクリアーだったのだ。

「そ、そんなことないわ!」

と、彼女は否定したが、身体が反応してるし、俺を含む、エネルギーに敏感な数名が確認した。彼女自身、認識はできていないものの、エネルギーには敏感な体質だったらしく、顔色が良くなったし、姿勢も良くなった。明らかに石への依存が、彼女の本来のエネルギーを閉じ込めていたのだとわかった。

まあ、そのあたりからその手の人々とは距離を置くようになったので、パワーストーンな彼女のその後は知らないが、こういうのってけっこう“スピリチュアルあるある”なんじゃないかな?と思う。依存が生んだ喜劇というか、悲劇というか…。

彼女が石に依存した気持ちはわからなくない。俺自身、当時はなにかと敏感で、人混みを歩くだけで、邪気とやらを食らったり、マイナス思念に囚われたり、下手したら未浄化霊がついて乗っかって来たりした。

だからあれこれと「結界」を張り巡らせ、そういう技を身につけた。俺自身、エネルギー技術や結界法に依存していた。石も持ったりしていたが、当時は貧乏だったので、あまり効果の強そうなパワーストーンを買うことはできず。自前でエネルギーを封入して作っていた。

しかし最終的にはそれすら一種の“思い込み”であり、全てが「愛の表れ」と知ったので、まったくその手のスピリチュアルアイテムを必要としなくなった。

でも、彼女の例が示す通り、そんな「身を守る」鎧を身につけていない状態こそが“本来の自分”であり、パワフルなのだ。結界を張り巡らせ、防御の盾を揃えるほど、この世界に「敵」を作る事になる。自分で勝手に敵を作り、その敵と戦い、疲弊してしまう。

もちろん、それも“段階”なので、そういうアイテムを無駄だとか無意味とは思わない。元に俺もかつては使っていたのだ。

しかし、依存したり、戦う意識が、何より低い波動であるのは間違いないだろう。対立構造を脱することは、我々の目醒めに大きく関わる。

とにかく、俺は彼女のおかげで、色んな事を学んだと思う。

本当の“スピリチュアル(霊性)”とは、そういう事ではないのだと知ったのは、それから10数年経ってからだけど、あの時、スピリチュアルな人々と離れ、実社会で、実践的に生きる事を選択したのは、とても良いキッカケだった。

まあ、パワーストーンは、ファッションとして、気分転換として、気楽に付き合うのがいいんじゃない?と、思います。

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言葉の力で、「言葉で伝えられないものを伝える」ことを、いつも考えています。作家であり、アーティスト、瞑想家、スピリチュアルメッセンジャーのケンスケの紡ぐ言葉で、感性を活性化し、深みと面白みのある生き方へのヒントと気づきが生まれます。1記事ごとの購入より、マガジン購読がお得です。

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