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超能力

私、長篠麻也は電車通学をしている17歳の女子高生で、最寄り駅の三つ先の女子校に向かおうとしているのだが、向かいのホームにいる見知らぬ女性にある事を試そうとしている。
実は私…人には言えないある力がある。それは手を触れずに物体を持ち上げる能力、所謂“超能力”を持っている。専門用語でいうならテレキネシス、というやつだ。

と、いうのも向かいにいる女性、大抵は同じ時間にホームで見かけるのだが、前にジュースをかけられた事があって謝りもせずにその場から逃げた事があった。ただ彼女、最近は見かけていなくて久しぶりに見つけた訳だ。
私は真向かいの女性に対して念を込めた。ゆらゆらとスカートの裾が揺れ出す。そして私は一気に念を放った瞬間、ブワッと彼女のスカートが捲れ上がったのだ。

うまくいった…

彼女はびっくりしている様子で慌ててスカートを押さえたのだが体勢が悪かったらしくバランスを崩して尻餅をついてしまった。やった!大成功!と心の中でガッツポーズをした。勿論私とはホームを隔てて距離があるため私の仕業…とは疑われたりする事はない。

こんな感じで私は能力の悪用をこっそりやっているのだ。私の家族は勿論、一族全員が超能力者で色々な能力を持っている。例えば私の父はテレパシー(相手の心を読み取る力)、母はサイコキネシス(自分の身体を浮かしたりする力)を妹はサイコメトリー(残留思念を読み取る力)を持っていたりする。祖父母も親戚も超能力者だ。

さてさりげない仕返しを達成した私は上機嫌で学校に着いたのだが、教室はいつもより賑やかだった。何でも、転校生が来るというのだ。どんな子が来るんだろう…私はワクワクしていた。
そんな時、教室の中に先生と…大人しそうな女の子が入って来た。

『はいはーい、皆んな静かにして!今日から私達のクラスに転校生が入ります、仲良くしてね。』

と、先生はその子に自己紹介をする様に促す。彼女は黒髪のストレートロングでメガネが似合ってるし、しかもスタイルが良い。私よりも綺麗かも…と少し嫉妬していたりする。

『東京から参りました、安岡美月と言います!皆さん宜しくお願いしますね。』

私は彼女に対してちょっとしたイタズラをしたくなってきた。念を指先に集中してそっと解放する…すると彼女の背中の方で何かが外れる音が聞こえた。何をしたのかって?そう…私は彼女のブラのホックを力で外したのだ。ブラホ外し、定番のイタズラだ。

彼女は背中の異変に気がついたらしく、咄嗟に胸を手で押さえながら案内された席に向かって歩き出した。途中、私の席の横をすれ違った時に“カチッ”と微かに音がした…彼女は手を下ろし、席に座った。
私はうまくいったはずと思っていたが彼女は手を触れずにホックを元に戻したのだ…おかしい、絶対外したはず…私は再度指先に念を込めてブラのホックを外したのだが、一瞬で元に戻る…外す、戻すを繰り返していた為私は強行策に出た。ブラを段々とずらして行く作戦だ。ただそれも私の力に反して拮抗する何かの力でびくともしない。まだ見ぬ相手も本気で抵抗しようとしているのがわかる。

そんな事をしているうちに2つの念が燻り始め、ついに有らぬ方向に飛んでいった…瞬間!

『キャーッ!』

教壇の先生がスカートを必死になって押さえているのだが、着けている下着もその勢いでずれ出している。
先生…流石大人の女性、黒のTバック!クラスメイト達はゲラゲラと笑い、彼女を茶化している。

私は…腑に落ちない、様子が変だとも思った。“私の力が落ちている?いやいや、ひょっとして私の他に能力者がいる…?”

私は違う日の昼休み、中庭にいた。100mくらい先に空き缶を置き、念を込める…カタカタと音を立てだし、缶が揺れ出す…集中した念を一気に放つと缶はコロン、と音を立てて倒れた。

『…やっぱり貴女だったのね。私と同じ能力者がこの学校に居たとはね。』

背後に気配を感じ振り向くと…武田美月がいた。私は能力の事を知られたくない一心で誤魔化そうとした。

『惚けていてもダメ。貴女…絶対能力者だよ。実はね、私も能力者なの。しかも同じタイプの力を持っているみたいね。前の学校で力の事がバレちゃって一家揃って引っ越してきたんだよね。あの時、私にちょっかい出してもう…恥ずかしかったから必死になって抵抗したんだよ。先生には悪い事しちゃったけどね。世の中はさ、私達みたいな力を持つ人には結構きついんだよね…だから貴女には忠告しておくよ。』

と、彼女が言った瞬間、私の体…背中に違和感を感じた。まさか、お返しされた?ブラのホックが外れていた。やられた!

私は負けず嫌いなので彼女に色々なちょっかいを出したのだが、彼女はいともあっさりと回避してしまう、それどころか、私が逆にされてしまっている。私は堪忍袋の緒が切れた。私は彼女を学校の近くに呼び出した。

『なあに?私に何か用?ひょっとしてさ、私に喧嘩売ってたり?』

ちょっと小馬鹿に言う美月、私は先制攻撃を仕掛けた。

『キャーッ!何するのよ!』

彼女のスカートがスルッとずり落ちた、ふぅーん…彼女らしい、白の下着かぁ…私はドヤ顔で彼女を見た瞬間、今度は私のスカートがストン、と落ちた。

『美月って顔に似合わず、なかなかセクシーな下着を着けてるんだね。』
『アンタなんかガキっぽい下着じゃん!下着にも気を配った方がいいよ!』
『余計なお世話っ!』

どのくらいの時間が経っただろう…スカートを必死になって治しては脱がされる…を繰り返して来た私達は段々と疲れてきた。

『はぁ…はぁ…麻也、まだ降参しないの?』
『はぁ…はぁ…美月だって肩で息してるじゃん…アンタこそ降参するべきじゃない?』

お互い左手でスカートをおさえながら構えている中…疲労困憊な二人。二人の間で念がバチバチと燻り出しているのがわかる…お互い最後の一手なのかも知れない。

念が一気に放たれた瞬間…美月のスカートがずり落ちた。

『嘘っ…私が…?』

私はスカートから10円玉をだした。その10円玉はくの字に曲がっている。

『私達の超能力って銅を通さないんだよ…それなのにここまで曲げちゃうなんて美月、アンタ…やるじゃん、多分これがなかったら私の負けだったと思う。だから今のは引き分け…私とアンタの力、殆ど同じくらいみたいだし。』
『麻也がいて良かったかも…力のせいで色々言われたりしてきたけど貴女がいるから私はここで安心して生活できそうだしね、麻也…私達、いい関係になれそうだね!』

…昨日の敵は今日の友、って感じだ。

それ以来、私は彼女…武田美月と親しくしている。ギャルっぽい私と正反対のお嬢様キャラの美月、周りはアンバランスな関係にはびっくりしていたが、時々…“超能力ごっこ”をやっている。

『麻也!学校が終わったら勝負だからね。』
『OK、美月!その後カフェでお茶しようよ!』

私と美月…親友兼ライバルだ。



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