マガジンのカバー画像

美しさとは

21
美しさの定義って、難しい。その時代に生きた人の価値観とともに、変わるのかもしれない。いや、まったく変わらないものなのかもしれない。美しさってなんだろう。自分に問いかけて、考えたこ…
運営しているクリエイター

#写真

教会と光と夏至。

夏至の日は、たまたま海方面へ行っていて、サンミニアートアルモンテ教会のような夏至のスペクタクルが観れるところないか、探してみた。 あったあった! 場所は、バディア・サン・ピエトロ教会。 建立は700年代で、いまの姿は12世紀のもの。 巡礼の路といえば、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路が有名ですが、ローマへ向かう、フランチージェナと呼ばれる巡礼路がイタリアにもあります。 余談ですが、コロナ以降、イタリアは、ちょっとした巡礼路ブーム。数日かけて、巡礼地

1000年前の美しさの定義。

時代ごとに美しさの定義は変化していくけれど、いま私たちが見ても、美しいと思えるもの。そんな普遍的な美しさも、また存在する。 ロマネスク時代の美の基準とはなんだったのか。1000年前に遡ってみたいと思います。ルネサンス文化が生まれる、ずっと前のはなし。 古代ローマが崩壊し、分裂、侵入の繰り返しで、暗黒といっても過言ではない、つらい時期を過ごしたヨーロッパ。 目の前が何も見えない、真っ暗な世界のなかに、一筋の希望の光として、誕生したのがロマネスク。 トスカーナ州には約40

天文の美しさに囚われたひとびと。

長い歴史の天文学。どこよりもずっと進んでいたアラブでは、天体観測器が作られ、それが欧州へと渡ります。 1334年に建立されたフィレンツェのジョットの鐘楼。塔の高さ、塔の色の美しさに目を奪われて、見落としがちな装飾レリーフ。その一枚に表わされているのが、この天文学。 壁の部分に星座が薄く彫られている。 なんという細かい仕事。 当時の天文学と占星術は、切ってもきれぬ仲。種まきも収穫も、すべて天を眺め、星の動きをもとに、時を計り、時期を知り、人々の生活が成り立っていたのです。

ローマに秘められた、天体回廊。

前回で「天文のテーマ」は終えるはずでしたが、ローマへ行く計画が浮上し、今回は引き続き第二部です。 なぜローマで第二部かというと、ローマには、科学とアートが融合した素晴らしい作品が残されているからなんです。 前回の記事のきっかけになった「アートと科学」という小冊子を、この夏に読んでいて、すごく驚く発見があり、びっくりして、機会があれば、ローマに行ってみたい!と望んでいたのです。 今回は、体験してきたことを、お話しします。 フィレンツェからローマへローマで見たい展示会が、

空間の美しさとは? Part.2

フィリッポなくして、フィレンツェは形成せず。 フィリッポ・ブルネレスキが、遠近法を発明したのが1416年頃。2年後にクーポラのコンクールが行われ、彼の案が採用されます。 両手放しで、喜ぶことはできない条件はあるけども、とりあえず、現場監督として、1420年からクーポラの建設が始まります。 こちらが、ブルネレスキの建築記。 中世の面影を残すフィレンツェの街に、ダイナミックでシンプルな建造物が、自己主張することなく溶け込み、新しい時代へと繋いでいきます。フィリッポ・ブルネレ

世界は音に包まれている Part.1

『音の美しさ』の続編です。 音楽。音を奏で、その音色を楽しむこと。 耳で聴き、時には感情をゆさぶり、時には気持ちを穏やかにしてくれる、心の処方箋のような存在。 自然、黙想。そして、音楽。昔から「音楽とは?」と、宇宙の真理を考えるごとく、深遠に思慮し、歴史に名を残した哲学者達。 紀元前6世紀頃のギリシャ。手を伸ばせば届くかのように、星の光が地上に降り注いでいた時代。 エーゲ海から聞こえてくるさざ波の音を耳にしながら、色とりどりに煌めく星空を眺めている、ひとりの人物。彼は

世界は音に包まれている Part.2

『音の美しさ』の続編です。 世界は音色に包まれている Part.1 美しさとは、調和である。音楽だけど、音楽じゃない。中世時代は音楽をどう解釈して、宇宙、神、人、との調和を図ろうとしたのでしょう。 ロマネスク様式の教会と音楽。天使が奏でる、天上の音 欧州で、キリスト教が世界の中心となると、神学が生まれます。神学では、天体の調和の観念は、天使の音楽として解釈し直されます。 昇天したマリア様が、天の女王になる、マリア様の戴冠式。大変おめでたいシーンなので、天使楽団が音楽を

世界は音に包まれている Part.3

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 建築と音楽の、数合わせ。ルネッサンス時代に入ると、以前に登場したブルネレスキと、彼と同時代に生きたレオン・バッティスタ・アルベルティが、フィレンツェ国の空間に手を加えます。 まずは、ブルネレスキに登場してもらいましょう。1420年に着工し、1436年にクーポラが完成。聖堂の献堂式が行われます。 献堂式に用いられる音楽は、もちろんオリジナル。ルネサンス最大の音楽家と言わ

世界は音に包まれている Part.4

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 世界は音に包まれている Part.3 音楽は、音色が流れるように続く、時のなかでの美しさ。 建築は、建物にリズム感を与える、空間のなかでの美しさ。 この二つに共通する調和。それは、算数や幾何学が出会う場でもあります。 中世時代の美しさは、床面も柱も、幾何学から割り出されていましたが、ルネッサンス時代になると「数字」が重要になってきます。 音楽と建築。ブルネレスキのあ