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超能力②

ふとしたきっかけで仲良くなった、私“長篠麻也”と、安岡美月…実は私達には誰にも言えない秘密がある。世間では超能力と呼ばれるもので超常的な力で色々な現象を起こす事ができる能力者でもあるのだ。
事の発端は美月がうちの学校に転入してきて彼女に能力でちょっかいを出した事が仲良くなったきっかけだ。

とある日の昼休み美月が一枚のビラを持ってきた事から今回のストーリーが始まる。

『麻也、麻也!今度、駅前にモールがオープンするんだって。前から駅前って工事してたから何ができるんだろって思ってたんだけどさ。来週の土曜日、私と出かけない?』

私は美月の申し出を受ける事にした。

『麻也ってさ、見た目はギャルっぽいのに中身は結構無頓着だからさ…女子高生が今時そんな子供っぽい下着着けてる子なんていないよ…』

と、彼女はいきなり力を使ってきた。勢いよく捲れ上がるスカート…下着にプリントされた某キャラが見えてしまった。私も咄嗟に力で彼女の頭にペンを落とした。

『痛ったーい!ペンって尖ってなくても落とされると結構痛いんだからね!…そのモールの13階はレディース物の専門フロアだから色々揃ってるよ。有名ブランドの下着とかの直営店とかあるしね。』

私は美月と色々と来週の事や何処に行くか話した。なんだかんだ言いながらも楽しみにしてたりする。こういう経験とかあまりした事がないからだ。

さて時間はあっという間に過ぎ、約束していた土曜日がきた。

学校からは歩いて10分くらいの場所に“峯岡台”駅があって私が通学するのに使う旭ヶ丘駅と美月が使う駿河台駅の中間地点にあるのが峯岡台な訳だが、学校とは反対側の改札口を出て歩いてすぐのところにショッピングモールがある。モールと言いながらもタワマンに近い作りになっていて空に届くんじゃないかってくらいの建物だったりする。

私は美月にグイグイと手を引かれエレベーターに飛び込む。エレベーターはガラス張りになっていて外の景色に見惚れていたのだが、エレベーターのスピードは早く目的の13階についた。
美月の言う通り、フロア全体がレディース物の専門エリアになっていて区画毎に配置されているようだ。私はフロア中央にあるブランドのエリアについた。
スタンダードなものや、セクシーなもの、こんなの女が着けるの?くらいのものが沢山あって何故か私は顔を赤らめていたりする…

『麻也はボーイッシュな感じだから派手さもありながらも可愛いらしさもある感じが良いかな…』

と、美月はブツブツ独り言を言いながらゴソゴソ探している。うーん…と悩みながら彼女は店員を呼びつけた。

『お友達の方のをお選びになさっていらっしゃるんですね。こちらの方は結構スタイルが良いので足が長く見える感じのが良いではないですかね…』

と、店員さんが持ってきたのは…ハイカットな感じでスタイルが強調される物を持ってきたのだ。

『少し際どいタイプにはなると思いますが、こちらの方のスタイルを重視するにはこのくらいのが宜しいかと思いますよ。如何されますか?』
『麻也ならやっぱりこのくらい大胆なものじゃないとね。やっぱり生まれ持ったスタイルをアピールしないと。』

私は中身なんて特別な時とかでないと見せる機会とかないじゃん…と思いながらも美月が選んでくれたものだし、店員も勧めてくれるんだから、と思い、ブラとお揃いで買う事にした。最近のブランド下着って結構するんだな…と驚きながらも少し大人びた私に歓喜していた。

『あれ?美月…美月も買ったの?どんなの?』
『ウフフ…内緒!、ねえ麻也…ついでに25階にある展望レストランに行ってお昼にしようよ。峯岡台の景色が一望できるらしいよ?』

私達はエレベーターに乗り最上階の25階に着いた。エレベーターが開くとレストランでびっしりとあり和洋中どのテナントからも外を眺める事ができる。私達は景色を堪能しながら食事を楽しんでいた。ふと浸っていたせいか、私は微かな揺れに気がついた。本当に微妙な揺れだが。

『ん?美月、なんか揺れてない?』
『そうかなぁ…私には感じないけど…』

その揺れは少しずつだが強くなっている…錯覚じゃ…ない!そんな時だ。近くの火災報知器がけたたましい音が鳴った!

