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超能力⑥

科学の進化は文明の発達を意味する。一昔前は乗り物のスピードを巡って世界中の技術者が躍起になっていたり、残り少ない化石燃料の利用権等をかけて世界の軍事大国同士が争ってた時代なんて本当懐かしい。
化石燃料の枯渇、という問題は電気の技術が解決し、電気◯◯といったものが溢れている。

時は今から100年先の近い未来…部屋のメッセンジャーメイド、つまり家事をしてくれるロボットが私の部屋に入って来た。

『…麻也サン、定刻ノ7:00トナリマシタ。学校ニ行ク時間デスヨ。』
『う、うーん…わかったぁ…』

私はモゾモゾと起き出す。髪をとかし、歯を磨いて制服に着替える…
エアーサイクル、電気自転車のセルを回す。

“チュイイィン…”

と、モーターの金属音がする…私はスタッと跨いだ。フワッと機体が浮き出しアクセルを握る…と同時に勢いよく走り出した。
電気という産業は発展と共に注目されるようになり、私の時代には天然資源よりも電気文化になっている。エレクトロニクスと共に発展して来たのが、“空とかの空間利用”の有効性が注目され、一昔前のドローン技術の応用で私が乗っているエアーサイクルなんかもその一つだ。

『麻也、おはよう!急がないと遅刻しちゃうよー。』
『美月!おはよう!じゃあ学校まで競争するよ!』

美月という子は私の友人で幼馴染。勉強は出来るが運動はからっきしの知的女子で私とは正反対の子ではあるが、お互いないものを持っているのか気が合う友人でもある。

ちなみに私と美月には秘密があって実は超能力と言われる力を持っている。なんでも大昔、私達の先祖が神様から貰った能力らしく、私達は“手を触れずに物体を動かす事ができる”能力、専門用語でテレキネシスと言うのだそうだ。ただおばあちゃんが言うには昔と違って今は能力者という人間はかなり少なくなっているのだとか。

『いい?決してその力を人前で見せてはならん。今の世の中はこういう能力者の事を良く思っていないから。』

…と、私達はおばあちゃん達にキツく言われているので滅多には使わないし、能力に頼らなくても今の時代は生活はできてるし、支障はない。
私の通う“峯岡台女子学園”は由緒ある学校で100年以上の歴史と文化を持ち、女性の社会的立場を担い、育成していく事を目的としている。

『やっぱり麻也は体力あるだけあってエアーサイクルの使い方が上手!私は後から麻也のスピードに追いつくのがやっとだったよ。』
『私はそんなに早くないよー。』
『まさか、麻也…エアーサイクルに手を加えてる?またそんな事をしてると安西先生に怒られるよ!』
『今回はしてないって!たまたまだよ。』

『誰に怒られるって?SD(シュチューデント・ディレクター、今でいう“生徒会長”)の安岡美月さん?』

私達の後に鬼の形相の安西恭子女史がニヤっとしている。

『なんでもないでーす!先生、本日も宜しくお願いします。』
『あ、こら!待ちなさ…キャーッ!』

私達の後ろから追いかけてくる先生を振り切ろうと私は力を使った。
先生のスカートがストンと落ち、更に下着がズズッと引っ張られている感じになっている為必死で手を押さえているからバランスを崩して転んでしまった。

『麻也、ダメだってば!力を使ったら!』
『美月だって人の事言えないじゃん!』

私達の力は過去の先祖と比べて落ちていて、銅製品を身につけたりされると力は効果をなさない。銅という物質は力を受け流す性質があるからだとも言われている。安西先生はたまたま銅を所持していなかったから効いた感じだ。

場面と時間が変わって、放課後の峯岡川河川敷…私達は小さい時からここで遊んでいたので庭みたいな場所だ。ここで私達は“あること”する。

『美月…行くよ!』
『麻也、いつでもどうぞ?』

私達はサッと構えた…のだが、様子がおかしい。いつになっても念が貯まらない、それは美月の方も同じ状況だった。

『あれ?おかしいなぁ…念が込められない。』
『私もだよ…朝は使えたのに。』

何回やっても念が込められない。だけど疲労感だけは蓄積していくのはわかる。結局私達は諦めた。

『ただいまー。おばあちゃーん!いるー?』

私は家に戻るとおばあちゃんのいる奥の縁側に向かった。

『おかえり、麻也。おやおや…美月ちゃんも来てたんじゃな。いらっしゃい!それでどうした?』

私達は超能力が使えなくなった事、念を込められなくなった事を彼女に話した。

『…なるほど。それは“喪失症”の症状じゃな。思春期の能力者の女が必ず病じゃが命に別状はない。今でいう、MPが0の状態だよ。ただ、美月ちゃんの方が重症のようじゃ。麻也、お前と美月ちゃんはあるところに行かねばならない。いけるか?二人で。』

続けて…

『麻也、美月ちゃん。何故儂等に特別な能力があるかは知っているな?かなり昔の戦国の時代にちっぽけな小国の大名達が災いと脅威から神様から授けてもらった力を使って国を守った…という伝説があるのじゃがお前達はその祖先に会い、ある試練を受けなければいけない。たださっきも言ったが、美月ちゃんは麻也よりも重症、麻也…お前は美月ちゃんを守らないといけない。できるか?』

『うん、頑張る!』

私達は学校を休学する事にした。

『美月、大丈夫?』
『うん…大丈夫だよ。』

と、言う美月だが、顔色は優れない。無理してるのがわかる。私達は電車に飛び乗ったのだった。

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