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超能力・分断

『あら!麻也ちゃん、美月ちゃん…とお馬鹿娘達。』

『誰がお馬鹿娘じゃ!』
『妾達に対する扱いが酷いの…母上。』 

私達は旅館“和どう”に来ている。最後の試練の場所がわかったのを報告にきたのだ。

『双樹…流石私達の血筋ね。旦那が亡くなってからずっと探してくれていたんだね。それで高天原って言うの?古い言い伝えだと神様が住まう…地だったよね。その地に通じる入口が富士山にある、って事?』

『そうなんですよ、逢羽さん。でもなんとなくだけど私達も予測はしていたんです。富士山の事。』

『つまり富士山登山をするからって事でしょ。私も若い頃何回も登山をしたっけなぁ。山の天気は気まぐれですぐに変わるからね…行くタイミングとか装備とか大事よね。』

サラサラ…っと逢羽さんは絵を描き出した。

『こんな感じかな…』

富士山は整備されているとはいえ、予測できない事が起きたりする。

『こんなに?』

私は驚いた。

『麻也ちゃん、これでも少ない方だよ。その辺の山とかでもちゃんとした装備は必要だよ?』

『私達は楽ができるからあまり関係ないかもしれんが…』

ゴツン!麻姫様の頭にゲンコツが一つ…

『何言ってんの、麻!アンタ達も登山するんだよ。アンタ達はね、あかがねを持つんだよ。麻は鍵、月は櫛。』

『どういう事じゃ?』

『あかがねという石でできた物を持つ…つまり力を封じる銅を持つ事でアンタ達の捻じ曲がった精神を登山する事で鍛錬をする…どうせアンタ達は麻也ちゃんと美月ちゃんにおんぶに抱っこするつもりだったんでしょ?登山で精神鍛錬をしなさい。』

麻姫様は頭を抑えながら…

『わかりました、母上。母上はいつも考えが根性論なんですね…』

『麻也ちゃんは美月ちゃんと比べて体力があるけどね。そういう人ほど高山病とかになりやすいのよ。あとは体温の急激な低下によって起こる低体温症かな。』

平地と比べて標高が高くなるほど気圧が低くなり酸素濃度が少なくなる病気。
防寒対策をしっかりする事が登山の基本。

『自分のペースも大事だけど、今回は美月ちゃんと行くんだからちゃんとお互いに気を配りながら登って行く事が大事。二人の絆を確かめる良い機会なのかもね。美月ちゃん…行けそう?』

『頑張ります!』

美月はガッツポーズをしながら言った。

『さていつ行くか…ってなるけど…やっぱり夏山、つまり夏頃かな。』


さて私達は二年生になった。私達は富士山登山に備えて色々と準備した。装備を準備したり…ジムに通って体力増進したり…

姫様方は…と言うと、

『麻…妾には櫛を持ち上げるだけで精一杯じゃ…』
『月、其方のはまだ軽いから良いとして、この鍵…無駄に大きくて重い!手が千切れそうじゃ。』

『姫様方、遊んでるのですか?鍵と櫛は玩具じゃないんですよ?』

私達は少し茶化した感じに揶揄う。

『五月蝿いぞ!麻也、美月…!私らは真剣じゃよ!』
『妾は…ダメじゃ…あかがねに力を吸い取られる…』
『月…月!しっかりするんじゃ!』

姫様方も苦労なさってるのですね…私達はジムの隅で鍵と櫛を持っては離し、持ち上げようとしては…はぁはぁと…息を切らしながら手に取る二方を見る。

そんな時…学長からメールが入る。私達は学長室に入る。

『失礼します…』
『急にお呼びだてして申し訳ないですね。まず登山はいつなさるんですか?』

美月が口を開く。

『来週の月曜日に予定してます。前日の日曜日に山の近くの旅館に予約を入れました。月曜日は“大安”ですから。』

『そうなんですか…承知いたしました。ですが、一つ肝心な事を言い忘れてました。まず長篠さんと安岡さん…貴女方は別ルートからそれぞれ、登山をすることになります。つまり一人で、という事です。ルートは全部で四つ、どのルートを使っても構いません。それぞれのルートから山頂を目指して頂上でおちあい、下山…五号目の浅間神社まで降りるという感じになります。』

富士山登山ルート。複数ある!

『“最後の試練…己が道を切り開く事、誰の手を借りずに己自身で道を作る事”ですね。試練の試練…って感じでしょうね。』

『双樹、私達も一人で行動するのか?』

麻姫様が口を開く。

『そうじゃ!妾達も分断されてしまうのか?』

月姫様も口を挟んだ。

『姫様方…も当然、としたい訳ですが、やはりバディを組んだ方が良いでしょうね。何かあった時の補佐役としてね。ではこうしましょうか。
長篠さんは月姫と、安岡さんは麻姫と…パーティー編成をしましょう。』

『嫌じゃよ!私は麻也と一緒がいい!』
『妾も美月と一緒じゃ!』

駄々っ子のようにごねる姫様達…

“いざとなったら麻也に頼めるからの”
“櫛を持って貰えるかも”

と邪な考えを持っていた。その時、二人の頭にゲンコツがゴン、ゴツン!と炸裂した。

『お黙りなさい!麻姫様、月姫様。楽をしようだなんて不届千万。貴女達の修行鍛錬でもあるのですよ。ズルはダメ。』

『わかっとる…私達だって真剣に考えとる。』
『ちょっとした冗談じゃよ…妾とてちゃんと考えとる。』

『学長、バディ編成はどういう理由からですか?』

麻也が尋ねる。すると学長は…

『お互い助け合うのは登山をする者としては当然の事。もし、長篠さんと麻姫様…安岡さんと月姫様ってパーティにすると安岡さん達はかなり不利ですよね。だから余力のある人がない人をフォローするのは信頼関係、絆の向上につながるかと思います。二組揃ってこそなんですよ。』

『わかりました、学長!』
『吉報をお待ちしておりますよ。』

私達は学長室を離れた。
最後の試練とは…?そして高天原で待つ人物に会えるのか?謎が解けた…私達は霊峰富士登山をする!



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