ジリリリリ…!

『お客様にご連絡致します。当館9階フロアで火災が発生しました。慌てず騒がずお近くの非常口にお向かい下さい。また係員の誘導に従い行動をしてください…繰り返します…』

やっぱりだ!外を見ると下から黒煙が勢いよく見える。他のお客さんはパニックになっており、右往左往している。あ、そういえば…美月がいない。私と一緒にテーブルに座っていたはずなのに。私はあたりを見渡しながら美月を探していた…でも美月はいない。

『美月ー!美月ー!何処ー!いたら返事して!』

返事がない…私は焦った。このフロアにはいない?と思った瞬間、後ろのトイレ近くの階段から

『う…』

と言う呻き声が聞こえた。

『美月?美月なの?返事して美月!』
『麻…也…なの?麻也!私はここ!』

トイレの入り口には瓦礫が崩れていて山のように積み上がっている。その山に足を挟まれて動けなくなっている美月を見つけた。私は無我夢中になり瓦礫をどかそうと思ったのだが、思ったよりも大きく、私の力では持ち上げるどころか、持つことすらできなかった…私は、力を使おうと構えた。

『麻也、ダメ!この瓦礫、銅線が見えてる!銅に私達の念は届かないよ!それにこんなところで力を使ったら…』

キラっと見えたのは銅線…しかも何本も。どうやら壁や天井が崩れた途端に電線が露出した、ってことか!
私のいるフロアにもうっすらと煙が見えるようになってきた。それにこの建物、揺れ方が酷くなっている。遠くで従業員が避難誘導をしている声がする。

『何方かいらっしゃいますか?もう時期このフロアにも火の手が回ってきそうです。いたら返事をしてください!』
『あ、すみません!この瓦礫の向こう側に女の子が一人逃げ遅れています!私の友達なんですが、足を取られちゃって動けないんです!』
『わかりました!急いで救護班に連絡します!貴女は早く逃げて下さい!』
『麻也!その人の言うとおりだよ!私の事はいいから早く逃げて!』

私は美月の必死の言葉を遮って…

『何言ってんの、美月!私の大事な恋人なんだからこのまま置いて行ったら…私はどうすれば!』

私も叫んだ。

『麻也、やめて!こんなところで力を使ったら…私の事はいいから逃げて!早く!』

私は念を込めた…のだが銅線の山はびくともしない。でも私は力を緩めない!何回も…何回も…!
そんな時、フロアの天井がガタっと一気に崩れた…


私は気がつくと病院のベッドに寝ていてベッドの周りには心拍数を見る機械がピッピ…と規則的な音を立ててリズミカルに波打っている…その音で私は目が覚めたのだが、まだ左手には点滴のチューブが繋がっている。その横には…

『麻也!気がついたんだね!良かったね…麻也!』

松葉杖をついた美月が病室の椅子に座っていた。

『麻也、あの時最後の力を振り絞って私を助けてくれて有難う!貴女は命の恩人!最後の力を念じた時に私達の身体が光に包まれて…気がついたら建物の入り口で倒れていたの。
あ、私?大したことなかったよ。足はまだ痛いけど骨に異常なかったし。捻挫だってさ!』

咄嗟の事で私自身訳がわからないのだが、兎に角私達は生きている。ちなみに火事の原因はよくわかっていなくて不明なのだそうだ。それに亡くなった人もいなくて安心した。
私は検査の必要がある…と言う事だが身体には異常がなく一週間程で退院となった。
私が病院のエントランスを出ると…そこには美月がいてカツカツと松葉杖をつきながら私のところに寄ってきて抱きついた。

『お帰りなさい、麻也。退院おめでとう!』

美月は感動で泣きべそをかいていた。私達は歩き出す…

『ねえ、麻也。貴女さ、あの時…私に何て言ったか覚えてる?必死だったんだと思うけど、私の事…“恋人”って言ったよね?』

私は赤面した。確かに言った記憶があるからだ。

『私の事、好き…?私は麻也の事、好きだよ。友達でなく…ね。』

私は照れ隠しのつもりで誤魔化したのだが、最初の出会いだけに友人から女として彼女に惹かれていたのだ。彼女も実は私と同じ想いだったのかも知れない…私達は新たな一歩を二人で踏み込んだのだ。


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